【令和8年3月改定】内閣府「避難情報に関するガイドライン」|介護BCPで確認すべき警戒レベル3の避難判断

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内閣府は、令和8年3月に「避難情報に関するガイドライン」を改定しました。

今回の改定は、要配慮者利用施設や要配慮者の避難に関する記載が含まれており、介護施設、通所介護、訪問介護、居宅介護支援、障害福祉サービス事業所、相談支援機関など、災害時に高齢者や障害のある人を支える介護・福祉現場にとっても重要な内容です。

特に確認したいのは、令和8年3月改定版で示された周知・普及啓発上の表記です。
内閣府は、警戒レベル一覧表を用いる場合の留意点として、

「警戒レベル4までに必ず避難!」

という表記を示しています。

ただし、この表現を、介護・福祉現場で「警戒レベル4まで待ってよい」と受け止めることは危険です。

高齢者や障害のある人など、避難に時間を要する人については、警戒レベル3「高齢者等避難」の段階で、危険な場所から避難することが基本です。

介護・福祉事業所では、利用者の避難に時間がかかることを前提に、警戒レベル3「高齢者等避難」が発令された時点で、避難行動や安全確保に移れる体制を整えておく必要があります。

この記事では、令和8年3月改定の内容を、介護・福祉現場の実務者向けに整理し、業務継続計画(BCP)、非常災害対策計画、避難確保計画、送迎・訪問の判断基準を見直す際のポイントを解説します。

今回の改定は何を見直したものか

今回の改定は、避難情報の基本枠組みを新しく作り直したものではありません。

警戒レベル3は「高齢者等避難」、警戒レベル4は「避難指示」、警戒レベル5は「緊急安全確保」という基本的な枠組みは、令和3年の改定で整理されています。

令和8年3月改定では、令和8年5月下旬頃から開始される予定の新たな防災気象情報の運用に合わせて、警戒レベル相当情報の体系や名称、時系列情報などの活用方法が整理されています。

介護・福祉現場が確認したいのは、単に新しい名称を覚えることではありません。
大切なのは、次の点です。

・警戒レベル3「高齢者等避難」で、要配慮者の避難・安全確保へ移れるか
・警戒レベル4「避難指示」を待って利用者の避難を始める計画になっていないか
・防災気象情報や時系列情報を、前日判断や送迎・訪問判断に活用できるか
・利用者と職員の安全確保を、BCPやマニュアルに具体的に落とし込めているか

令和3年改定と令和8年3月改定の違い

今回の改定を正しく理解するために、令和3年改定と令和8年3月改定の違いを整理します。

区分令和3年改定で整理されたこと令和8年3月改定で整理されたこと
避難情報の基本枠組み警戒レベル3「高齢者等避難」、警戒レベル4「避難指示」、警戒レベル5「緊急安全確保」などを整理基本枠組みは維持しつつ、防災気象情報との関係を整理
周知表現「警戒レベル3又は警戒レベル4で必ず避難しましょう」という趣旨の表現が使われていた警戒レベル一覧表では「警戒レベル4までに必ず避難!」という表記が示された
改定の中心避難情報の名称や発令の考え方を整理警戒レベル相当情報の体系整理・名称変更、時系列情報等の活用方法の追記
介護・福祉現場での受け止め高齢者等避難の段階で、避難に時間を要する人の避難行動を開始する「警戒レベル4まで待つ」のではなく、警戒レベル3で避難・安全確保へ移る体制を再確認する

この表で特に重要なのは、最後の行です。

令和8年3月改定版で「警戒レベル4までに必ず避難!」という表記が示されたとしても、介護・福祉現場では、警戒レベル4を利用者避難の開始基準にしてはいけません

利用者の避難に時間を要する事業所では、警戒レベル3「高齢者等避難」の段階で、危険な場所からの避難や屋内安全確保に移れるようにしておく必要があります。

警戒レベル3「高齢者等避難」は、介護現場の行動開始ライン

警戒レベル3「高齢者等避難」は、災害のおそれがある状況で、市町村長から必要な地域に発令される避難情報です。

この段階で、高齢者や障害のある人など、避難に時間を要する人は、危険な場所から避難することが基本です。

ここでいう「高齢者等」には、高齢者だけでなく、障害のある人、妊産婦、乳幼児連れの人、避難に時間を要する人、その人の避難を支援する人などが含まれます。介護・福祉事業所では、利用者の状態により、避難に時間がかかります。

