介護現場で人手不足が続くと、入浴介助、ナースコール、記録、申し送りが重なり、気持ちに余裕がなくなることがあります。
・人手不足の時にイライラしやすくなる理由が分かります
・時間に追われる場面で、言葉が強くならない考え方が分かります
・忙しい勤務中でもできる、気持ちの立て直し方が分かります
・同僚や管理者へ状況を共有する時のポイントが分かります
イライラする自分を責める必要はありません。この記事では、人手不足でイライラする介護職に向けて、時間に追われる時の具体的な対処法を、現場で使いやすい形で解説します。
人手不足でイライラしやすい介護現場の背景
介護現場の仕事は、予定どおりに進まないことが多くあります。
利用者の体調変化、排泄介助、転倒リスクへの対応、家族からの電話、急な申し送り、記録の遅れなど、勤務中には予定外の出来事が次々に起こります。
人手不足の日は、その負担がさらに大きくなります。
本来であれば複数人で分担したい場面でも、限られた職員で対応しなければならないことがあります。ひとつの業務を終える前に、次の対応が入ることも珍しくありません。
たとえば、入浴介助が押している時にナースコールが鳴り、同時に別の利用者から強い訴えがある。さらに、申し送りの時間も迫っている。
そのような状況では、介護職の頭の中で「早くしなければ」「抜けがあってはいけない」「事故を起こしてはいけない」という緊張が続きます。
この時のイライラは、単なる怒りとは限りません。
その奥には、焦りや不安、疲労感など、いくつもの感情が重なっていることがあります。
- 焦り:時間内に業務が終わらないかもしれない
- 不安:事故やミスにつながるのではないか
- 孤立感:自分だけが抱えているように感じる
- 疲労感:休む間もなく対応が続いている
- 自責感:うまくできていない自分を責めている
アンガーマネジメントでは、怒りを無理に消そうとするよりも、怒りの前にある感情に気づくことを大切にします。
「私は怒っている」と受け止めるだけでなく、「時間に追われて焦っている」「一人で抱えているように感じている」と言葉にできると、次の行動を選びやすくなります。
時間に追われる時ほど、介護職の言葉は短くなりがちです。
「今は無理です」
「少し待ってください」
「さっきも言いましたよね」
こうした言葉は、悪意があって出るとは限りません。
ただ、利用者や家族には冷たく聞こえることがあります。同僚に対しても、責められたような印象を与えてしまう場合があります。
人手不足の中で、常に穏やかでいることは簡単ではありません。
だからこそ、イライラしない人を目指すより、イライラが強くなりやすい場面を知り、言葉に出る前に小さな対処を入れることが現実的です。
時間に追われる時の対処法
時間に追われる時は、大きな対処をしようとしなくて大丈夫です。
忙しい勤務中に、十分な休憩や長い振り返りの時間を取ることが難しい日もあります。
まずは、数十秒でできる方法を持っておくと、感情の勢いに流されにくくなります。
まず「今の自分」を短く言葉にする
イライラが強くなりそうな時は、心の中で今の状態を短く言葉にしてみます。
- 「今、時間がなくて焦っている」
- 「一人で抱えている感じがしている」
- 「責められたように感じて反応している」
- 「疲れていて、言葉が強くなりそう」
この言語化は、相手に伝えるためのものではありません。
自分の感情に気づき、怒りの勢いを少し弱めるための確認です。
忙しい時ほど、感情は一気に言葉や態度に出やすくなります。
その前に一度だけ、自分の状態を確認する。それだけでも、言い方を選び直す余地が生まれます。
忙しい時こそ「見通し」を一言添える
時間に追われる時は、説明を省きたくなります。
しかし、相手にとっては「いつ対応してもらえるのか」「自分は後回しにされているのか」が分からず、不安や不満が強くなることがあります。
そのような場面では、短い言葉でよいので、見通しを伝える一言を添えます。
利用者から何度も呼ばれた時は、
「今は無理です」よりも、
「今、別の介助中です。終わり次第、伺います」
と伝える方が、相手に状況が伝わります。
同僚に応援を頼む時は、
「手伝ってください」だけで終わらせず、
「あと5分だけ見守りをお願いできますか。入浴介助が押しています」
と、頼みたい内容と理由を短く伝えます。
家族から急な確認を求められた時は、
