(筆者:ベラガイア17人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕:社会福祉士・ケアマネジャー)
今回は、普段実施している研修内容の一部として、講義①「支援記録の役割」と、講義②「書き方の基本」の内容をご紹介します。
高齢者介護でも障害福祉でも、記録は毎日のように書いているはずです。ですが、ここで皆さんに改めて考えていただきたいのは、その記録が「次の支援につながる記録」になっているかという点です。
「とりあえず書いている」
「何となく埋めている」
「自分では分かるから大丈夫だと思っている」
もし少しでも心当たりがあるなら、今回の前編はきっと役に立ちます。
この前編では、まず支援記録の役割を確認し、そのうえで記録を書くときの基本を整理していきます。中編・後編で扱う不適切語・要注意語をきちんと理解するためにも、まずは土台を押さえることが大切です。
講義①:支援記録の役割
まず皆さんにお伝えしたいのは、記録は「ただのメモ」ではないということです
ここでまず、皆さんに問いかけてみたいと思います。
支援記録は、何のために書いているでしょうか。
「あとで見返すため」
「申し送りのため」
「書くことになっているから」
もちろん、それも一つの答えです。ですが、この講義でまず確認しているのは、支援記録は単なる業務メモではなく、支援そのものを支える土台だということです。
記録には、ご本人の生活の様子、気持ちの動き、支援の経過、職員の関わり方が残ります。つまり記録とは、その日、その場の支援を、後からでもたどれる形にするものです。だから、ただ「書いた」で終わるのではなく、誰かが読んで支援につなげられる記録でなければ意味がありません。
たとえば、食事量が減ってきた、表情がいつもより硬い、声かけへの反応が遅い、活動に入りにくそうだった。こうした変化は、その場にいた職員は感じ取れても、書き残されなければ次の支援者には伝わりません。だからこそ、記録はご本人の生活の流れを見える形にするものだと考える必要があります。
記録は、チームで支援するための共通言語です
介護や支援の現場では、一人の職員だけで支援が完結することはほとんどありません。日勤から遅番へ、平日から休日へ、担当者から他職種へと、支援はつながっていきます。ここで必要になるのが、誰が読んでも同じように理解できる記録です。
たとえば、「落ち着かない様子だった」と書かれていたら、どのような場面を思い浮かべるでしょうか。歩き回っていたのか、声が大きかったのか、視線が定まらなかったのか、それとも座っていてもそわそわしていたのか。読み手によって想像が分かれてしまいます。
ここでは、同じ内容でも具体的に書くとどう変わるかを意識してみてください。
【高齢】
食席に着いた後、5分間で3回立ち上がる様子が見られた。
【障害】
作業開始後、席を立って室内を2回往復する様子が見られた。
このように書けば、読み手は場面を具体的に思い浮かべることができます。
ここで皆さんに押さえていただきたいのは、記録は「書いた本人が分かる」で終わってはいけないということです。記録は、その場にいなかった人にも伝わることが大切です。だからこそ、支援記録はチームで支援するための共通言語なのです。
記録は、ご本人のためだけでなく、自分たちの支援を守るものでもあります
もう一つ大切な役割があります。それは、自分たちの専門性を証明することです。
どのような支援をしたのか。
なぜその対応を選んだのか。
そのとき、ご本人はどのような様子だったのか。
こうしたことが記録に残っていれば、あとから支援の経過を説明することができます。逆に記録がなければ、「やったつもり」「伝えたつもり」で終わってしまい、必要なときに振り返ることができません。
事故や苦情、家族からの問い合わせがあったときも、問われるのは「そのとき何を見て、どう判断し、どう支援したか」です。つまり記録は、ご本人の生活を支えるだけでなく、自分たちの支援を説明し、守るための根拠にもなります。
ここでのポイントを短くまとめると、支援記録には次のような役割があります。
- ご本人の生活の様子を見える化する
- チームで正確に情報共有する
- 支援の内容と専門性を証明する
この三つを意識するだけでも、記録への向き合い方はかなり変わります。
講義②:書き方の基本
良い記録は「うまい文章」ではなく、「伝わる文章」です
ここからは、実際にどう書くかという話に入ります。
記録を書くのが苦手だと感じている方の中には、「文章力がないから」と思っている方もいるかもしれません。ですが、ここでまずお伝えしたいのは、記録に必要なのは、きれいな文章よりも、伝わる文章だということです。
この講義では、記録の基本として、次の三つを確認しています。
- 事実を書く
- 簡潔に書く
- 客観的に書く
この三つです。
難しそうに見えますが、どれも日々の記録を少し意識するだけで変えられることです。
まず大切なのは、「事実を書く」ことです