たとえば、次のような利用者がいる場合です。

・車いすを使用している人
・歩行に介助が必要な人
・認知症により状況理解が難しい人
・医療的ケアが必要な人
・移動に複数職員の介助を要する人
・避難先で環境変化への配慮が必要な人

こうした利用者がいる事業所では、警戒レベル3が発令されてから初めて準備を始めると、避難や安全確保が間に合わない場合があります。

そのため、BCPでは、警戒レベル3「高齢者等避難」が発令されたときに、次の行動へ移れるように整理しておくことが重要です。

・利用者の所在と状態を確認する
・避難に支援が必要な利用者を確認する
・屋内安全確保、上階避難、立退き避難のどれを選ぶか判断する
・送迎や訪問の継続可否を判断する
・家族や関係機関へ連絡する
・職員の安全を確認する
・夜間帯に備えた職員配置を確認する

ここで大切なのは、警戒レベル3を「準備だけの段階」としないことです。

警戒レベル3は、介護・福祉現場にとって、避難に時間を要する利用者の避難や安全確保に入る重要な段階です。

警戒レベル4「避難指示」は、全員が危険な場所から避難する段階

警戒レベル4「避難指示」は、災害のおそれが高い状況で、市町村長から必要な地域に発令される避難情報です。

この段階では、危険な場所から全員避難することが求められます。
介護・福祉事業所では、警戒レベル4を「利用者の避難開始ライン」として扱うと危険です。

警戒レベル4になってから、車いす利用者を移動する、送迎車を出す、職員を参集する、避難先へ連絡するという流れでは、時間的に間に合わない場合があります。

介護・福祉現場では、次のように整理することが重要です。

  • 警戒レベル3「高齢者等避難」
     → 避難に時間を要する利用者の避難・安全確保に移る段階
  • 警戒レベル4「避難指示」
     → 危険な場所から全員が避難する段階。介護事業所では、この時点で利用者の安全確保が遅れないようにする段階

「警戒レベル4までに必ず避難!」という表現は、警戒レベル4まで待ってよいという意味ではありません。

要配慮者を支援する介護・福祉事業所では、警戒レベル3、または警戒レベル3の発令が見込まれる段階から、早めに判断する必要があります。

防災気象情報は「避難情報」そのものではない

今回の令和8年3月改定では、防災気象情報と警戒レベル相当情報の関係が整理されています。

これまで、河川氾濫、大雨、土砂災害、高潮に関する情報は、それぞれ名称や発表主体が異なり、警戒レベルとの対応が分かりにくい面がありました。令和8年3月改定では、こうした情報について、5段階の警戒レベルとの対応が分かりやすくなるよう見直されています

ただし、防災気象情報や警戒レベル相当情報は、市町村が避難情報を発令する際の判断材料となる情報です。市町村が出す避難情報そのものではありません。

たとえば、河川の氾濫危険情報、大雨や土砂災害に関する危険度情報などは、事業所が危険の高まりを把握するための重要な情報です。しかし、それが出たことと、市町村から「高齢者等避難」や「避難指示」が発令されたことは同じではありません。

介護・福祉事業所では、次の情報を組み合わせて判断する必要があります。

・市町村が出す避難情報
・気象庁等が発表する防災気象情報
・河川や土砂災害に関する危険度情報
・自治体のハザードマップ
・事業所周辺の道路、河川、斜面、浸水の状況
・利用者の避難に要する時間
・職員の移動安全

