【在宅介護の盲点】ヤングケアラー支援で居宅ケアマネができること

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まず、最初にお伝えしたいことがあります。
ヤングケアラー支援は、もはや教育分野だけの話ではありません。
高齢者介護や障害者福祉の在宅支援と深くつながる課題として、居宅介護支援の実務と無関係ではいられない段階に入っています。

実際、2024年度介護報酬改定では、居宅介護支援の特定事業所加算について、ヤングケアラーなど多様な課題への対応を促進するため、事例検討会や研修への参を評価する方向が示されました。
つまり、ヤングケアラーは「知っていると望ましい周辺知識」ではなく、居宅介護支援の質を考えるうえで押さえておくべき実務課題として位置づけられ始めているのです。

ただし、ここで一つ丁寧に整理しておきたいことがあります。
ヤングケアラーは、これまで「教育分野だけの課題」とされていたわけではありません。
けれども、実務の中では、学校が子どもの変化に気づきやすいことから、結果として教育分野の課題として強く認識されやすかった、という背景があります。

文部科学省は、学校等でヤングケアラーを把握した場合の対応や、学校の役割を整理した資料を公表しています。そこでは、教職員は児童生徒等と日常的に接する機会があるため、登校状況や生活態度の変化などの小さなサインに気づくことができると整理されています。
つまり、学校はヤングケアラー支援における早期発見の重要な入口として位置づけられてきたのです。

しかし現在、国の整理はもっと広がっています。
こども家庭庁は、「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・就労・教育の連携プロジェクトチーム」を設置し、分野横断で支援を進める方針を明確にしています。
これは、ヤングケアラーが学校だけでは支えきれず、家族介護、障害、病気、就労、生活困窮など複数の課題が重なりやすいテーマであることを、公的にも整理したものです。

本記事では、過去には居宅ケアマネジャーがどのような役割を期待されてきたのか現在の在宅介護では何が変わってきているのか、そして これからの居宅介護支援において、ヤングケアラー支援をどう位置づけていくべきか を、制度資料も踏まえながら丁寧に整理します。


1.かつて居宅ケアマネは「本人支援の調整役」として期待されていた

介護保険制度が始まって以降、居宅ケアマネジャーに求められてきた中心的な役割は、要介護高齢者本人の生活を支えるために必要なサービスを組み合わせることでした。
ケアプランを作成し、訪問介護、通所介護、訪問看護、福祉用具、短期入所などを調整し、本人の在宅生活を支える。この役割は今も変わらず重要です。

ただ、制度創設期からしばらくの間、居宅介護支援はどうしても 「本人中心」、そして 「サービス調整中心」 になりやすい面がありました。
家族の介護負担や生活状況を見ていなかったわけではありませんが、制度運用の中心としては、本人の状態と必要サービスに軸足が置かれやすかったのです。

そのため、家族の中で生じている次のような問題は、見えにくくなりがちでした。

  • 家族介護者が慢性的に疲弊していること
  • 仕事と介護の両立が崩れかけていること
  • きょうだい間で役割が偏っていること
  • 子どもが大人の代わりに家事や見守り、介護的な役割を担っていること

しかし、在宅介護の現場では、本人だけを見ていても問題の全体像はつかめません。
むしろ、本人支援の背景にある「家族全体の暮らし」を見なければ、在宅生活そのものが長続きしない時代に入っています。


2.なぜヤングケアラーは学校現場で先に注目されたのか

居宅ケアマネジャーがこのテーマを理解するうえで、ここはとても大切です。
ヤングケアラーが最初に広く注目されたのは、学校という場が、子どもの変化に比較的気づきやすい場所だったからです。

たとえば、

  • 遅刻や欠席が増える
  • 授業中に眠そうにしている
  • 提出物が遅れる
  • 部活動や友人関係に変化が出る

こうした変化は、家庭内の介護負担が学校生活に影響しているサインとして現れることがあります。
文部科学省は、こうした背景を踏まえて、学校における把握や支援の考え方を整理してきました。
ですから、ケアマネジャーがヤングケアラーを理解する際には、「学校が気づきの入口になってきた」という経緯を知っておくことが重要です。

ただし、学校が気づきやすいからといって、課題そのものが教育分野だけに属するわけではありません。
その背景には、高齢者介護、障害、病気、生活困窮、ひとり親家庭、就労困難など、家庭全体の複合的な事情があることが少なくありません。
だからこそ、こども家庭庁は福祉・介護・医療・就労・教育が連携する体制づくりに動いているのです。

ヤングケアラーとは
家族に介護や支援が必要な人がいる中で、本来は大人が担うような家事、見守り、介護、きょうだいの世話などを日常的に行っている子どもや若者のことです。
高齢者介護の場面でも、子どもが祖父母や親の支え手になっていることがあります。


