認知症の人が介護施設へ入所すると、住まいや生活習慣、人間関係などが変わります。慣れない環境に戸惑い、不安を訴えたり、これまでと異なる様子が見られたりすることがあります。
施設入所後の支援では、本人の生活歴や希望を把握し、安心して過ごせる環境を整えることが重要です。また、家族から得た情報を日々のケアに活かし、職員間で共有することも欠かせません。
今回は、施設入所後の本人理解、家族対応、多職種連携について、介護・福祉実務者向けに解説します。
この記事で分かること
- 施設入所後に不安や戸惑いが生じる背景
- 本人の生活歴と希望を支援に活かす方法
- 家族対応と多職種連携で押さえたいポイント
1.施設入所後の不安と生活環境の変化
施設入所に伴い、本人の生活環境は大きく変わります。
住み慣れた自宅から施設へ移り、初めて会う職員や他の利用者と生活することになります。食事や入浴、就寝の時間も以前とは異なる場合があります。
認知症による記憶障害や見当識障害などがある場合、新しい環境に慣れるまで時間がかかることもあります。
入所後に見られる様子と確認したいこと
| 本人の様子 | 確認したいこと |
|---|---|
| 「家に帰りたい」と話す | 本人の希望、自宅への思い、不安 |
| 食事が進まない | 食習慣、好み、体調、食事環境 |
| 夜間に何度も目が覚める | 睡眠習慣、排泄、痛み、室内環境 |
| 入浴を希望しない | 入浴習慣、寒さ、羞恥心、説明の仕方 |
こうした変化には、生活環境のほか、身体状態や服薬状況などが関係する場合もあります。
特に、急激な意識や行動の変化が見られた場合は、速やかに看護職などへ報告し、必要な医療的評価につなげます。
2.本人の生活歴と希望を支援に活かす
認知症の人への支援では、心身の状態や生活上の課題とともに、これまでの生活習慣や本人の希望を把握することが重要です。
例えば、長年家族の食事を用意してきた人が、夕方になると「夕飯の支度をしないと」と話す場合があります。
以前の暮らしや家庭での役割を知ることで、本人の言葉や行動を理解する手がかりが得られます。
生活歴として確認したい情報
- 生活習慣:起床・就寝時間、食事、入浴、日課
- 本人の好み:好きな活動、落ち着く場所、苦手な環境
- これまでの役割:仕事、家事、家族との関わり
- 本人の希望:施設でも続けたいこと、自分で行いたいこと
これらは、本人に直接確認することを基本とし、必要に応じて家族からも情報を得ます。
言葉で希望を伝えることが難しい場合は、表情やしぐさ、日々の反応などにも目を向けます。
厚生労働省の「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)」(2025年3月改訂)では、本人の意思を尊重し、意思形成・意思表明・意思実現を支援する考え方が示されています。
本人が希望する生活を続けられるよう、日常の選択を尊重した支援が大切です。
3.家族対応で大切にしたい情報共有

施設入所は、家族の生活にも変化をもたらします。
入所後の本人の様子を心配したり、施設での過ごし方を詳しく知りたいと考えたりする家族もいます。
家族対応では、本人の状態を具体的に伝え、必要な生活情報を確認することが大切です。
例えば、家族から「施設で落ち着いて過ごせていますか」と尋ねられた場合です。
【説明の一例】
「夕方になるとご自宅のことを話されることがあります。職員がお話を伺うと、その後はフロアで過ごされています。ご自宅では夕方、どのように過ごされていましたか」
本人の様子を具体的に説明しながら、自宅での生活習慣を確認できます。
家族への情報提供では、本人の意思、プライバシー、家族関係にも配慮します。
また、介護職員の判断だけで対応が難しい相談や、施設の支援方針に関わる内容は、生活相談員や管理者などと連携して対応します。
4.多職種連携で施設入所後の生活を支える
施設入所後の支援には、介護職員、看護職、生活相談員、介護支援専門員などが関わります。
介護職員は、日々の生活場面で本人の様子や変化を把握します。看護職は健康状態や服薬状況などを確認します。
生活相談員は、本人・家族からの相談や関係調整に関わり、施設の介護支援専門員は、アセスメントや施設サービス計画の作成・見直しに関わります。
具体的な役割分担は、施設種別や人員配置によって異なります。
例えば、入所後に食事量が減った場合、介護職員が把握した情報を看護職や管理栄養士などと共有することで、身体状態や食事環境などを確認できます。
日々の介護記録や申し送りで必要な情報を共有し、本人の状態に応じた支援を検討することが重要です。
まとめ|本人の暮らしを理解し、支援につなげる
認知症の人が施設へ入所した後は、生活環境の変化によって不安や戸惑いが生じることがあります。
施設入所後の支援では、次の3点を意識します。
① 本人の生活歴と希望を確認する
これまでの習慣や大切にしてきたことを把握し、施設生活に活かします。
② 家族との情報共有を丁寧に行う
本人の状態を具体的に伝え、家族から得た生活情報を支援に役立てます。
③ 多職種で情報を共有する
入所後の変化を記録し、必要に応じて支援方法を見直します。
本人がこれまで大切にしてきた暮らしとのつながりを意識し、意思や希望を尊重した施設生活を支えていきましょう。
参考・出典
- 厚生労働省「認知症施策推進基本計画(令和6年12月3日閣議決定)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html - 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212395.html
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