情報名だけを覚える対応では、現場判断につながりません。
「その情報が出たとき、事業所として何を判断するのか」までBCPに落とし込むことが大切です。

時系列情報は、前日判断や早めの体制づくりに活用する

今回の改定で、介護・福祉現場が確認しておきたい情報の一つが「時系列情報」です。

ガイドラインでは、市町村ごとの大雨、土砂災害、高潮等について、翌日までに予測される危険度の見通しが3時間単位で表示される時系列情報が示されています

介護・福祉現場では、この情報を、当日の避難判断だけでなく、前日判断に活用することが重要です。特に、夜間から明け方に危険が高まる場合、当日の朝になってからでは判断が遅れることがあります。

たとえば、次のような判断です。

・翌朝の送迎を実施するか
・通所サービスを休止するか
・訪問予定を変更するか
・訪問を電話確認等に切り替えるか
・夜間帯の職員配置を増やすか
・利用者をあらかじめ安全な場所へ移すか
・家族や関係機関に前日中に連絡するか

時系列情報は、避難情報そのものではありません。

しかし、介護・福祉事業所にとっては、危険が高まる時間帯を早めに把握し、警戒レベル3「高齢者等避難」が出た時点で慌てないための判断材料になります。

なお、新たな防災気象情報の運用開始時期や具体的な確認方法については、内閣府および気象庁の最新情報を確認してください。

施設・通所・在宅・相談系事業所で見直すべき点

今回の改定は、入所施設だけに関係するものではありません。通所、訪問、居宅介護支援、相談支援など、地域で利用者を支える事業所にも関係します。

入所施設や居住系サービスでは、夜間帯の避難判断、上階避難、屋内安全確保、立退き避難、職員参集、避難先の複数確保を確認する必要があります。夜間の職員数が限られている場合、誰が情報収集し、誰が避難誘導し、誰が家族や関係機関へ連絡するのかを具体化しておくことが重要です。

通所介護や通所リハでは、送迎前の判断が重要です。朝の時点で道路冠水や土砂災害の危険がある場合、予定通り送迎を行うことが、利用者と職員双方の危険につながる可能性があります。利用中に避難情報が発令された場合、帰宅させるのか、事業所内で安全確保するのか、家族へどのタイミングで連絡するのかも決めておく必要があります。

訪問介護、訪問看護、訪問入浴、居宅介護支援では、職員が危険な場所へ移動しないことが重要です。利用者の安全確認は大切ですが、浸水区域や土砂災害の危険がある地域へ無理に訪問する計画は危険です。電話確認、家族連絡、近隣、地域包括支援センター、自治体との連携など、代替的な確認方法を考えておく必要があります。

相談支援や地域包括支援センターでは、独居高齢者、老老介護世帯、認知症のある人、障害のある人、避難行動要支援者などへの事前の声かけ、個別避難計画との連動、地域関係者との情報共有が重要になります。

BCP・避難計画で確認したいポイント

今回の改定を踏まえ、介護・福祉事業所では、次の点を確認しておくことが大切です。

見直す項目確認する内容
情報収集体制誰が、どの防災情報を、いつ確認するかを決めているか
警戒レベル3の行動「高齢者等避難」の段階で、利用者の避難・安全確保に移れるか
警戒レベル4の扱い「避難指示」を待って利用者避難を始める計画になっていないか
前日判断時系列情報等を踏まえ、夜間・翌朝の危険に備えた判断ができるか
送迎・訪問の判断危険が高まってからの送迎や訪問を前提にしていないか
避難先・安全確保場所立退き避難、屋内安全確保、上階避難の考え方を整理しているか
職員の安全確保利用者支援と同時に、職員自身の安全確保を明記しているか
訓練内容実際の情報発表を想定した判断訓練を行っているか

この表で特に確認したいのは、警戒レベル3と警戒レベル4の扱いです。

介護・福祉事業所では、警戒レベル4を待つのではなく、警戒レベル3「高齢者等避難」で利用者の避難や安全確保に移る体制を整えておく必要があります。

なお、BCP、非常災害対策計画、避難確保計画などは、それぞれ根拠となる制度や対象施設が異なります。事業所ごとの義務や作成対象については、介護保険・障害福祉制度、自治体の指定状況、水防法や土砂災害防止法等に基づく避難確保計画の対象該当性を確認してください。

