【記録の書き方】これだけは知っておきたい介護・支援記録の不適切語・要注意語(中編)

法定研修と実務スキル

筆者:ベラガイア17人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕:社会福祉士・ケアマネジャー)

今回は、普段実施している研修内容の一部として、ワーク①「支援記録のNG検討(基礎編)」と、講義③「落とし穴語・おしゃべり語」の内容をご紹介します。前編では、支援記録の役割と書き方の基本を確認しました。中編では、その土台を踏まえたうえで、実際の現場でつい書いてしまいがちな記録表現を見つめ直していきます。

ここで皆さんに意識していただきたいのは、「書いてはいけない言葉を暗記すること」ではないという点です。大切なのは、なぜその表現が伝わりにくいのか、なぜその表現ではご本人の様子が見えにくくなるのかを、自分の目で確かめることです。

記録の研修というと、正しい言い換えだけを覚えるものだと思われがちです。ですが実際には、現場でよくある書き方のどこに問題があるのか、自分で気づけるようになることのほうが大切です。中編は、そのための「気づき」の回です。研修を受けているつもりで、一緒に見ていきましょう。


ワーク①:支援記録のNG検討(基礎編)

まずは、「どこが問題か」を自分の目で見つけてみましょう

ここで皆さんに取り組んでいただくのが、記録文を読んで「どこがNGか」を考えるワークです。研修資料では、現場で“ありがち”な三つの記録文が示されており、それぞれについて、どこが不適切なのか、どう直せばよいのかを考える流れになっています。

ここで大切なのは、「この言葉はダメ」とすぐに答え合わせをすることではありません。まず皆さん自身に、どの言葉が気になるかなぜその表現では伝わらないのかを考えていただくことに意味があります。記録の質を上げるためには、正解を覚えるだけでなく、記録を読む目を育てる必要があるからです。

「よくある表現」ほど、見過ごしやすいものです

ワークで示されている記録文には、次のような表現が含まれています。
「朝から様子が変」
「無視される感じだった」
「最近は同様の場面が続いている印象」
「頑固で」
「何を言っても聞く耳を持たず」

どれも、現場ではつい書いてしまいがちな言葉です。だからこそ、このワークには意味があります。

たとえば、「様子が変」という表現を見たとき、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。表情のことなのか、言動のことなのか、体調のことなのか、それとも活動への参加状況のことなのか。この言葉だけでは、読み手は場面を具体的に思い浮かべることができません。記録に必要なのは、書いた人の“感じ”ではなく、誰が読んでも分かる“事実”です。

また、「無視される感じだった」「印象」といった言葉も要注意です。これらは職員の受け止め方を表しているようで、実際には何が起きたのかが見えない表現です。ご本人が返答しなかったのか、視線をそらしたのか、その場を離れたのか、それとも聞こえていなかった可能性があるのか。記録では、そうした具体的な事実のほうが大切です。

記録では、「評価」より「観察」が基本です

ここで改めて意識していただきたいのが、記録は評価を書くものではなく、観察した事実を書くものだということです。

「頑固」「聞く耳を持たない」といった表現は、職員がその場面をどう受け止めたかを示しているにすぎません。けれども、その言葉では、ご本人が実際にどんな様子だったのかは伝わりません。むしろ、読み手に強い先入観を与えてしまうおそれがあります。

ここで皆さんに押さえていただきたいのは、主語主体者はご本人だということです。職員が困ったかどうかではなく、ご本人がどのような言動を示したのか、どのような働きかけにどう反応したのか。そのことが見える記録にする必要があります。

たとえば、同じ場面でも次のように書くと、伝わり方が変わります。

【高齢】
「頑固で入浴を拒否した」ではなく、
「入浴を勧めると『今日は入りたくない』と2回発言され、脱衣場前で足が止まった」

【障害】
「聞く耳を持たなかった」ではなく、
「作業参加の声かけに対し、視線を窓の外へ向けたまま返答はなく、その後席を離れた」

このように書くと、読み手はその場面を具体的に思い浮かべやすくなります。
ここでのポイントは、職員の判断を先に書かないことです。まずは見たこと、聞いたこと、やりとりしたことを書く。そこから支援の検討が始まります。


講義③:落とし穴語・おしゃべり語

「何となく通じる言葉」が、記録では通じないことがあります

ここから講義③に入ります。ここでまず皆さんにお伝えしたいのは、普段の会話で何となく通じる言葉ほど、記録では危ないことがあるということです。研修資料では、このような言葉を「落とし穴語」「おしゃべり語」に分けて整理しています。

落とし穴語とは、
「変わりなし」
「対応する」
「様子」
「参加する」
「コール有り」
「異常なし」
など、一見すると記録らしく見えるのに、何がどうだったのかが具体的に伝わりにくい言葉です。

