令和8年6月1日から、老健入所者への処方せん交付の例外はどう変わるのか
令和8年3月27日付の介護保険最新情報Vol.1486では、
「介護老人保健施設入所者に係る往診及び通院(対診)について」の一部改正が通知されました。今回の改正は、評価療養、患者申出療養及び選定療養等に関する告示改正に伴うもので、令和8年6月1日から適用されます。
ここでいう「往診・通院(対診)」は、老健の施設医以外の保険医が、入所者を診療する場面に関わる整理です。
そのため、老健の医師、薬剤師、看護職、相談員、事務担当者など、入所者の外部受診や処方せん対応に関わる実務者にとって、確認しておきたい通知といえます。
まず押さえたい基本ルール
老健入所者への処方せん交付は原則として認められていない
今回の改正を読むうえで最初に確認しておきたいのは、基本ルールそのものは変わっていないという点です。
改正後の通知でも、
介護老人保健施設入所者を往診・通院により診療した保険医は、保険薬局における薬剤または治療材料の支給を目的とする処方せんを交付してはならない
という原則は維持されています。
つまり、今回のVol.1486は、
「老健入所者への外来処方が広く可能になった」
という通知ではありません。
あくまで、原則禁止の枠組みはそのままに、例外として認められる場合の範囲が一部見直されたと理解するのが正確です。
今回の改正ポイント1
免疫・アレルギー疾患で、JAK阻害薬・生物学的製剤が新たに例外に追加
今回、新たに例外として追加されたのが、
免疫・アレルギー疾患の治療のために入所前から投与が継続されており、他の治療薬で代替不能な者に対して、JAK阻害薬または生物学的製剤の支給を目的とする処方せんを交付する場合です。
ここで大切なのは、単に
「免疫・アレルギー疾患の患者であればよい」
という話ではないことです。通知の文言から読み取るべき条件は、少なくとも次の三つです。
- 入所前から投与が継続されていること
- 他の治療薬で代替できないこと
- 対象薬剤がJAK阻害薬または生物学的製剤であること
したがって、実務上は、入所後に新たに一般的な治療薬を処方する場面ではなく、継続性と代替不能性がある専門的治療に関する例外が追加された、と整理しておくのが適切です。
今回の改正ポイント2
腎性貧血に関する例外の対象薬剤が拡大
通知では、在宅血液透析または在宅腹膜灌流を受けている患者のうち、腎性貧血状態にある者に対する処方せん交付の例外も見直されています。
対比すると、次のようになります。
従来
- エリスロポエチン
- ダルベポエチン
今回追加
- エポエチンベータペゴル
- HIF-PH阻害剤
今回の改正により、腎性貧血に係る例外は、従来の一部薬剤に限らず、近年の治療実態に合わせて対象薬剤が広がったと理解できます。
ただし、ここでも対象となるのは、
在宅血液透析または在宅腹膜灌流を受けている患者のうち、腎性貧血状態にある者
です。誰にでも広く適用されるわけではない点は、原文どおり押さえておく必要があります。
今回の改正ポイント3
「血友病」から「血友病等」へと表現が見直された
もう一つの改正点は、血液凝固異常に関する例外規定の表現です。
従来は、
「血友病の患者に対して使用する医薬品(血友病患者における出血傾向の抑制の効能又は効果を有するもの)」
とされていました。
これが改正後は、
「血友病等の患者に対して使用する医薬品(血友病等の患者における出血傾向の抑制の効能又は効果を有するもの)」
へと改められています。
この見直しにより、対象の考え方は、従来よりもやや広い表現になったといえます。
実務上は、血友病に限らず、同様に出血傾向の抑制を必要とする「血友病等」の患者も含む整理になったと受け止めておくのが自然です。
ただし、ここでも通知の文言を離れて広く解釈しすぎず、出血傾向の抑制の効能または効果を有する医薬品という条件を踏まえて判断することが大切です。
例外規定の番号にも注意
今回は「最後に追加」ではなく、途中に新設されたため番号が後ろへずれている
今回の改正では、例外規定の総数が、従来の①〜⑩から、改正後は①〜⑪へと増えています。
ここで実務上注意したいのは、新しい例外が末尾に追加されたのではなく、②として途中に挿入されたことです。
そのため、従来の②〜④は改正後の③〜⑤へ、従来の⑤は改正後の⑥へ、というように、後ろの番号が一つずつずれていると理解しておくと分かりやすいです。
院内マニュアルや説明資料、事務整理表などで旧番号を参照している場合は、単に「11個に増えた」と見るだけでなく、途中挿入による番号のずれまで確認しておくと、実務上の混乱を防ぎやすくなります。
実務者が押さえておきたいポイント
今回の通知は「原則維持+例外範囲の見直し」と理解する
Vol.1486を現場実務の観点から整理すると、ポイントは次の三つに集約されます。
1.原則は変わっていない
老健入所者に対する処方せん交付は、引き続き原則不可です。
2.例外の内容が一部追加・拡大された
今回の改正で見直されたのは、主に次の三点です。
- 免疫・アレルギー疾患に係るJAK阻害薬・生物学的製剤の追加
- 腎性貧血に関する対象薬剤の追加
- 血友病から血友病等への表現拡大
3.適用開始日は令和8年6月1日
今回の改正は、令和8年6月1日から適用です。
それ以前の運用と、それ以降の運用を混同しないようにする必要があります。
まとめ
老健入所者に対する処方せん交付の「例外」を確認する通知
Vol.1486は、介護老人保健施設入所者に係る往診・通院(対診)における処方せん交付について、例外の範囲を一部見直した通知です。
原則は変わらない一方で、医療の実態に合わせて例外対象が追加・拡大されています。
そのため、老健の医師、薬剤師、相談員、事務担当者としては、
「処方せん交付は原則不可だが、どの場合に例外となるのか」
を改めて確認しておくことが大切です。
特に、令和8年6月1日以降の運用では、今回の改正内容を踏まえて判断する必要があります。
※ご確認いただきたい点
本記事は、厚生労働省が公表した介護保険最新情報Vol.1486の原文に沿って、実務者向けに要点を整理したものです。
できる限り正確を期して記載していますが、実際の運用判断にあたっては、必ず厚生労働省の原通知・関係告示・最新の疑義解釈等の一次情報をご確認ください。
とくに、厚労省通知や医療関係の情報は、通知本文の文脈や関連する告示・算定ルールをあわせて確認することが重要です。
本記事は実務理解を助けるための参考情報であり、最終的な判断は必ず元情報に基づいて行っていただくことをおすすめします。
著者(講師)
ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表 梅沢 佳裕
社会福祉士・介護支援専門員・アンガーマネジメントファシリテーター/介護キャンパス 主宰
関連リンク
■介護保険最新情報vol.1486(「介護老人保健施設入所者に係る往診及び通院(対診)について」の一部改正について)(令和8年3月27日厚生労働省老健局老人保健課長通知)
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