(筆者:ベラガイア17人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕:社会福祉士・ケアマネジャー)
令和8年3月13日、厚生労働省は、令和8年度の介護職員等処遇改善加算に関する局長通知と、あわせてQ&A(第1版)を示しました。
今回の通知は、単なる参考資料ではありません。
令和8年度の届出、算定、実績報告を行ううえで、実務の基準になる重要な通知です。
また、令和6年3月15日付の旧通知は、令和8年3月31日で廃止されることとされており、令和8年度分の処遇改善加算の届出は、今回の通知に基づいて進める必要があります。
まず全体像を整理します
今回の令和8年度改定では、介護職員等処遇改善加算について、次のような大きな見直しが行われています。
- 対象が介護職員のみから介護従事者へ拡大されたこと
- 生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの上乗せ区分が設けられたこと
- これまで対象外だった訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援等にも新たに加算が設けられたこと
つまり、今回の見直しは、加算率の変更だけではなく、対象範囲・区分・届出実務まで大きく整理し直した改定だと理解する必要があります。
①〜⑦の基本要件をまず押さえる
令和8年6月以降、表1-2から表1-4のサービスで処遇改善加算Ⅰイを算定する場合には、基本として次の①〜⑦を満たす必要があります。
① 月額賃金改善要件
加算Ⅳ相当額の2分の1以上を、基本給等の改善に充てる必要があります。
② キャリアパス要件Ⅰ
任用要件や賃金体系を整備し、職員に周知していることが求められます。
③ キャリアパス要件Ⅱ
研修計画を作成し、研修機会を確保していることが必要です。
④ キャリアパス要件Ⅲ
昇給の仕組みが整備されていることが求められます。
⑤ キャリアパス要件Ⅳ
経験・技能のある介護職員について、賃金改善後に年額440万円以上となる者を1人以上確保する考え方が示されています。
ただし、ここには例外もあります。
⑥ キャリアパス要件Ⅴ
介護福祉士等の配置要件です。
⑦ 職場環境等要件
入職促進、両立支援、腰痛対策、やりがいの向上、生産性向上等に関する取組が求められます。
なお、区分によって必要な要件は異なります。
たとえば、Ⅱイは⑥を、Ⅲは⑤⑥を、Ⅳは④〜⑥を満たさなくても算定できます。
そして、今回特に重要なのが、Ⅰロ・Ⅱロでは⑧令和8年度特例要件が追加で必要になることです。
最重要ポイント
⑧ 令和8年度特例要件をどう理解するか
今回の通知で特に重要なのが、⑧令和8年度特例要件です。
これは、生産性向上や協働化に関する取組を要件化したもので、Ⅰロ・Ⅱロの算定に関わります。
ここは非常に誤解されやすいため、項目ごとに丁寧に確認しておきます。
⑧-1 ケアプランデータ連携システムの利用
一つ目は、ケアプランデータ連携システムを利用していることです。
ただし、これはすべてのサービスに共通して求められるものではなく、表1-2および表1-3のサービスに限られています。
また、申請時点で未利用であっても、加入して利用することを誓約すれば、申請時点では要件を満たす取扱いとなります。
ただし、後の実績報告では、実際に利用した実績を報告しなければなりません。
⑧-2 生産性向上推進体制加算ⅠまたはⅡの算定
二つ目は、生産性向上推進体制加算ⅠまたはⅡを算定していることです。
こちらは、表1-3および表1-4のサービスに関係する要件です。
申請時点で未算定でも、今後算定することを誓約すれば足りますが、やはり実績報告では実際の算定状況が確認されます。
⑧-3 社会福祉連携推進法人への所属
三つ目は、所属法人が社会福祉連携推進法人に所属していることです。
これは、個々の事業所というより、法人単位で判断される要件です。
⑧の要件を一言でまとめると
⑧令和8年度特例要件は、
単に「ICTを導入したらよい」という話ではありません。
今回の通知では、
- ケアプランデータ連携システムの利用
- 生産性向上推進体制加算の算定
- 社会福祉連携推進法人への所属
という三つの異なる入口が示されています。
つまり、⑧は、生産性向上または協働化を実際に進めていることを確認するための要件として設計されていると理解するのが適切です。
新たな対象サービスはどう考えるか
表1-5に掲げる、令和8年6月から新たに処遇改善加算の対象となるサービスでは、要件構造が少し異なります。
