2027年介護改正|公私融合で生き残る!混合介護の経営戦略

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導入|2026年、私たちは「制度の限界」という壁の前に立っている

2026年春の介護・福祉現場には、明らかな緊張感があります。背景にあるのは、慢性的な人手不足、賃上げ圧力、そして保険内サービスだけでは現場の持続可能性を守り切りにくくなっている現実です。厚生労働省は、介護職員の必要数について、2022年度の約215万人に対し、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人が必要になるとの推計を示しています。人材確保は、もはや一部の法人だけの悩みではありません。

同時に、政府は公定価格分野について、賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保が図られるよう、従来のコスト抑制一辺倒からの転換を打ち出しています。これは、介護・福祉分野が「我慢で回す産業」では立ち行かない段階に来ていることを示しています。

さらに、2027年改正を考えるうえでは、目先の制度改正だけでは足りません。介護保険部会では、2040年を見据え、中長期的なサービス見込量や地域需要の変化を踏まえて提供体制を考える必要性が示されています。つまり、2027年改正は単なる次回改正ではなく、地域と法人の将来像を問い直す節目でもあります。

ここで、もう一つ押さえておきたい流れがあります。近年は、社会福祉法人における財務諸表等の公表の仕組みに加え、介護分野でも経営情報の見える化が進み、収益や費用の構造がこれまで以上に分析される時代に入っています。だからこそこれからは、「利益を出していること」自体を後ろめたく捉えるのではなく、どこで、なぜ、どう価値を生み、その収益を何に再投資しているのかを説明できる経営が求められます。保険内だけで利益を確保しにくい時代だからこそ、保険外サービスで堂々と価値を生み、その収益を職員の処遇改善や支援の質向上に還元するモデルが、むしろ健全な経営として問われていくのです。

だから私は、これからの介護・福祉経営に必要なのは、「公か私か」という二者択一ではなく、公私融合という発想だと考えています。
公は安心の土台です。制度に裏打ちされた生活保障であり、地域の暮らしを支える基盤です。
一方で私、すなわち保険外サービスは、単なる横道ではありません。利用者の希望、家族の困りごと、企業の介護離職対策など、保険の枠だけでは拾いきれないニーズに応えるための、もう一つの実践領域です。

保険外サービスは、金儲けのための付け足しではありません。
質の高いケアと職員の待遇改善を両立するための、経営上の聖域として位置づけ直す必要があります。


第1章|「生産性向上」の先にある、本当の目的

この数年、介護業界では「生産性向上」という言葉が繰り返されてきました。ICT、見守り機器、記録ソフト、インカム、ロボット活用、業務改善。こうした方向性そのものは重要です。しかし本当に問うべきなのは、生産性向上は何のために行うのかという点です。

政府は、介護DXや介護テクノロジー、データ活用などを通じて、生産性向上と省力化を進め、職員の負担軽減やサービスの質向上につなげる方向を示しています。ですが、その先にある経営判断まで見据えなければ、せっかく生み出された時間は、ただ目の前の不足を埋めるだけで終わってしまいます。

私はここに、次の経営の分岐点があると見ています。
現場で創出された時間を、単に「回らなかった業務の穴埋め」に全部使ってしまえば、現場は少し楽になるかもしれません。しかし経営構造は変わりません。けれども、その一部を保険外サービスの設計、提供、説明、営業、振り返りに振り向けることができれば、法人の収益構造は少しずつ変わります。

たとえば、見守り機器や記録の効率化で生まれた時間を、次のような領域に投下する発想です。

家族支援の高度化

家族への説明、介護の見通し、在宅継続の相談、離れて暮らす家族との情報共有。保険内でも一定は行いますが、より手厚い継続支援や個別性の高い伴走支援は、保険外で設計できる余地があります。

