【介護保険最新情報Vol.1485】「第10期介護保険事業(支援)計画の策定に向けた事前準備に関する留意事項について」の解説

介護保険最新情報・障害者福祉情報

筆者:ベラガイア17人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕:社会福祉士・ケアマネジャー)

2040年を見据え、都道府県・市町村は何を準備しておくべきか

令和8年3月26日付の介護保険最新情報Vol.1485では、厚生労働省が、第10期介護保険事業(支援)計画の策定に向けて、都道府県・市町村が本格的な計画づくりに入る前に進めておきたい準備事項を整理して示しています。今回の文書は、制度改正の確定通知というより、令和8年度の早い段階から始めるべき事前準備の実務通知と理解するのが適切です。

まず大前提として押さえておきたいのは、第10期計画期間に係る基本指針の見直し案や、令和9年度介護報酬改定の具体的内容は、今後国で議論される予定だという点です。
つまり、この通知は「改定内容が確定したので、それに合わせて計画を書きなさい」というものではありません。そうではなく、今後の制度議論に備えて、各地域で現状分析と課題整理を先に進めておくことを求める通知です。


1.第10期計画づくりの基本的な考え方

市町村が基本単位、都道府県は支援・調整を強める

Vol.1485では、第10期計画の検討にあたり、計画の基本単位は市町村であることを前提にしながら、必要に応じて都道府県がより積極的に関与し、近隣市町村を含めた広域的な観点から議論していくことが重要だと示しています。

ここは誤解しやすい点ですが、都道府県がすべてを主導して決めるという意味ではありません。
市町村が地域の実情を踏まえて見込量や課題を整理することが基本であり、そのうえで都道府県が、

  • 分析の観点や手法を示す
  • 管内市町村の状況を比較しながら課題を共有する
  • 必要に応じて広域的な議論の場を設ける

といった形で、支援・調整を強めていくという整理です。

また、厚労省は、本年夏頃(7月を目途)に、都道府県と市町村が課題認識を共有し意見交換を行うことを想定しています。ただし、この「7月」はあくまで目途であり、自治体ごとの実務進行には差があり得ます。ブログとしても、「7月までに全国一律で終わらせる」といった断定ではなく、早めに共有に入るための目安として読むのが適切です。


2.介護サービス見込量の中長期推計

2040年度まで視野に入れて考える

最初の大きな論点は、介護サービスの種類ごとの量に関する中長期的な推計です。
通知では、市町村に対し、市町村全体だけでなく地区・地域別の状況も確認し、2040年度を含む中長期的なサービス見込量を把握するよう求めています。

その際に使うデータ源としては、

  • 地域包括ケア「見える化」システム
  • 人口メッシュ
  • 事業所分析ツール
  • 医療・介護SCR

などが例示されています。

ここで大切なのは、単に将来人口を眺めることではありません。
第9期計画の見込量と実績の乖離要因を検証し、現在のサービス提供体制の課題と、2040年を見据えた将来需要を結びつけて考えることが求められています。


3.中山間・人口減少地域への対応

範囲や基準は、今後の国の検討を前提にする

二つ目の重要な論点は、中山間・人口減少地域におけるサービス提供体制の確保です。
通知では、こうした地域について、実態把握と早期の検討開始が重要だと示しています。

ただし、ここで注意したいのは、「中山間・人口減少地域」の範囲や配置基準等が、この通知で最終確定されたわけではないということです。
Vol.1485は、そうした地域を視野に入れて準備を進める必要性を示していますが、具体的な制度設計は今後の審議でさらに整理される前提があります。
したがって、ブログでこの地域区分を「定義が確定したもの」と断定してしまうのは避けるべきです。

通知が実務者に求めているのは、まず都道府県が、

  • 基準該当サービス
  • 離島等相当サービス
  • 特別地域加算
    の実施状況や、事業所・施設数の変動、運営状況などを確認し、課題が大きい市町村については、市町村を通じて状況を把握していくことです。たとえば、訪問介護等で赤字が継続していないか、職員確保が困難になっていないかといった点まで視野に入れています。

4.医療・介護連携の推進

介護主管だけで完結しない論点であることに注意

三つ目の論点は、医療・介護連携の推進です。
通知では、2040年に向けて、医療と介護の複合ニーズを持つ高齢者が増加することを踏まえ、地域ごとに医療・介護の提供体制を検討する必要があるとしています。

ここで重要なのは、この議論が介護主管部局だけで完結するものではないということです。
通知では、地域における医療・介護の総合的確保に向けた協議の場を活用し、必要に応じて広域的な開催関係部署との調整を進めることが示されています。

実務上は、都道府県の介護主管部局と衛生主管部局(医療担当)との連携が欠かせません。
単に「介護施設の協力医療機関をどう確保するか」だけでなく、地域医療構想との整合や慢性期医療の受け皿の状況まで視野に入るため、関係部署間の調整は非常に重要です。


