介護福祉士国家試験のAパートには、「人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術」が含まれます。
この科目群は、介護福祉職としての対人援助の基本姿勢と、利用者の状態に応じたコミュニケーション技術を問う分野です。
現場経験がある方にとっては身近に感じやすい内容ですが、設問では感覚的な「よい声かけ」だけで判断できない場面が出てきます。
丁寧に見える言葉でも、本人の意思決定を妨げている場合があります。親切に見える対応でも、介護職の判断が先行している場合があります。
この科目群では、言葉の印象ではなく、本人理解、信頼関係、自己決定、尊厳、自立支援の視点から選択肢を読むことが必要です。
人間関係とコミュニケーションは対人援助の土台
人間関係とコミュニケーションでは、介護福祉職と利用者の関係性が問われます。単に「やさしく話す」「明るく接する」という内容にとどまりません。
利用者を一人の生活者として理解し、本人の意思や感情を尊重しながら関わることが基本です。
試験では、次のような視点で選択肢を確認します。
- 本人の意思を確認しているか
- 介護職が一方的に判断していないか
- 利用者の感情を受け止めているか
- 信頼関係を損なわない関わりか
- 尊厳や自立支援に沿っているか
一見すると正しそうな選択肢でも、本人の思いを確認せずに説得している場合は注意が必要です。
コミュニケーション技術は用語と場面を結びつける
コミュニケーション技術では、受容、傾聴、共感、要約、確認、自己開示、非言語コミュニケーションなどの用語が出てきます。これらは、用語だけを暗記しても得点につながりにくい分野です。
たとえば、要約は、利用者の話の内容を整理して返す技術です。話題が広がっているときや、本人が混乱している場面で、内容をまとめて確認する関わりとして出題されます。
自己開示は、介護福祉職が自分の情報を適切に伝えることです。目的は、利用者との信頼関係を形成することにあります。介護職自身の話を長くすることや、利用者の話題を奪うこととは異なります。
非言語コミュニケーションは、表情、視線、うなずき、姿勢、距離、身振りなどを用いる関わりです。マスク着用時や聴覚に障害のある人との関わりでは、目元の表情やうなずきなども判断材料になります。
用語を覚えるときは、「どの場面で使う技術か」まで確認しましょう。
受容・傾聴・共感を正確に整理する
この科目群で特に混同しやすいのが、受容、傾聴、共感です。
受容は、相手の感情や考えを評価せず、いったんそのまま受け止める姿勢です。相手の意見に同意する意味ではありません。否定や訂正を急がず、相手が表現した思いを受け止めます。
傾聴は、相手の話を遮らず、言葉の内容だけでなく、表情、沈黙、声の調子、話す速さにも注意して聴く関わりです。介護職が次に話す内容を考える時間ではなく、相手を理解するために聴く姿勢です。
共感は、相手の立場に立ち、その人が感じている気持ちを理解しようとする姿勢です。単なる同調や安易な励ましではありません。相手のつらさ、喜び、不安、戸惑いに寄り添う関わりです。
選択肢を読むときは、「受け止めているか」「聴こうとしているか」「気持ちに寄り添っているか」を分けて確認します。

説得・誘導・評価に注意する
人間関係とコミュニケーションの設問では、介護職が一方的に進める選択肢が出ることがあります。
たとえば、入浴を拒否している利用者に対して、すぐに入浴の必要性を説明する。食事が進まない利用者に対して、残さず食べるよう励まし続ける。混乱している利用者に対して、事実関係を正そうとする。
これらは、場面によって説得、誘導、評価的な関わりになる可能性があります。介護福祉職には説明責任もあります。安全確保も必要です。
ただし、説明や安全確認は、本人の感情や意思を確認したうえで行うことが基本です。
試験では、本人の発言や表情を手がかりにしながら、まず気持ちを確認し、その後に必要な支援へつなげる選択肢を選びます。
障害特性や認知機能に応じて伝え方を調整する
コミュニケーション技術では、利用者の状態に応じた伝え方も問われます。
認知症のある人には、否定や訂正を急がず、不安や混乱の背景を確認します。見当識の低下や記憶障害がある場合でも、本人の体験している世界を尊重しながら関わる視点が必要です。
失語症のある人には、話すことを急かさず、表情、身振り、文字、絵、実物などを活用します。本人が表現しやすい方法を一緒に探すことが大切です。
聴覚に障害のある人には、正面から話す、口元を見やすくする、周囲の騒音を減らす、必要に応じて筆談を使うなど、情報が伝わりやすい環境を整えます。
視覚に障害のある人には、急に身体に触れず、名前を名乗り、これから行う支援を言葉で説明します。
相手の状態に合わせて、言語的・非言語的・準言語的な手段を組み合わせることが、選択肢を読むときの判断軸になります。
過去問は「技術名」と「根拠」を確認する
この科目群の過去問を解いた後は、正解したかどうかだけで終わらせないことが大切です。
確認するのは、次の3点です。
- どのコミュニケーション技術が使われているか
- その技術が場面に合っているか
- 不適切な選択肢は、なぜ不適切なのか
たとえば、要約なのか、共感なのか、承認なのか、同意なのかを整理します。
似た用語が並ぶ設問では、選択肢の言葉だけで判断せず、介護福祉職の返答が何をしているのかを読み取ります。
話の内容をまとめて返していれば要約です。相手の努力や存在を認めていれば承認です。相手の感情に寄り添っていれば共感です。相手の意見に賛成していれば同意です。
この違いを確認すると、同じような設問でも迷いにくくなります。
まとめ|本人理解と技術名を結びつける
人間関係とコミュニケーションで得点につなげるには、本人中心の視点と、コミュニケーション技術の用語を結びつけて理解することが必要です。
- 本人の思いを確認しているか。
- 一方的な説得や誘導になっていないか。
- 受容、傾聴、共感を場面に合わせて使えているか。
- 非言語・準言語を含めて伝え方を調整しているか。
- 障害特性や認知機能に応じた関わりになっているか。
この視点で選択肢を読むと、表面的にやさしい言葉に惑わされにくくなります。この科目群は、現場経験を活かしやすい分野です。同時に、感覚だけで選ぶと迷いやすい分野でもあります。
過去問を解くときは、正答番号だけを確認せず、技術名、場面、根拠、不適切な理由まで整理しましょう。その積み重ねが、Aパートの得点力につながります。
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