【フォロワーシップ】第6回:トラブル・クレーム対応に活きるフォロワーシップ

7.介護リーダーのスキルアップ

――中堅層が前に立ち、現場を守る力

介護・福祉の現場では、日々の支援の中で利用者や家族とのトラブル、クレームが起こることは珍しくありません。

その瞬間、現場を守り、職員を支えるのは誰でしょうか。
それこそが、中堅層のフォロワーシップです。

上司がすぐに駆けつけられない場面でも、現場を落ち着かせ、職員を守り、利用者との関係を崩さずに対応できる。その一歩を踏み出せる人がいるかどうかが、チームの信頼力を決める鍵になります。


1.クレーム対応は「中堅リーダーの腕の見せどころ」

介護・福祉の現場では、どんなに丁寧に支援していても、トラブルやクレームは避けられません。
利用者や家族との行き違い、支援方針への誤解、連携不足によるミスなど――原因はさまざまです。

こうした場面で頼りにされるのが、中堅層のフォロワーシップです。
上司が駆けつけるまでの間、まず現場を落ち着かせ、スタッフを守りながら状況を整理できる人がいるかどうか。ここでチームの信頼が問われます。

フォロワーシップとは「支える力」であると同時に、現場を守る力でもあります。
中堅リーダーが冷静に一歩前に出ることで、

  • スタッフの不安を和らげる
  • 利用者・家族の怒りを沈める
  • 上司の判断をサポートする

という三方向の安定が生まれます。
つまり、トラブル対応は「中堅層が現場を動かす力」を発揮する絶好の場面なのです。


2.フォロワーシップが生きる“3つの動き方”

トラブル時の中堅リーダーは、感情的な反応ではなく、構造的に動くことが大切です。
フォロワーシップを発揮するための3つの基本行動を押さえましょう。

(1)まず「落ち着かせる」

怒りや混乱が起きている場面では、最初にやるべきことは“説明”ではなく“沈静化”です。
相手が感情的なときは、言い分を途中で遮らず、うなずきながら聴く。
スタッフが動揺しているときは、「大丈夫、私が一緒に対応します」と支えの言葉をかける。
この一言が現場を救うことがあります。

(2)次に「整理する」

その場で全てを解決しようとせず、事実と感情を切り分けて整理します。

  • 何が起きたのか(事実)
  • 誰がどう感じたのか(感情)
  • 今後どう対応すべきか(方針)

この3点を冷静にまとめることで、上司や関係職員への報告が正確になります。中堅リーダーの記録力・説明力が生きる場面です。

(3)最後に「つなぐ」

現場を落ち着かせたら、上司・他職種・関係部署へ速やかに連携します。
その際、「責任の押しつけ」ではなく「協働の姿勢」で報告することがポイント。
「現場ではここまで対応しました。今後の判断をお願いします」と、バトンを丁寧に渡すことで、上司も安心して動けます。

この一連の流れが、中堅リーダーのフォロワーシップによる“防波堤”の役割を果たすのです。


まとめ

トラブルやクレームは、誰かを責める問題ではなく「チームで乗り越える課題」です。
中堅リーダーが冷静に立ち、支え、つなぐことで、現場の信頼と安全が守られます。

  • 感情ではなく構造で対応する
  • 現場の安全と安心を優先する
  • 一歩前に出てチームを支える

これが、トラブル対応におけるフォロワーシップの真価です。

次回は「職種を超えた協働を支えるフォロワーシップ ― チームケアを強くする連携の力」について解説します。

(著者:ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕

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