職員の安全確保も計画に明記する

災害時には、利用者支援が最優先と考えられがちです。もちろん、利用者の命を守ることは介護・福祉事業所の大切な役割です。

同時に、職員自身の安全確保も重要です。

危険が高まっている地域への無理な訪問、浸水している道路での送迎、暴風雨の中での移動、夜間に少人数で行う避難誘導は、職員の生命にも関わります。

職員が安全に動けなければ、利用者を守ることもできません。
BCPや避難計画には、職員の参集基準だけでなく、次の判断も明記しておくことが望ましいといえます。

・参集しない判断
・訪問しない判断
・送迎を中止する判断
・電話確認に切り替える判断
・職員が危険区域に入らない判断

特に在宅サービスでは、利用者宅へ行くことだけが支援ではありません。電話確認、家族連絡、関係機関への情報共有、自治体や地域包括支援センターとの連携など、災害時に取り得る複数の支援方法を整理しておくことが大切です。

訓練は「避難する訓練」だけでなく「判断する訓練」へ

介護・福祉事業所では、避難訓練を実施しているところも多いと思います。
これまでの訓練は、避難場所へ移動する、利用者を誘導する、点呼する、といった内容が中心だったかもしれません。もちろん、それらも大切です。

今後はそれに加えて、「どの情報が出たら、誰が、何を判断するか」を確認する訓練が重要になります。

たとえば、次のような場面を想定します。

前日夕方の時系列情報で、翌朝に大雨の危険が高まる見込みが示された
・警戒レベル3「高齢者等避難」が発令された
・警戒レベル4「避難指示」が発令される前に、利用者の安全確保を進める必要がある
・通所サービスの利用中に避難情報が発令された
・訪問予定地域に土砂災害の危険が高まった
・夜間帯に浸水リスクが高まり、少人数で対応が必要になった

こうした場面で、管理者、現場職員、送迎担当、訪問職員、相談員、ケアマネジャーが、どのように情報を共有し、どの判断を行うのかを確認することが必要です。

避難訓練は、実際に移動する動作だけを確認するものではありません。災害時に迷いやすい判断を、平時に確認しておくための機会です。

まとめ|介護・福祉現場では「警戒レベル3」を重く受け止める

令和8年3月の「避難情報に関するガイドライン」改定は、介護・福祉現場にとって、業務継続計画(BCP)や避難計画を見直す重要な機会です。

今回の改定では、周知・普及啓発上の表記として「警戒レベル4までに必ず避難!」が示されていますしかし、介護・福祉現場では、この表現を「警戒レベル4まで待ってよい」と受け止めてはいけません。

高齢者や障害のある人など、避難に時間を要する利用者を支える事業所では、警戒レベル3「高齢者等避難」の段階で、危険な場所からの避難や安全確保に移ることが重要です。

施設、通所、訪問、在宅支援、相談支援のいずれにおいても、今回の改定をきっかけに、BCP、非常災害対策計画、避難確保計画、送迎・訪問判断基準、夜間対応マニュアルを点検しておくことが望ましいといえます。

災害対応は、一部の担当者だけが行うものではありません。

現場で利用者を支える一人ひとりの職員が、警戒レベル3「高齢者等避難」の意味を理解し、早めに動ける体制を整えることが、利用者と職員の命を守ることにつながります。

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梅沢 佳裕

ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表
最新福祉情報サイト【介護キャンパス】主宰
梅沢 佳裕

社会福祉士・介護支援専門員・アンガーマネジメントファシリテーター他。
東京都を拠点に、介護・福祉事業所の人材育成、管理職研修、法定研修、制度改正対応、BCP、カスタマーハラスメント対策などをテーマに、研修講師・コンサルティング・執筆活動を行っています。

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公的資料や最新通知を確認しながら、制度と現場実践をつなぐ分かりやすい解説を心がけています。

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