【記録の書き方】これだけは知っておきたい介護・支援記録の不適切語・要注意語(後編)

法定研修と実務スキル

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今回は、普段実施している研修内容の一部として、講義④「職員主体主導語・マイナス語」と、ワーク②「支援記録のNG検討(実践編)」の内容をご紹介します。前編では、支援記録の役割と書き方の基本を確認し、中編では、落とし穴語やおしゃべり語を通して、記録に入りやすい曖昧な表現を見直しました。後編では、その先にあるもう一つ大切な問題、つまり「記録の中に、職員の見方や評価が入り込みすぎていないか」という点を見ていきます。

ここで皆さんにまず意識していただきたいのは、記録は職員が思ったことを書くものではなく、ご本人の生活や言動、支援の経過を事実として残すものだということです。けれども実際の現場では、つい「職員主体」の表現や、ご本人を低く見てしまうようなマイナス語が混ざってしまうことがあります。後編では、その危うさを確認しながら、本人主体の記録へどう戻していくかを考えていきます。


講義④:職員主体主導語・マイナス語

まず見直したいのは、「誰を中心に書いているか」です

ここで最初に皆さんに問いかけたいのは、その記録の主語は誰になっているかということです。記録を書いていると、知らず知らずのうちに、職員の視点が前に出てしまうことがあります。たとえば、「説明してあげた」「参加させた」「落ち着かせた」といった表現です。こうした書き方は、一見すると支援の内容を書いているようでいて、実際には職員がどう動いたかばかりが中心になっており、ご本人がどう感じ、どう反応したのかが見えにくくなります。

ここで大切なのは、支援記録は職員の頑張りを書くものではないということです。記録の中心にあるべきなのは、あくまでもご本人の言動、状態、反応、経過です。職員の関わりを書く必要はありますが、それはご本人の様子と切り離して書くものではありません。つまり、記録では**「職員が何をしたか」だけではなく、「そのときご本人がどうだったか」**が見えることが大切です。

たとえば、次のような違いを比べてみてください。

【高齢】
「入浴を促して入ってもらった」ではなく、
「入浴を勧めると『今日は入りたくない』と発言されたが、職員が説明後、脱衣場まで移動された」

【障害】
「活動に参加させた」ではなく、
「活動開始前に声かけを行うと、しばらく椅子に座っておられたが、その後職員と一緒に作業机へ移動された」

このように書くと、職員の働きかけとご本人の反応の両方が見えます。記録に必要なのは、支援の事実と経過であって、職員の主導性を強く見せることではありません。

注)スタッフ主体主導語・マイナス語という表記は、梅沢が専門誌連載の企画として執筆した際に名付けた造語です。実務者の皆さまに分かりやすいように意図的に使用しています。

「マイナス語」は、ご本人の尊厳を傷つけるおそれがあります

次に見直したいのが、マイナス語です。研修資料では、相手をおとしめるような言葉は使用しないことが明示されています。たとえば、「頑固」「わがまま」「だらしない」「聞き分けがない」といった表現は、職員がその場面をどう受け止めたかを表しているだけで、ご本人の状態や背景を正確に伝えているわけではありません。むしろ、読み手に先入観を与え、ご本人への見方をゆがめてしまうおそれがあります。

ここで皆さんに意識していただきたいのは、記録は人を評価する文章ではないということです。ご本人が活動に参加しにくかった背景には、気分の落ち込み、体調の変化、不安、見通しの持ちにくさ、疲れ、対人緊張など、さまざまな要因があるかもしれません。にもかかわらず、「頑固」「非協力的」などと書いてしまうと、その場面が職員の困りごととしてしか残らなくなります。これは、高齢者介護でも障害福祉でも同じです。記録では、困った気持ちより、観察した事実を優先する必要があります。

たとえば、同じ場面でも次のように書き換えると、記録の質は大きく変わります。

【高齢】
「わがままで食事を拒否した」ではなく、
「昼食時、『今は食べたくない』と発言され、主菜には箸をつけられなかった」

【障害】
「聞き分けが悪く活動を拒否した」ではなく、
「活動開始の声かけ後、机には着かず、窓際で立ったまま過ごされる様子が見られた」

このように書くと、職員の評価ではなく、ご本人の言動やその場面の状況が伝わります。ここで大切なのは、「優しい言葉を使う」ことだけではありません。ご本人の尊厳を損なわず、支援につながる情報として記録することが重要なのです。

本人主体の記録は、権利擁護にもつながります

後編で皆さんにぜひ押さえていただきたいのは、本人主体の記録は単なる書き方の工夫ではなく、権利擁護にもつながるということです。
※権利擁護とは、ご本人の尊厳や意思、選択が守られるよう支える考え方です。

職員主体の表現やマイナス語が多い記録は、支援が「ご本人のため」ではなく、「職員の都合で進んでいる」ように見えやすくなります。反対に、ご本人の言葉、反応、経過が見える記録は、その人を中心に支援が考えられていることを示します。研修資料でも、支援記録は本人主体を可視化する専門的記録だと整理されています。

ここでのポイントを短く整理すると、後編で見直すべきなのは次の二つです。

  • 職員の主導性ばかりが前に出ていないか
  • ご本人を低く見るような評価語が入っていないか

この二つに気づけるようになると、記録はただ正しい言葉を並べるものではなく、支援観そのものが表れるものだと見えてきます。


ワーク②:支援記録のNG検討(実践編)

