介護職員等処遇改善加算の対象拡大で何が変わる?|いま見直すべき配分・賃金・説明の基本

介護報酬改定と算定の解説

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介護報酬改定の中でも、現場と経営の両方に大きな影響を与えるのが 介護職員等処遇改善加算 です。
令和8年度介護報酬改定では、介護職員等処遇改善加算の対象を介護職員のみから介護従事者に拡大すること生産性向上や協働化に取り組む事業者に対する上乗せ区分を設けること、さらにこれまで対象外だった訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援等に新たに処遇改善加算を設けることが示されています。(※)参考:令和8年度介護報酬改定について

ここで重要なのは、対象拡大が行われても、制度の中心にあるのは引き続き 介護職員の処遇改善 だという点です。厚生労働省資料でも、介護従事者全体への賃上げ措置に加え、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員には、さらに上乗せ措置を講じる考え方が明示されています。したがって、経営層に求められるのは、単に支給対象を広げることではなく、介護職員を中心に据えたまま、介護従事者全体を視野に入れて配分ルールを再設計することです。


介護職員等処遇改善加算の対象拡大で何が変わるのか

介護職員を中心に据えたまま、介護従事者全体を視野に入れる運用へ

今回の改定で最も大きいのは、対象範囲の見直しが制度上明確に打ち出されたことです。
これまで処遇改善加算は、主として介護職員を中心に整理されてきましたが、令和8年度改定では、介護従事者を対象とする賃上げ措置が実施されるとともに、介護職員については最大月1.9万円(定期昇給0.2万円込み)の賃上げが実現する措置が示されています。

ただし、ここで「すべての職種に同じ考え方で配ればよい」と理解してしまうのは正確ではありません。厚生労働省資料の構造は、

  • 介護従事者に対して幅広く賃上げを行う
  • そのうえで、介護職員には追加の上乗せ措置を行う
    という二層構造になっています。
    つまり、制度全体としては対象が広がっていても、介護職員の処遇改善をより強く意識した設計は維持されています。

経営の視点で見ると、これは単なる「対象職種の拡大」ではありません。
看護職員、機能訓練指導員、生活相談員、事務職員など、現場を支える職種も含めて、自施設ではどのような役割分担のもとで処遇改善を行うのかを整理し直す必要があります。その際に大切なのは、配分対象を増やすこと自体ではなく、なぜその職種に、どの程度、どのような理由で配分するのかを説明できる状態にしておくことです。


いま見直すべき配分・賃金・説明の基本

経営層が押さえるべき三つの実務

まず見直したいのは 配分ルール です。
対象拡大が行われたからといって、配分ルールまで自動的に整うわけではありません。むしろ、対象が広がるほど、内部での説明責任は重くなります
たとえば次のような視点で整理しておく必要があります。

ここでは、職種名だけで一律に決めるのではなく、夜勤の有無、身体的・精神的負担、利用者支援への直接関与、採用難易度、離職リスクなど、実際の勤務実態に即した整理が必要になります。そうでなければ、制度上は問題がなくても、現場では「なぜこの職種は対象で、自分は違うのか」という不信感が生まれやすくなります。

次に見直したいのは 賃金改善の形 です。
厚生労働省は、処遇改善を一時金だけで終わらせず、持続的な賃上げにつなげる必要性を繰り返し示しています。実際の運用では、基本給への反映、手当の設定、一時金との組み合わせなど、事業所ごとに設計が分かれますが、経営層としては「支給した」だけでなく、職員が毎月の賃金の中で改善を実感できるかという視点が重要です。

さらに重要なのが 職員説明 です。
制度が複雑になるほど、現場には「よく分からない加算」「誰かが決めた配分」という印象が残りやすくなります。したがって、管理者やリーダーは、制度の全文を説明する必要はありませんが、少なくとも次の三点は職員に伝えられるようにしておく必要があります。

ここが整理されていれば、処遇改善加算は「制度対応」ではなく、人材確保・定着のための経営施策として機能しやすくなります。逆に、説明が曖昧なままだと、制度が拡充しても現場の納得感には結びつきません。


小まとめ

介護職員等処遇改善加算 の対象拡大は、事業所の人材戦略を見直す重要な契機です。
令和8年度改定では、介護従事者への対象拡大上乗せ区分の創設対象外サービスへの新設といった具体的措置が示されています。一方で、制度の中心には引き続き 介護職員の処遇改善 が置かれています。

したがって、経営層に求められるのは、
介護職員を中心に据えたまま、介護従事者全体を視野に入れた配分設計 を行い、
賃金改善の形を見える化し、職員説明を丁寧に行うことです。

今年度は、次期介護報酬改定前の重要な整理期間でもあります。
いまのうちに配分・賃金・説明の基本を整えておくことが、来年度以降の安定した事業運営につながります。

【筆者】

梅沢佳裕
― ベラガイア17人材開発総合研究所 代表/最新福祉情報サイト【介護キャンパス】主宰

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厚生労働省 参考・引用文献

  1. 厚労省老健局「令和8年度介護報酬改定について」(令和8年3月13日老発0313第6号)

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