生活機能と社会参加の拡張

制度上必要な支援だけでなく、本人の「やりたい」「続けたい」に寄り添う外出同行、趣味支援、役割づくり、地域参加支援。ここには、QOL向上そのものの価値があります。

法人向けサービスの展開

企業の人事部門や総務部門に対して、仕事と介護の両立支援、従業員向け相談、情報提供、個別相談窓口などを提供するBtoB型サービスです。これは、介護事業所が持つ専門性を地域企業に届ける発想です。

つまり、生産性向上の先にある本当の問いは、
「空いた時間で何をするか」ではなく、「その時間をどの事業ポートフォリオに配分するか」なのです。

※事業ポートフォリオ=法人や事業所が行っている複数の事業やサービスを整理し、それぞれの強み、収益性、将来性を見ながら、限られた人材・時間・資金をどこに重点配分するかを考える経営の視点です。


第2章|民間企業が熱視線を送る「保険外」の新市場

保険外サービスの可能性を考えるとき、まず注目すべきなのがビジネスケアラー支援です。経済産業省は、仕事をしながら家族介護を行う人、いわゆるビジネスケアラーが2030年時点で約318万人に達し、経済損失額は約9兆円に上ると試算()しています。企業にとって介護は、従業員個人の家庭事情ではなく、すでに経営課題です。

同ガイドラインでは、企業が仕事と介護を両立できる環境を整えることは、従業員のキャリア継続だけでなく、人的資本経営や人材不足に対するリスクマネジメントとして有効だと整理されています。つまり企業側には、単なる制度説明ではなく、実に相談できる専門家への需要があります。

ここに、介護・福祉事業者の大きな役割があります。
ケアマネジャー、社会福祉士、介護職、相談員が持つ知見は、本来、家族介護の不安や混乱を整える力を持っています。ところが従来は、その力の多くが保険給付の枠内に閉じ込められてきました。これからは、その専門性を地域企業向けの福利厚生支援や相談支援として外へ開いていく発想が必要です。

また、生活援助の考え方も変わっていきます。
掃除、洗濯、買い物代行といった作業だけを保険外サービスと見ていると、価格競争に巻き込まれやすくなります。そうではなく、介護・福祉の専門職が提供する保険外サービスは、生活の再設計やQOL向上を支えるコンサルティング型の支援へと進化させるべきです。たとえば、通院と買い物を組み合わせた外出支援、退院後の生活再建支援、離れて暮らす家族への定期レポート、認知症初期の家族向け生活調整相談などです。

ここで確認しておきたいのは、いわゆる「混合介護」は、何でも自由になったわけではないという点です。厚生労働省の通知では、介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせる場合、保険給付部分と保険外部分を明確に区分し、運営規程、説明、同意、料金設定を整えることが求められています。また、同時一体的な提供や、指名料・時間指定料のような上乗せ徴収は認められていない整理も示されています。

つまり、羅針盤として正確に言うなら、
「2027年に混合介護が突然全面解禁される」というより、すでに一定の組合せは可能であり、今後はそれをどう戦略的かつ倫理的に活用するかが問われる、という理解のほうが実務的です。


第3章|現場の「心のブレーキ」をどう外すか

保険外サービスの話をすると、現場からよく聞こえてくる声があります。
「自費をいただくのは申し訳ない」
「福祉が営利に寄るようで抵抗がある」
「困っている人からお金を取るみたいで苦しい」

この感覚は、軽く扱うべきではありません。そこには、援助職としての倫理観があります。
ただし、その倫理観が結果として利用者の希望を狭め、職員の疲弊を深め、法人の持続可能性を損なってしまうなら、そこは立ち止まって考え直す必要があります。

保険制度は大切です。しかし制度は万能ではありません。
保険内サービスが拾えるのは、制度上定められた範囲です。利用者には、その枠を少しはみ出したところに、本当に大切な願いがあることが少なくありません。たとえば、「孫の結婚式に行きたい」「昔通っていた店にもう一度行きたい」「ひとり暮らしを続けるために家族との連絡調整をもっと手厚くしてほしい」といった願いです。こうした希望は、単なるぜいたくではありません。その人らしく生きることに直結する願いです。