これらのサービスでは、賃金改善の実施に加えて、
① 令和8年度特例要件
または
② 処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件
のいずれかを満たせば算定できます。
ここでいう「Ⅳ取得に準ずる要件」とは、次の三つです。
- キャリアパス要件Ⅰ
- キャリアパス要件Ⅱ
- 職場環境等要件
つまり、新設サービスでは、最初からフルセットの要件を求めるのではなく、
特例要件で入るか、加算Ⅳ相当の基礎整備で入るかという二本立てになっています。
Q&A第1版で補足されている重要事項
今回のQ&A第1版では、⑧令和8年度特例要件について、実務上の注意点がさらに補足されています。
1.「同等の機能とセキュリティを有すると認めたシステム」の具体例
令和8年3月13日時点で、厚生労働省が具体例として示しているのは次のサービスです。
- カナミッククラウドサービス
- ケアプランデータ連携サービス
- でん伝虫データ連携サービス
- まめネット ケアプラン交換サービス
2.加入だけでは足りず「利用」が必要
ケアプランデータ連携システムについては、単に契約や加入をしただけではなく、実際に利用していることが求められます。
3.⑧は主として6月以降の算定に関わる
⑧は、基本的には令和8年6月以降の算定に係る要件です。
ただし、4月・5月の申請で、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳや職場環境等要件について「令和9年3月末までに整備する」と誓約して申請する場合には、⑧も満たしている必要があります。
4.根拠資料の保存が必要
⑧の審査では、すべての事業所に一律で添付資料提出を求めるものではありません。
しかし、指定権者から確認を求められた場合に備えて、
- スクリーンショット
- 体制届出
- 認定申請書
などの根拠資料を準備し、2年間保存しておく必要があります。
届出期限も非常に重要です
令和8年度は、届出期限の整理を誤ると算定実務に影響が出ます。
主な期限は次のとおりです。
体制届出
通常、
- 居宅系サービスは算定開始月の前月15日
- 施設系サービスは算定開始月の1日
までですが、
令和8年4月から新規算定または区分変更する場合は、居宅系・施設系ともに令和8年4月1日が基本です。
ただし、都道府県知事等は4月15日までとしても差し支えないとされています。
また、4月・5月は算定せず、6月から新設サービスで加算を取り始める場合は、
- 居宅系は5月15日
- 施設系は6月1日
が基本ですが、こちらも6月15日までの柔軟対応が認められています。
処遇改善計画書
- 4月・5月分を含む場合は 4月15日
- 6月以降だけの新設サービスは 6月15日
実績報告書
通常は令和9年7月31日です。
まとめ
今回のVol.1479で実務者が押さえておきたい核心は、次の三点です。
1.令和8年度の処遇改善加算は、対象拡大と上乗せ区分により大きく見直された
介護職員だけでなく介護従事者へ対象が広がり、生産性向上・協働化に取り組む事業者向けの区分も設けられました。
2.⑧令和8年度特例要件は非常に重要
しかもその内容は、単なるICT導入ではなく、
- ケアプランデータ連携システム
- 生産性向上推進体制加算
- 社会福祉連携推進法人
という三つの柱で構成されています。
ここは、必ず一つひとつ確認する必要があります。
3.届出・誓約・実績報告まで含めて実務が設計されている
加算率だけを見るのではなく、
どの区分を目指すのか、⑧をどう満たすのか、いつまでに何を出すのか
まで整理しておくことが大切です。
原文は非常に複雑ですが、実務で大切なのは、
「どの区分を算定するか」ではなく、「その区分に必要な準備を本当に整えられるか」
という視点です。
著者(講師)
ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表 梅沢 佳裕
社会福祉士・介護支援専門員・アンガーマネジメントファシリテーター
関連リンク
■介護保険最新情報vol.1479(「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」及び「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」について)(令和8年3月13日厚生労働省老健局老人保健課事務連絡)
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