利用者の家族から、同じ質問を何度も受ける。強い口調で「どうなっているんですか」と聞かれる。こちらはきちんと支援しているつもりなのに、責められているように感じる――。家族対応が続くと、介護・福祉職にも疲れがたまり、感情の揺らぎが大きくなることがあります。
【この記事を読むと】
・家族の言葉を受けた時に、感情の揺らぎが大きくなる背景が分かります
・家族の不安を受け止める説明の順番が分かります
・家族への返答で意識したい言葉の選び方が分かります
・強い言い方や乱暴な言い方を防ぐアンガーマネジメントが分かります
家族から強い言葉を受けた時ほど、すぐに答えようとすると、普段より強い言い方になりやすくなります。家族が何を心配しているのかを確かめながら話すことで、その後のやり取りも変わってきます。
家族対応で感情の揺らぎが大きくなりやすい場面
家族は、利用者が施設や事業所でどのように過ごしているのかを常に見ているわけではありません。
高齢者介護では、食事量、転倒、体調変化、入浴、衣類や持ち物などについて問い合わせを受けることがあります。
障害福祉では、日中活動の様子、本人の表情や言動、他の利用者との関係、通所を嫌がる様子、支援方法などについて家族から確認されることがあります。
「なぜ連絡がなかったのですか」
「家ではそんな様子はありません」
「前にもお願いしましたよね」
こうした言葉を受ければ、支援する側にも感情の動きが生まれます。
「こちらもきちんと対応している」
「今は他の利用者への対応もある」
「何度説明すれば分かってもらえるのだろう」
そう感じること自体は不自然ではありません。
ただ、そのまま返答すると、「記録には残っています」「すでに対応しています」といった強い言い方や乱暴な言い方につながることがあります。内容が正しくても、家族には「話を聞いてもらえなかった」と受け取られることがあります。
家族対応では、家族が何を知りたいのか、何を心配しているのかを先に確かめることが、その後の説明につながります。
家族の不安を受け止める説明の順番
1.最初の一言で心配を受け止める
家族から強い言葉が出た時に、すぐ理由を説明すると、弁解のように聞こえることがあります。
まずは、
「ご心配をおかけしています」
「その点が気になっているのですね」
「状況を確認させてください」
と返します。
この段階では、まだ分からないことまで認める必要はありません。家族がどこに不安を感じているのかを聞き取ります。
2.何があったのかを具体的に確認する
次に、家族が話している場面を確認します。
「いつ頃のことでしょうか」
「どのような様子だったと聞かれましたか」
「一番ご心配なのは、どの点でしょうか」
たとえば、高齢者介護で「食事をほとんど食べていないのでは」と言われた場合は、食事記録、摂取量、体調、その時の様子を確認します。
障害福祉で「最近、通所を嫌がっている」と言われた場合は、日中活動、本人の発言や表情、送迎時の様子、支援中に変化がなかったかを確認します。
確認できた事実をもとに話すことで、職員によって説明が変わることも防ぎやすくなります。
3.分かっていることから伝える

家族が不安を感じている時に、経緯を最初から長く話すと、要点が伝わりにくくなることがあります。
「今日は昼食を7割ほど召し上がっています」
「日中活動では、いつもと大きく違う様子は確認されていません」
「その件については担当職員への確認が必要です」
まず、現時点で分かっていることを伝えます。
その後に、どのような経過だったのか、これから何を確認するのかを続けると、家族も話を追いやすくなります。
4.自分だけで答えられないことは持ち帰る
家族から聞かれたことに、その場ですべて答える必要はありません。
医療的な内容であれば看護職、個別支援計画に関わる内容であればサービス管理責任者、ケアプランに関わる内容であれば介護支援専門員など、内容によって確認先が変わります。
「担当者にも確認してからお伝えします」
「管理者と確認して、改めてご連絡します」
分からないことを曖昧に答えるより、確認先と今後の対応を伝えた方が、家族にも分かりやすくなります。
5.感情の揺らぎが大きくなった時は、その場で返答を決めない
家族から強い口調で言われれば、「そこまで言われることだろうか」と感じることもあります。
そうした時は、自分の感情の揺らぎが大きくなっていることに気づき、一度息を吐いてから返します。
「ご心配の点をもう少し確認させてください」
「連絡のタイミングが気になっているということでよろしいでしょうか」
こうした確認の言葉を一つ入れると、強い言い方や乱暴な言い方を防ぎやすくなります。
アンガーマネジメントで意識したいのは、怒りそのものを消すことではありません。感情の揺らぎが大きい時に、その勢いで言葉を決めないことです。
家族とのやり取りは次の職員につなげる
家族から気になる相談や要望があった時は、記録や申し送りに残します。
・誰から、いつ連絡があったか
・家族が何を心配していたか
・どのような説明をしたか
・まだ確認できていないことは何か
・次に誰が対応するか
「家族が怒っていた」という記録だけでは、次の担当者は対応に迷います。
「日中活動中の本人の様子について家族から確認あり。担当職員に状況を確認し、サービス管理責任者から連絡予定」と書けば、その後の対応が分かります。
家族対応は、一人の職員の話し方だけで決まるものではありません。記録、申し送り、関係職種への確認がつながっていることも、家族の安心につながります。
まとめ
家族対応では、家族の不安や心配が強いほど、言葉も強くなることがあります。介護・福祉職も、忙しさや疲れが重なると感情の揺らぎが大きくなります。
そんな時は、家族の心配を受け止める→事実を確認する→分かっていることを伝える→必要な担当者につなぐという順番を思い出してみてください。
自分の感情の揺らぎが大きくなった時は、一呼吸置いてから返答します。強い言い方や乱暴な言い方を避け、確認した事実をもとに伝えることが、家族との行き違いを減らすことにつながります。
家族の不安を受け止めながら、介護・福祉職自身の感情にも気づく。この積み重ねが、苦情につながる前の家族対応を支えてくれます。
【次回の内容】
次回は、介護現場の苦情対応の初動とは|感情に引っ張られない対処法を取り上げます。
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