5.高齢者向け住まいの設置状況等の勘案

データは参考になるが、完全ではない

四つ目の論点は、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の状況を計画にどう反映させるかです。
通知では、これらが多様な介護ニーズの受け皿になっている現状を踏まえ、入居定員総数や要介護者数、利用状況等も勘案して介護ニーズの見込みを定める必要があるとしています。

ただし、ここでもデータの扱いには注意が必要です。
別添資料には、サ高住の要介護者数は任意記載事項であり、一部未入力事業者があることが示されており、都道府県・政令市・中核市では概数把握が前提とされています。

つまり、有料老人ホームやサ高住のデータは、計画づくりの参考として重要ですが、完全・精緻な数値として断定的に扱うことはできないということです。
実務上は、「概数として把握し、必要な整備量の参考にする」というスタンスが大切です。


6.介護人材確保・生産性向上・経営改善支援

都道府県の実情に応じた目標設定が前提

五つ目の論点は、介護人材確保と職場環境改善に向けた生産性向上、経営改善支援等です。
通知では、需要増と生産年齢人口減少が同時に進むなかで、人材確保・生産性向上・経営改善支援を一体的に進める必要があるとしています。

ここでもポイントは、全国一律の目標を押し付けるのではなく、都道府県の実情に応じた目標や取組事項を定めることです。
たとえば、協働化の取組件数や支援機関による相談対応件数などが例示されていますが、通知でも、都道府県の実情に応じた目標を定めることが求められています。

また、市町村は必要に応じて都道府県介護現場革新会議等に参加し、県の取組状況も踏まえて、自らの計画に反映することが想定されています。ここでも「県がすべてを決める」のではなく、市町村が必要な内容を主体的に書き込みつつ、県の支援を活用するという役割分担です。


7.認知症施策の推進

数値目標の義務づけというより、具体的取組の明確化がポイント

六つ目の論点は、認知症施策の推進です。
通知では、都道府県・市町村に対し、認知症の人の社会参加の場や、必要な保健医療サービス・介護サービス等について、データを活用して現状を確認し、共生社会を実現するために必要な今後の具体的取組を定めて記載することを求めています。

ここで誤解しやすいのは、「全国一律の数値目標を必ず置かなければならない」と読むことです。
原文の趣旨は、そうした一律の数値目標義務というより、地域の実情に応じて必要な取組を明確にすることにあります。

たとえば、

  • 認知症カフェや本人ミーティング、ピアサポート活動
  • 若年性認知症支援コーディネーターや認知症地域支援推進員
  • 初期集中支援チームや認知症サポート医、認知症疾患医療センター

などについて、設置箇所数や活用状況、今後の見込み等を確認し、地域として目指す姿と必要な取組を整理していくことが求められています。


8.スケジュール感

「7月」「11月」はあくまで目途として読む

別添資料では、令和8年4月ごろから分析や実態把握を始め、7月ごろに都道府県と市町村が情報共有し、その後、議論、見込量試算、計画素案作成、11月ごろの調整を経て、令和9年初頭に計画を固めていく流れが示されています。

ただし、これらはあくまで目途です。
自治体ごとの規模や分析体制、議会日程、関係部署調整の状況によって、実務の進み方には差が出ます。
そのため、ブログとしては「7月までに必ずここまで終わらせる」と断定するのではなく、早期準備のスケジュール感を共有するための目安として理解するのが適切です。


まとめ

Vol.1485は「第10期計画の前倒し準備」を求める通知

今回のVol.1485は、第10期介護保険事業(支援)計画について、まだ制度改正の中身が確定した段階ではないことを前提に、事前準備を前倒しで進めるよう求める通知です。

押さえておきたい要点は、次のとおりです。

  • 計画の基本単位は市町村であり、都道府県は支援・調整を強める立場であること。
  • サービス見込量の推計では、見える化システム、人口メッシュ、事業所台帳等のデータを活用するが、データには限界もあること。
  • 中山間・人口減少地域の範囲や基準は、今後の議論も前提にしながら早めに検討を始めるべき論点であること。
  • 医療・介護連携、人材確保、生産性向上、経営改善、認知症施策について、地域の実情に応じた具体的な取組を整理する必要があること。

つまり、第10期計画は「秋から作り始めるもの」ではなく、春からデータ整理と課題共有を始めておくことで中身が決まってくる計画です。
Vol.1485は、その前倒し準備を促す実務通知として読むのが最も正確です。

著者(講師)

ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表 梅沢 佳裕
 社会福祉士・介護支援専門員・アンガーマネジメントファシリテーター

関連リンク

介護保険最新情報vol.1485(第10 期介護保険事業(支援)計画の策定に向けた事前準備に関する留意事項について)(令和8年3月26日厚生労働省老健局介護保険計画課ほか連名事務連絡)

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