3.いま在宅介護では、家族全体を見る視点が欠かせなくなっている

現在の在宅介護では、本人支援だけでは生活が成り立たないケースが増えています
独居高齢者、老老介護、認認介護、介護離職、ダブルケア、そしてヤングケアラー。こうした問題は個別には以前から存在していましたが、近年は複数の課題が重なり合う形で表面化しやすくなっています。

厚生労働省の資料でも、ヤングケアラーやダブルケアラーをはじめとする家族介護者への支援は、地域包括支援センター等に期待される役割として整理されています。
これは、家族介護の負担が本人支援の周辺事項ではなく、地域包括ケアを支える中心課題の一つとして見られるようになってきたことを意味します。

ここで大切なのは、ヤングケアラー支援を「子どもの支援」とだけ捉えないことです。
居宅ケアマネジャーは児童福祉の担当者ではありません。
しかし、高齢者本人の在宅生活を見ていく中で、家族全体の介護負担の偏りに気づく立場にはあります。

たとえば、次のような場面です。

  • 訪問時に、子どもが自然に家事や見守りを担っている
  • 保護者が「この子がいなければ回らない」と語る
  • 家族の説明を子どもが大人のように引き受けている
  • 子どもが介護に関する段取りをよく把握している

これらは、直ちに「問題」と断定するのではなく、家庭の中で何が起きているのかを丁寧に考える出発点になります。

ダブルケアラーとは
子育てと介護を同時に担っている人のことです。
子どもの養育と、親などの介護が重なることで、生活全体に大きな負担がかかりやすくなります。
厚生労働省の資料でも、ヤングケアラーと並んで家族介護者支援の対象として整理されています。


4.ヤングケアラー支援で、居宅ケアマネができること

ここで整理しておきたいのは、居宅ケアマネジャーは何をすべきで、何を抱え込む必要はないのか という点です。
ヤングケアラー支援を扱うと、「ケアマネジャーが子どもの支援まで担うのか」と心配されることがありますが、そうではありません。

居宅ケアマネジャーに求められるのは、次の三つです。

  • 気づくこと
     本人の課題だけでなく、家族介護の偏りや、子どもに過重な役割が集中していないかに注意を向ける
  • 整理すること
     家族の中で誰がどのような役割を担っているのか、生活への影響はどうかを、アセスメントの中で確認する
  • つなぐこと
     地域包括支援センター、行政、学校、子ども家庭支援機関、医療や障害福祉の関係者など、必要な支援につなげる

重要なのは、ケアマネジャーが一人で抱え込まないことです
ヤングケアラー支援は、一人の専門職だけで完結できる課題ではありません。
だからこそ、居宅介護支援の現場で最初に違和感を言葉にし、チームや地域につなぐ役が大切になります。


5.近未来の居宅ケアマネは「家族の暮らしを支える起点」になる

これからの居宅ケアマネジャー像を考えるとき、私は大きな転換が起きていると感じます。
それは、ケアマネジャーが 「サービスの調整役」 から、「家族の暮らし全体を支える起点」 へと役割を広げつつあることです。

もちろん、介護保険制度上の役割が急に変わるわけではありません。
それでも現実の在宅介護では、本人だけを見ていては支援が続かないケースが増えています。
家族介護の持続可能性、子どもへの影響、仕事との両立、地域とのつながりまで視野に入れなければ、本人の在宅生活も長く支えられないからです。

その意味で、ヤングケアラー支援は「新しい特別なテーマ」ではありません。
むしろ、これからの居宅介護支援が、どれだけ家庭全体の実情を見られるかを問う重要な辛い領域だと言えます。


小まとめ

ヤングケアラー支援は、在宅介護の盲点ではないでしょうか・・・
そしてその盲点は、これからの居宅ケアマネジャーが向き合うべき重要課題でもあります。

これまでは、学校が気づきやすいことから、教育分野で強く扱われてきました。
しかし現在は、高齢者介護、障害、病気、生活困窮、就労などが絡む、分野横断の課題として捉え直されています。
その中で、居宅ケアマネジャーには、家族の暮らしの中にある見えにくい負担に気づき、必要な支援につなぐ「起点」としての役割が、より強く求められていくでしょう。

ヤングケアラーを「子どもの問題」として遠くに置くのではなく、在宅介護の質と持続可能性に関わる課題として捉え直すこと。
そこから、居宅介護支援の新しい地平が見えてくるはずです。


参考資料・出典

【筆者】

梅沢佳裕
― ベラガイア17人材開発総合研究所 代表/最新福祉情報サイト【介護キャンパス】主宰

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