社会福祉士の倫理やソーシャルワークの視点から見ても、制度の隙間を埋め、生活全体を支えることは、本来の援助実践の一部です。
私は、自費サービスを「制度外だから周辺的」と考えるのではなく、制度だけでは届かない自己実現や家族支援を支える実践領域として位置づけ直すべきだと考えます。

ここで大切なのは、保険外サービスを売ることではありません。
価値を説明できることです。

  • これは制度の不足を補うための支援なのか
  • これは本人の希望を叶えるための選択肢なのか
  • これは家族の負担軽減や仕事との両立を支える支援なのか
  • その料金には、どの専門性と時間と責任が含まれているのか

これを丁寧に説明できる組織は、職員のメンタルブロックも外れやすくなります。逆に、「とにかく自費を増やそう」という話し方をすると、現場は必ず離れます。

そして経営者は、もう一つ率直に伝えてよいことがあります。
それは、適正な収益がなければ、職員の処遇改善も教育投資も続かないという現実です。政府自身が、公定価格分野における賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保の必要性を示している以上、法人が追加的な原資をどう確保するかは、極めてまじめな経営課題です。保険外サービスの収益が、結果として職員の賃上げや配置の厚み、研修、相談体制の充実につながるなら、それは単なる利益ではなく、ケアの質を守るための経営基盤です。


第4章|法人が明日から着手すべき「3つのステップ」

ここからは、羅針盤として「だから何をするのか」を実務に落としていきます。

ステップ1|自社の強みを棚卸しする

最初にやるべきことは、保険外サービスのメニュー表づくりではありません。
自社・自法人がどの専門性で選ばれているのかを棚卸しすることです。

たとえば、次のような問いを立ててください。

  • 家族から「ここに相談してよかった」と言われるのはどの場面か
  • 職員が自然にできていて、他法人が真似しにくい支援は何か
  • ケアマネジャー、相談員、介護職、看護職、リハ職の連携で強みが出るのはどこか
  • 地域の企業や住民が、料金を払ってでも頼みたいと思う支援は何か

保険外サービスは、弱みを埋めるために始めると失敗しやすいのです。
強みを価値として言語化できたところから始めるほうがうまくいきます。

認知症ケアに強い法人なら「初期相談・家族伴走支援」、在宅支援に強い法人なら「退院後生活再建パッケージ」、多職種連携に強い法人なら「仕事と介護の両立支援相談」、地域活動に強い法人なら「社会参加・外出同行支援」といった切り口が考えられます。

ステップ2|地域企業との連携を探る

次に重要なのが、BtoCだけでなくBtoBを視野に入れることです。

経済産業省が示すように、ビジネスケアラー支援はすでに企業経営上の課題です。つまり介護事業所は、利用者個人だけでなく、企業に対しても価値提供できる立場にあります。

たとえば、地域企業向けに次のような入口を設けることができます。

  • 従業員向けの介護相談窓口
  • 介護離職予防セミナー
  • 仕事と介護の両立に関する個別相談
  • 親の介護が始まった社員向けの情報整理支援
  • 管理職向けのビジネスケアラー理解研修

ここで大事なのは、最初から「営業」を前面に出しすぎないことです。介護事業所にとって企業向け提案は未知の領域に見えますが、入口はもっと自然で構いません。たとえば、地元の商工会議所、法人会、金融機関、社労士会、地域包括支援センターなどが開く勉強会やセミナーで、まずは「仕事と介護の両立支援」や「家族介護の基本知識」を伝える講師役を担うことです。そこで地域企業との接点を持ち、「困ったときに相談できる介護・福祉の専門家」として認知されれば、個別相談や法人契約につながる可能性が出てきます。つまりBtoBは、売り込みから始めるのではなく、教育と信頼づくりから始めるほうが、介護・福祉事業者にはなじみやすいのです。これは経産省のガイドライン()が示す企業側ニーズとも整合的です。