後編では、「書き換える力」を身につけます

ここで皆さんに取り組んでいただくのが、支援記録のNG検討(実践編)です。中編のワーク①では、「どこが問題か」を見つけることが中心でした。後編では一歩進めて、どう書き換えると、ご本人の様子が伝わる記録になるのかを考えていきます。

研修資料では、OK例・NG例を並べて比較する形が示されており、そこから評価語・印象語・職員主体の表現が、どのように事実の記録へ変わるのを確認する流れになっています。ここで皆さんに意識していただきたいのは、「言い換えを覚える」こと以上に、何を見て、何を書くかを変えることです。記録が変わるのは、言葉だけではなく、観察の視点が変わるからです。

「本人の言動」と「職員の関わり」を分けて考えます

実践編でまず大切になるのは、記録の中でご本人の言動職員の関わりを分けて捉えることです。現場では、この二つが混ざってしまい、「職員がどう困ったか」が主な内容になりやすいことがあります。ですが、記録では、まずご本人の様子を押さえ、そのうえで職員がどんな支援を行い、その結果どうなったかを整理する必要があります。

たとえば、「対応に困った」「急いで誘導したが間に合わなかった様子」といった書き方では、職員の気持ちは見えますが、ご本人がどのような状態で、何が起きたのかが曖昧になりやすくなります。研修資料のOK例では、ご本人の状態、職員の働きかけ、その結果が分かるように記録されており、そこに大きな違いがあります。

記録は「困ったこと」ではなく「支援の経過」を残します

ここで皆さんにもう一つ意識していただきたいのは、記録はその場の困りごとを書くものではなく、支援の経過を残すものだということです。もちろん、困った場面を書くこともあります。ですが、そのときでも中心に置くべきなのは、ご本人の状態、支援の内容、結果として何が見られたかです。

たとえば、

【高齢】
「トイレに間に合わず失禁した」だけで終わるのではなく、
「トイレ誘導の声かけ後、廊下を移動中に失禁が見られた。表情に落ち着きのなさがあり、歩行速度は速かった」

【障害】
「活動に参加せず困った」ではなく、
「活動開始時に机前へ案内したが着席されず、室内を往復する様子が見られた。職員が別室での休憩を提案すると、椅子に座られた」

このように書くと、ご本人の様子と支援の経過が見えます。すると、次の職員が読んだときにも、「次はどう関わるか」を考えやすくなります。これが、チーム支援につながる記録です。

最後に大事なのは、「明日から一つ変える」ことです

ワーク②のまとめでは、学びを明日からの行動につなげることが示されています。研修資料でも、「今日の研修で、明日実践してみようと思ったことを1行で書く」というミニワークが置かれています。ここで大切なのは、全部を一気に変えようとしないことです。まずは一つで十分です。

たとえば、

  • 「変わりなし」を使う前に、何が変わらなかったかを書く
  • 「対応しました」と書く前に、何をしたのかを具体的に書く
  • 評価語を書きそうになったら、ご本人の言動に戻す

こうした小さな見直しでも、記録は確実に変わっていきます。後編で皆さんに持ち帰っていただきたいのは、言葉の選び方が支援の質を左右するということ、そして支援記録は本人主体を可視化する専門的記録であるということです。さらに、記録はチーム支援を支える共通言語であり、多職種が同じ理解を持てる記録ほど、一貫した支援につながります。


後編で皆さんに持ち帰っていただきたいこと

前編では、記録の役割と基本を確認しました。中編では、落とし穴語やおしゃべり語を通して、曖昧な表現を見直しました。そして後編では、さらに一歩進んで、記録の中に入り込みやすい職員主体の視点やマイナスの評価語を見直しました。

ここでの学びを一言でまとめるなら、記録は「何があったか」を書くだけでなく、「誰を中心に見ているか」が表れるものだということです。職員の都合や印象が前面に出た記録は、ご本人の生活や思いを見えにくくします。反対に、ご本人の言動、反応、支援の経過が見える記録は、そのまま本人主体の支援につながっていきます。

このシリーズを通して確認してきたのは、記録の言葉を整えることは、単なる文章の問題ではないということです。支援の質を整えることそのものなのです。


研修企画担当の皆さまへ(講師依頼について)

記録の研修は、言葉の言い換えだけを扱うと、現場では「表現の注意」で終わってしまうことがあります。本研修の後編では、職員主体主導語マイナス語を通して、記録の中に入り込みやすい視点そのものを見直していきます。さらに、実践編ワークを通して、「何がNGか」を見つけるだけでなく、「どう書き換えれば本人主体の記録になるのか」まで考えていきます。

普段実施している研修内容の一部をご紹介しましたが、後編は特に、記録指導を担う立場の方にも活用しやすい内容です。新任職員には「やってはいけない書き方」に早めに気づく機会として、中堅職員には日頃の表現を見直す機会として、管理者やリーダーには記録を通して支援観をそろえる視点として役立ちます。高齢者介護・障害福祉の両分野に共通する内容として実施しやすく、必要に応じて文例を分けて示すことも可能です。

このような事業所様におすすめです

  • 評価語や職員目線の表現が記録に入りやすい
  • 新任職員への記録指導に悩んでいる
  • 本人主体の記録を改めて見直したい
  • 高齢・障害の両分野に共通する記録研修を探している

研修のご相談・ご依頼について

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著者(講師)

ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表 梅沢 佳裕
 社会福祉士・介護支援専門員・アンガーマネジメントファシリテーター


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