「すぐには分かりません」よりも、
「確認してからお伝えしたい内容です。分かり次第、こちらからご連絡します」
と返すと、対応を放置していないことが伝わりやすくなります。
忙しい時に、長く丁寧な説明をする余裕がない日もあります。
それでも、「今どういう状況か」「次にどうするか」を短く伝えるだけで、相手の受け止め方は変わります。
言葉が強くなりそうな時は、数秒だけ間を置く

イライラが強くなると、言葉が先に出てしまうことがあります。
その場で言い返した後に、「少しきつい言い方だったかもしれない」と感じることもあります。
そのような時は、すぐに話し続けず、数秒だけ間を置きます。
深呼吸を一回する。手元の作業を一度止める。視線を少し外す。水を一口飲む。こうした小さな行動でも、怒りの勢いを弱める助けになります。
介護現場では、長い休憩が取れない日もあります。
それでも、数秒の間なら作れる場面があります。
完璧に落ち着くことを目標にしなくても構いません。
怒りの勢いのまま言葉を出さないために、ほんの短い間をつくることが大切です。
個人の努力だけで抱え込まず、状況を客観的に共有する
人手不足でイライラが続く時は、個人の努力や我慢だけで解決しようとすると、さらに負担が大きくなります。
毎回同じ時間帯に業務が集中している場合や、同じ場面で職員の負担が増えている場合は、現場の状況を組織やチームへ客観的に共有することが実務上有効です。
共有する時は、感情論として伝えるよりも、事実として整理します。
誰かを責める言い方にならないよう、時間帯、業務、影響を具体的に伝えると、検討しやすくなります。
たとえば、次のような形です。
- 夕食前にコールが集中している:排泄介助と配膳準備が重なり、対応が遅れやすい
- 入浴後の記録時間が取りにくい:申し送り前に記録が残り、情報共有が遅れやすい
- 特定の時間帯に声かけが急ぎ気味になる:利用者や家族に慌ただしい印象を与えやすい
このように、どの時間帯に、どの業務が重なり、どのような影響が出ているかを共有すると、管理者やチームで検討しやすくなります。
イライラを個人の性格の問題として扱うと、現場の改善にはつながりにくくなります。
「誰が悪いか」ではなく、「どの場面に負担が集中しているか」を事実として共有することで、事業所側も応援の入り方、業務の順番、配置の工夫、声かけの方法などを考えやすくなります。
これは、法令上の報告義務として説明するものではありません。
人手不足や業務集中による負担を、現場の実務改善や連携の材料として共有する考え方です。感情をぶつけるためではなく、利用者対応と職員の働きやすさの両方を守るための共有として位置づけることが大切です。
勤務中にできる小さなセルフケアを持つ
人手不足の中で働く介護職には、勤務中にできる小さなセルフケアも必要です。
忙しい日ほど、自分の疲れに気づく時間が少なくなります。
たとえば、次のような方法があります。
- 手洗いの時に肩の力を抜く
- 水を一口飲んでから次の対応に入る
- トイレに入った時に一度だけ深呼吸する
- 記録前に「今は焦っている」と心の中で確認する
- 退勤前に、今日つらかった場面を一つだけメモする
どれも大きな方法ではありません。
しかし、こうした小さな行動を持っていると、感情に飲み込まれる前に立ち止まりやすくなります。
介護職は、利用者の変化に気づく力を日々使っています。
同じように、自分自身の変化にも少しだけ目を向けることが、感情マネジメントの第一歩になります。
まとめ
人手不足でイライラする介護職は少なくありません。
時間に追われる時は、焦り、不安、疲労、孤立感が重なり、普段よりも言葉が強くなりやすくなります。
アンガーマネジメントは、怒りを我慢し続けるための方法ではありません。
自分の感情に早めに気づき、言葉を選び直し、必要な時にはチームで客観的に共有するための実務的な技術です。
まずは、忙しい場面で「今、自分は焦っている」と心の中で言葉にしてみてください。
そして、相手に見通しを伝える一言を添えることから始めてみてください。
小さな対処の積み重ねが、利用者対応、同僚との連携、自分自身の心の余裕を守る力になります。
【次回の内容】
次回は、休憩が取れない介護職のセルフケア|5分で気持ちを立て直す方法を取り上げます。
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