最初から大きく始める必要はありません。
地域の中小企業1社、商工会、金融機関、社労士、地域包括支援センターとの連携など、小さな接点から始めれば十分です。保険外サービスは、派手な新規事業というより、地域の困りごとに専門性で応える積み重ねの中から育っていきます。

ステップ3|情報開示と説明責任を整える

最後に欠かせないのが、透明性です。
厚生労働省の通知でも、保険外サービスを組み合わせて提供する場合は、事業目的、運営方針、利用料などを別に定め、文書で丁寧に説明し、同意を得ることが求められています。これは単なる手続きではありません。信頼の土台です。

利用者や家族にとって、自費サービスは「よく分からないもの」であるほど不安になります。
だからこそ、次の3点をはっきり示す必要があります。

何が保険内で、何が保険外か

境界が曖昧だと不信感を生みます。区分を明確にし、説明資料も分けることが必要です。

なぜその料金なのか

時間、専門性、移動、連携、記録、責任範囲など、料金の根拠を言語化します。

どんな価値があるのか

単なる作業ではなく、本人の生活や家族の安心、仕事との両立、地域での継続生活にどうつながるのかを伝えます。

ここを整えないまま走り出すと、現場も家族も疲れます。
逆に、透明性をきちんと確保できる法人は、保険外サービスを「怪しいもの」ではなく「納得して選べる支援」として育てていけます。


第5章|2027年改正を前に、経営者が持つべき視点

2027年改正の中身は今後さらに具体化していきますが、すでに見えている方向はあります。
それは、地域差の拡大、人口減少への対応、介護人材不足への対策、生産性向上、経営改善支援、そして多様なニーズへの対応です。介護保険部会の議論でも、地域の類型に応じたサービス提供体制や、職場環境改善、生産性向上、経営改善支援の必要性が前面に出ています。

この流れの中で、経営者が持つべき視点は明確です。

第一に、制度に依存しすぎないことです。
制度は重要ですが、制度改定のたびに受け身で揺さぶられる経営では、職員も地域も守れません。

第二に、専門性を再定義することです。
介護職、相談職、ケアマネジャー、社会福祉士が持つ力を、保険点数に換算できる業務だけで測らないことです。

第三に、収益と倫理を対立させないことです。
利用者の生活の質を高め、家族の負担を軽減し、職員の処遇を守るために必要な収益であれば、それは福祉の敵ではありません。むしろ、支援を持続可能にする条件です。


結び|羅針盤が指す未来

これからの介護・福祉経営は、
「制度に従う側」から「制度を使いこなす側」へ進まなければなりません

もちろん、公を軽く見るべきではありません。
介護保険制度は、暮らしを守る大切な基盤です。
けれども、その土台の上に、本人の願い、家族の暮らし、地域企業の課題、職員の働きがいまで支える屋根をかけるには、保険内だけでは足りません。

だから私は、次の時代のキーワードは公私融合だと思っています。

公は安心の土台。
私は希望の屋根。

その両方を持ってはじめて、介護・福祉は、守りの産業から、地域の未来をつくる産業へ進んでいけます。

最後にひとつだけ強くお伝えしたいことがあります。
保険外サービスを考えることは、福祉を市場化することではありません。
それは、利用者の人生を、制度の枠の中だけで終わらせないために、支援の選択肢を増やすことではないでしょうか。私はそう考えています。
そして、その選択肢を支えられる経営をつくることが、次代を担うリーダーの役割です。

2027年改正を、ただ待つのではなく、
その前に、自分たちの法人が持つ専門性と地域価値をもう一度見つめ直す。
そこから、公私融合の第一歩は始まるのではないでしょうか。

参考資料・出典

【筆者】

梅沢佳裕
― ベラガイア17人材開発総合研究所 代表/最新福祉情報サイト【介護キャンパス】主宰

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