一方のおしゃべり語とは、
「○○っぽい」
「○○的な」
「パニくる」
など、普段の会話では使われることがあっても、記録としては曖昧で、読み手によって受け取り方が分かれやすい言葉を指します。

注)落とし穴語・おしゃべり語という表記は、梅沢が専門誌連載の企画として執筆した際に名付けた造語です。実務者の皆さまに分かりやすいように意図的に使用しています。

「変わりなし」は、本当に伝わっているでしょうか

ここでまず、よくある表現として「変わりなし」を考えてみましょう。現場では使いやすい言葉ですが、記録として見たときには、何がどう変わらなかったのかが分かりません。食事量なのか、表情なのか、歩行状態なのか、発言内容なのか。この言葉だけでは、読み手は状況を具体的に把握できません。

もし本当に変化がなかったことを伝えたいのであれば、何について変化がなかったのかを書く必要があります。

【高齢】
「変わりなし」ではなく、
「朝食摂取量は前日と同程度で、食後は居室にて横になって過ごされた」

【障害】
「変わりなし」ではなく、
「午前の作業参加状況は前回と同様で、開始後10分ほどで席を離れる様子が見られた」

こう書けば、読み手はどの場面の何についての記録なのかを理解しやすくなります。

「対応しました」では、支援の中身が見えません

次に見直したいのが、「対応しました」という表現ですこれも現場ではよく見かけますが、記録としてはかなり曖昧です。声かけをしたのか、そばについたのか、環境調整をしたのか、ご本人に説明したのか、それともご家族に連絡したのか。“対応”という言葉の中身が見えないため、記録としては不十分です。

ここで大切なのは、職員が何をしたのかを、具体的に短く書くこです。
たとえば、
「水分摂取を勧めた」
「椅子へ案内した」
「声かけ後、別室で休憩していただいた」
など、行動が見えるように書くと、読み手に伝わりやすくなります。記録では、まとめ言葉で済ませず、支援の中身が見える表現にすることが必要です。

「おしゃべり語」は、記録を主観的にしてしまいます

講義③でもう一つ大切なのが、おしゃべり語を記録に持ち込まないことです。たとえば、「○○っぽい」「パニくる」「なんか不穏」などは、普段の会話では意味が通じても、記録では曖昧で、読み手に誤解を与えやすい表現です。

ここで意識していただきたいのは、記録では“誰が読んでも同じ情景が浮かぶこと”が大切だということです。

「パニくっていた」ではなく、
「大きな声を出しながら室内を往復された」

「不穏っぽい」ではなく、
「視線が定まらず、同じ質問を3回繰り返された」

このように、場面が見える言葉へ置き換える必要があります。
普段の会話の勢いで書いてしまうと、その場にいた職員には通じても、他の人には正確に伝わりません。だからこそ、会話の言葉と記録の言葉は分けて考えることが大切です。


中編で皆さんに持ち帰っていただきたいこと

中編で大切にしているのは、記録の問題は「言葉づかい」だけの問題ではないということです。落とし穴語やおしゃべり語を使ってしまう背景には、その場面を具体的に見ていない見たことより印象で書いている職員の感じ方が先に出てしまっているといった要因があります。

だからこそ中編では、単に禁止語を覚えるのではなく、なぜその表現では伝わらないのかを考えることが大切です。前編で確認した事実・簡潔・客観という基本を、ここで改めて使ってみる。すると、「何となく書いていた言葉」が、実はかなり曖昧だったことに気づけるはずです。

中編は、その気づきを自分の記録に持ち帰るための回です。後編ではさらに、職員主体主導語マイナス語を通して、記録の視点そのものを見直していきます。


研修企画担当の皆さまへ(講師依頼について)

記録の研修は、基本の確認だけで終わると、現場では「分かったつもり」で終わってしまうことがあります。本研修の中編では、実際の現場で出やすい記録文をもとに、どこが問題かを自分で見つけるワークと、落とし穴語・おしゃべり語の整理を通して、職員一人ひとりの「記録を見る目」を育てていきます。高齢者介護・障害福祉の両分野に共通する視点を押さえながら、文例は必要に応じて分けて示せるため、現場に引きつけて理解しやすい内容です。

普段実施している研修内容の一部をご紹介しましたが、この中編は、「ありがちな書き方を、そのまま見過ごさない」ための実践的な回です。新任職員には記録の癖に早めに気づく機会として、中堅職員には日頃の表現を見直す機会として、管理者には記録指導の視点を共有する機会として活用しやすい内容です。

このような事業所様におすすめです

  • 曖昧な記録表現が多く、申し送りで補足が必要になりやすい
  • 「対応しました」「変わりなし」が多く、記録の具体性に課題がある
  • 新任職員に、記録で避けたい表現を早めに伝えたい
  • 高齢・障害の両分野に共通する記録研修を探している

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著者(講師)

ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表 梅沢 佳裕
 社会福祉士・介護支援専門員・アンガーマネジメントファシリテーター


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