介護・福祉現場のカスハラ対応|利用者・家族の暴言・不当要求への初期対応フレーズ集

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介護・福祉現場では、利用者や家族から怒りを向けられる場面があります。強い口調で責められたり、納得できない要求を受けたりすると、職員も動揺します。言い返したくなることもあれば、何も言えなくなってしまうこともあります。

そのような場面で大切なのは、相手を言い負かすことではありません。相手を刺激しすぎず、職員が一方的に受け続けない言葉を選ぶことです。

なお、苦情や強い訴えのすべてがカスタマーハラスメントに当たるわけではありません。相手が何を求めているのかを確認しながら、必要な説明や配慮を行い、それでも暴言や威圧、不当な要求が続く場合には、個人対応から組織対応へ切り替えていきます。

この記事で分かること

  • 怒っている相手への初期対応フレーズ
  • 高齢者介護で家族対応に使いやすい言葉がけ
  • 障害福祉で利用者本人に伝えるときの工夫
  • 避けたい言い方と、管理者につなぐ言葉

高齢者介護の家族対応で使いやすい落ち着いた言葉がけ

高齢者介護では、家族の強い言葉の背景に、利用者への心配や不安がある場合があります。転倒、体調変化、服薬、食事量、排泄、面会時の様子などについて、「説明が足りない」「きちんと見てもらえていない」と感じたことから、不満が強まる場合もあります。

最初から反論するよりも、まずは何を心配しているのかを確認する言葉を返す方が、その後の話を進めやすくなります

使いやすい言葉は、次のような表現です。

  • 「ご心配の点を確認します」
  • 「どの場面についてご不安に感じているか、確認させてください」
  • 「事実関係を確認したうえで、改めてご説明します」
  • 「今この場で分かることと、確認が必要なことを分けてお伝えします」

これらは、相手の主張をすべて認めるための言葉ではありません。家族の心配を受け止めながら、確認が必要なことをその場で断定しないための表現です。

一方、怒っている家族には、次のような言葉が反論として受け取られやすくなります。

  • 「そんなことはありません」
  • 「こちらはちゃんとやっています」
  • 「前にも説明しました」
  • 「それはご家族の誤解です」

事実として間違っていなくても、家族が不信感を抱いている場面では、「話を聞いてもらえなかった」という印象が残ることがあります。まず何が起きたのかを確認し、必要な説明へつなげます。

家族の不安を受け止める言葉

家族対応では、すぐに詳しい説明へ入るより、不安や心配を受け止める一言があると、その後の話を進めやすくなります。

  • 「ご心配をおかけしている点は、こちらでも確認します」
  • 「その点について不安に感じられたのですね」
  • 「ご家族として気になる点だと思います」
  • 「確認したうえで、分かる範囲をきちんとお伝えします」

事実関係がまだ確認できていない段階では、職員個人がその場で責任の所在まで判断する必要はありません。謝罪が必要な場面でも、何について謝罪するのかを確認しながら対応します。

無理な要求に線を引く言葉

家族からの訴えには、正当な確認や相談も含まれています。一方、契約やサービスの範囲を大きく超えた要求、職員への人格否定、過剰な謝罪要求、長時間の拘束などが続く場合は、対応の範囲を区切る必要があります。

  • 「ご要望として承ります。ただ、すぐにお約束できる内容ではありません」
  • 「職員個人では判断できないため、管理者を含めて確認します」
  • 「その内容は、事業所として確認してお返事します」
  • 「長時間になりますので、いったん内容を確認し、改めてご連絡します」

「できません」とだけ返すのではなく、誰が確認するのか、いつ返答するのかを伝えることで、相手を突き放さずに線を引くことができます。

管理者につなぐ言葉

暴言や威圧が続く場合は、現場職員だけで対応を続けないことも大切です。管理者への引き継ぎは、相手の訴えを軽く扱うためではなく、事業所として判断するための切り替えです。

  • 「この件は、私一人で判断せず、管理者と確認してお返事します」
  • 「このまま私だけで対応を続けず、管理者に代わります」
  • 「事業所として確認が必要な内容ですので、上司に共有します」
  • 「安全に対応するため、複数名でお話を伺います」

居宅サービスでは、家族とのトラブルがサービス提供の継続やケアプランに影響する場合もあります。そのようなときは、事業所内で共有したうえで、担当ケアマネジャーにも早めに状況を共有・相談します。

障害福祉で利用者本人に伝えるときの工夫

障害福祉サービスの現場では、利用者本人との関係が続く中で、要求の線引きが難しくなることがあります。怒りや不満の背景には、不安、見通しの持ちにくさ、これまでの経験、コミュニケーション上の特徴、環境の変化など、さまざまな要因が考えられます。

本人の言動だけを見て判断するのではなく、何に困っているのか、どのような伝え方なら理解しやすいのかを確認する視点が欠かせません

また、障害者差別解消法では、事業者にも合理的配慮の提供が求められています。ここで紹介するフレーズは、障害特性にかかわらず一律に使うものではありません。本人の理解の仕方やコミュニケーション方法に配慮したうえで、職員の安全も確保するための基本的な言葉として活用してください。

