排泄介助の場面は、利用者様・本人様の体調変化や生活リズム、皮膚状態が表れやすく、介護・支援の質がそのまま記録に出やすい場面です。それにもかかわらず、現場では「排便あり」「失禁あり」と短く書いて終わってしまい、次の職員が状況を正確に把握できないことがあります。これでは、申し送りや多職種共有が十分に機能しません。
とくに新人職員は、便性状や尿量をどこまで書けばよいのか、失禁や拒否があったときに何を残せばよいのかで迷いやすいものです。管理者やリーダー層にとっても、記録の質がばらつくと、指導や運営指導対策に負担がかかります。この記事では、排泄介助の記録をテーマに、観察ポイント、場面別の文例、よくあるNG例と修正例を整理し、明日から現場でそのまま使える形でまとめます。
排泄介助の記録で押さえるべき観察ポイントとは
排泄介助の記録で大切なのは、単に「出た」「出なかった」を書くことではありません。誰に、どのような排泄があり、職員がどのように支援し、その結果どうだったかを残すことが基本です。排泄は、便秘、下痢、脱水、感染、皮膚トラブル、体調不良の兆候が表れやすい場面だからです。
押さえたい観察ポイントは、まず排泄の種類です。排尿か排便か、あるいは両方かを明確にします。次に、量・回数・性状を確認します。便であれば硬さ、色、量、におい、形状を、尿であれば量、色、混濁の有無などを見ます。さらに、支援内容も重要です。見守りだけでよかったのか、一部介助か、全介助か、誘導が必要だったのかを短く書きます。
ここでとくに重要なのは、主語を省かないことです。「10時 排尿あり」だけでは、誰に起きたことか分かりません。また、「少し多い」「様子変わりなし」といった抽象表現は、読み手によって解釈が分かれます。排泄介助の記録では、事実と判断を分けることを意識し、観察した内容を先に書くことが大切です。
加えて、排泄場面では皮膚状態にも目を向ける必要があります。失禁後の陰部や臀部に発赤がないか、清拭後に不快感の訴えがないか、オムツやパッドの当たりが強すぎないかといった点は、次のケアに直結します。排泄記録は、排泄そのものの記録にとどまらず、スキンケアや生活リズムの調整にもつながる情報です。
また、こうした正確な排泄介助の記録は、日々の申し送りや多職種共有だけでなく、‶LIFE(科学的介護情報システム)”を活用したケアの見直しの土台にもなります。厚生労働省は、LIFEを、事業所で記録された利用者の状態やケア内容などの情報をもとに、フィードバックを通じてケアの見直しを支援する仕組みとして位置づけています。記録の精度が高いほど、状態変化の把握と支援方法の振り返りがしやすくなります。

便性状・尿量・失禁対応の記録文例
排泄介助の記録は、長文である必要はありません。短くても、読み手が状況を再現できる形になっていることが大切です。
たとえば、便性状の記録なら、
利用者A様が10時20分に排便。中等量、黄褐色、やや軟便。職員Bがトイレ誘導し、一部介助。排便後、腹痛訴えなし。
このように書くと、量・性状・支援内容・結果が分かります。
尿量の記録なら、
利用者C様が14時05分に排尿。尿器使用で約200ミリリットル。淡黄色、混濁なし。職員Dが見守り。排尿後の不快訴えなし。
とすると、次の職員が状態を把握しやすくなります。
失禁対応では、
利用者E様が15時30分、下衣に尿失禁あり。職員Fが更衣介助と陰部清拭を実施。皮膚発赤なし。保護オイルを塗布し、オムツサイズも再確認。水分摂取状況とあわせて経過観察。
と書けば、対応だけでなく、スキンケアと再発予防の視点まで共有できます。
便秘傾向がある場合は、
利用者G様が本日排便なし。前回排便は2日前。腹部膨満感の訴えなし。職員Hが水分摂取を促し、看護職へ共有。
のように、回数だけでなく、前回排便や本人様の訴えも添えると分かりやすくなります。
下痢傾向がある場合は、
利用者I様が13時10分に排便。多量、水様便。腹痛訴えあり。職員Jがトイレ介助後に陰部清拭を実施し、看護職へ報告。
と書くと、体調変化への対応が伝わります。
このように、事実→支援→結果の順で書くと、短文でも伝わる記録になります。申し送りで口頭説明が必要な内容かどうかも判断しやすくなります。
【高齢者】【障害者】排泄支援記録の注意点
【高齢者】の排泄介助では、便秘・下痢・失禁・皮膚トラブルに注意が向きやすくなります。加齢に伴い、便秘傾向や排尿トラブルが起きやすく、排泄パターンの変化が体調悪化のサインになることがあります。そのため、普段との違いがあれば、短くても必ず残します。夜間頻尿や失禁の増加は、睡眠状態や転倒リスクにも関わるため、排泄記録単独で終わらせず、必要に応じて他の記録ともつなげて見ていくことが大切です。
【障害者】の支援記録では、排泄そのものだけでなく、排泄前後の行動や環境調整が重要になることがあります。トイレのタイミングが分かりにくい、感覚過敏で便座を嫌がる、見通しが立たないと不安が強まる、といったことがあるため、支援方法も含めて書くことが大切です。
たとえば、
利用者K様が排泄前に落ち着かない様子あり。職員Lがトイレを案内し、絵カードで流れを説明。排尿確認後、表情安定。
と書けば、次の支援に活かせます。
また、障害者支援では、排泄支援に対する拒否やこだわりがある場合もあります。
そのときは、「拒否あり」とだけ書くのでは足りません。
利用者M様がトイレ誘導時に「今は行かない」と発言。職員Nが5分後に再度声かけし、好きなタオルを持って移動を促したところ、トイレへ移動できた。
このように、どの支援が有効だったかまで書けると、支援の再現性が高まります。
高齢者介護でも障害者支援でも共通するのは、排泄介助の記録は単なる事務作業ではなく、支援をつなぐ情報であるという点です。何が起きたかだけでなく、どのような支援が有効だったかまで残せると、記録の質は大きく上がります。
まとめ
排泄介助の記録では、排泄の有無だけでなく、量・性状・支援内容・結果を短く正確に残すことが大切です。主語を省かず、事実と判断を分けることで、申し送りや多職種共有がしやすくなります。加えて、スキンケアやLIFEを活用したケアの見直しにつながる視点を持つことで、管理者層やリーダー層にとっても価値の高い記録になります。高齢者介護でも障害者支援でも、排泄記録は体調変化をつかみ、支援方法をつなぐための実務技術です。まずは、事実→支援→結果の順で書くことを意識してみてください。
【次回の内容】
次回は、【文例】入浴介助の記録の書き方|介護・支援記録の注意点を取り上げます。
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【筆者】
梅沢佳裕
― ベラガイア17 人材開発総合研究所/最新福祉情報サイト【介護キャンパス】主宰
【カテゴリトップ】福祉現場の記録の書き方と活かし方
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