短く、具体的に伝える言葉

怒りや混乱が強いときは、長い説明や一度に多くの情報を伝えることで、かえって話が入りにくくなる場合があります。

  • 「今は少し距離を取って話します」
  • 「今は、この話を続けることが難しいです」
  • 「少し時間を置いてから、もう一度確認します」
  • 「今すぐ答えられないので、確認してからお伝えします」

本人を責めるのではなく、今できる対応を具体的に伝えます。

一方、次のような言い方は避けたいところです。

  • 「どうして分からないんですか」
  • 「約束したでしょう」
  • 「また同じことを言っていますよ」
  • 「そんな言い方をするなら知りません」
  • 「もう勝手にしてください」

職員が疲れているときほど、こうした言葉が出やすくなります。本人の理解力や障害特性を責めるような表現にならないよう注意が必要です。

対応できる範囲を具体的に伝える言葉

本人の希望や訴えを聞くことと、すべての要求に応じることは同じではありません。対応できることと難しいことを、本人に分かりやすい方法で伝えます。

  • 「相談はできます。担当者がいる時間にお話を伺います」
  • 「その内容は、担当者と確認してからお返事します」
  • 「個人の携帯電話ではなく、事業所の連絡先にお願いします」
  • 「今は対応できませんが、○時になったらもう一度お話しできます」

単に「だめです」と伝えるより、可能であれば代わりの方法や次に対応できる見通しを添えると、本人にも伝わりやすくなります

威圧的な言動が続くときの言葉

合理的配慮を行うことと、職員が暴言や威圧を受け続けることは別です。本人の事情に配慮しながらも、安全に支援を続けることが難しい状態では、管理者やサービス管理責任者を含めて対応を確認します。

  • 「大きな声が続くと、ここでは話を続けることが難しいです」
  • 「少し距離を取ってから、改めてお話しします」
  • 「この件は、管理者とサービス管理責任者にも確認します」
  • 「担当者だけでなく、チームで共有して対応します」

必要に応じて相談支援専門員などの関係職種とも情報を共有し、本人への支援方法や対応方針を確認します。

その場で使う言葉を職員任せにしない

高齢者介護でも障害福祉でも、怒っている相手への返し方が職員によって大きく違うと、利用者や家族の混乱や不信感につながることがあります。

事業所では、たとえば次のような場面で、誰に報告し、どのように対応するのかを職員間で確認しておくと安心です。

  • 暴言や威圧が続くとき
  • 長時間の電話や面談になったとき
  • 私的な連絡先を求められたとき
  • 勤務時間外の対応を求められたとき
  • 職員個人への謝罪や処分を求められたとき

初期対応のフレーズは、すべての場面に当てはまる「正解」ではありません。利用者や家族との関係、起きている状況、本人の理解の仕方などを踏まえながら、その場に合った言葉を選ぶことが大切です。

まとめ

怒っている相手への初期対応では、うまく言い返すことよりも、対応を崩さないことが大切です。

高齢者介護の家族対応では、不安や心配を受け止めながら事実を確認し、必要に応じて管理者やケアマネジャーとの連携につなげます。障害福祉では、本人の障害特性やコミュニケーション方法に配慮しながら、対応できる範囲を具体的に伝えます。

初期対応の言葉は、相手を黙らせるためではありません。利用者や家族との関係をできるだけ損なわず、職員も守りながら支援を続けるためのものです。

暴言や威圧、不当な要求が続く場合は、職員だけで抱え込まず、管理者へ報告し、必要な記録や関係職種との共有につなげます。

【次回の内容】
次回は、2026年10月1日からの事業主へのカスタマーハラスメント防止措置の義務化に向けて、介護・福祉事業所が確認しておきたい準備項目を取り上げます。

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【筆者】

梅沢佳裕
― ベラガイア17 人材開発総合研究所最新福祉情報サイト【介護キャンパス】主宰

【カテゴリトップ】福祉現場のハラスメント防止対策
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【介護キャンパスのホーム】
https://kaigocampus.com/

梅沢 佳裕

ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表
最新福祉情報サイト【介護キャンパス】主宰
梅沢 佳裕

社会福祉士・介護支援専門員・アンガーマネジメントファシリテーター他。
東京都を拠点に、介護・福祉事業所の人材育成、管理職研修、法定研修、制度改正対応、BCP、カスタマーハラスメント対策などをテーマに、研修講師・コンサルティング・執筆活動を行っています。

最新福祉情報サイト【介護キャンパス】では、介護保険制度、介護報酬改定、虐待防止、身体拘束廃止、介護記録、ケアマネジメント、人材育成など、介護・福祉現場に必要な情報を実務者目線で発信しています。
公的資料や最新通知を確認しながら、制度と現場実践をつなぐ分かりやすい解説を心がけています。

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