記録でついやってしまいやすいのが、感想や個人的批評を書いてしまうことです。
たとえば、
「何となく落ち着かない様子だった」
「機嫌が悪そうだった」
「こだわりが強かった」
こうした書き方は、書いた本人には分かりやすくても、読み手によって受け取り方が変わってしまいます。
ここで皆さんに意識してほしいのは、見たこと、聞いたこと、行ったことをありのままに書くということです。
【高齢】
「食事を嫌がっていた」ではなく、
「昼食時、『いらない』と2回発言し、主菜には箸をつけなかった」
【障害】
「作業に集中できていなかった」ではなく、
「作業開始10分後、席を離れて窓際に移動し、職員の声かけ後に席へ戻られた」
このように、具体的な行動や言葉に置き換えると、記録はぐっと伝わりやすくなります。
つまり、「どう感じたか」ではなく、「何があったか」を書くことが基本です。
「簡潔に書く」とは、短く雑に書くことではありません
二つ目の原則は、簡潔に書くことです。
ここで気をつけたいのは、「簡潔」と「雑」は違うということです。
一文が長くなりすぎると、何が大事なのかが伝わりにくくなります。逆に、短すぎて情報が足りないと、読み手は場面を想像できません。大切なのは、必要な情報を、一文に一つずつ整理して書くことです。
たとえば、
「昼食後、居室で休まれた。15時頃に離床し、水分摂取あり」
このように分けて書けば、読みやすくなります。
記録は小説ではありません。流れるような文章を書く必要はなく、必要な情報が整理されていることが大切です。
「客観的に書く」とは、誰が読んでも同じ理解になることです
三つ目は、客観的に書くことです。
記録は、職員同士だけが読むとは限りません。会議で使われることもあれば、家族説明や第三者への説明に用いられることもあります。だからこそ、誰が読んでも同じように理解できる言葉で書く必要があります。
ここで避けたいのが、職員同士のおしゃべりのような表現や、職員の感情が強くにじむ表現です。普段の会話では通じても、記録として読むと曖昧だったり、きつく感じられたりすることがあります。
たとえば、
「また同じことを言っていた」
「こだわって大変だった」
「今日は落ち着いていて助かった」
このような書き方は、職員の受け止め方が前面に出てしまいます。記録では、職員の気持ちではなく、ご本人の様子が中心に見えることが大切です。
記録に迷ったら、「5W1H」で整理してみてください
「何を書けばよいか分からない」
そんなときに使いやすいのが、5W1Hの視点です。
※5W1Hとは、「いつ・誰が・どこで・何を・なぜ・どのように」という情報整理の基本枠組みです。
たとえば、
- いつ その場面があったのか
- どこで 起きたのか
- ご本人が何をしたのか
- 職員がどのように関わったのか
こうして整理していくと、何を書けばよいかが見えてきます。
ここで特に大切なのは、職員の行動だけで終わらせないことです。記録の中心は、あくまでもご本人の生活や反応です。職員が何をしたかだけでなく、そのときご本人がどうだったかをセットで書くことが、支援記録としてとても大切です。
前編で皆さんに持ち帰っていただきたいこと
ここまでの内容を通して、皆さんにまず持ち帰っていただきたいのは、記録は**“何となく書くもの”ではない**ということです。
支援記録は、
- ご本人の生活の様子を伝える
- チームで支援をつなぐ
- 専門職としての実践を残す
という大きな役割を持っています。
そして、その役割を果たすためには、事実・簡潔・客観という基本が欠かせません。前編は、この土台を確認する回です。この土台が入ることで、中編以降で扱う不適切語・要注意語も、「ただの言い換え」ではなく、支援の質を守るための問題として見えてきます。
研修企画担当の皆さまへ(講師依頼について)
支援記録の研修は、「記録は大切です」と伝えるだけでは、現場の変化につながりにくいことがあります。本研修では、前編でまず支援記録の役割と書き方の基本を丁寧に確認し、「なぜ書くのか」「どう書けば伝わるのか」を共有するところから始めます。高齢者介護・障害福祉の両分野に共通して使える内容として整理しながら、日々の記録や申し送りにすぐ生かせる形でお伝えしています。
普段実施している研修内容の一部をご紹介しましたが、中編・後編では、実際に現場で出やすい不適切語・要注意語、評価語や職員主体の表現を具体的に見直していきます。そのため前編は、新任職員にも中堅職員にも入りやすい土台づくりの回として活用しやすい内容です。
このような事業所様におすすめです
- 記録の書き方に職員ごとの差がある
- 「変わりなし」「様子見」が多く、具体性に欠ける
- 新任職員に記録の基本から伝えたい
- 高齢・障害の両分野に共通して使える研修を探している
研修のご相談・ご依頼について
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対象職種、サービス種別、時間数、ワークの深さなど、事業所の状況に合わせてご相談いただけます。
著者(講師)クレジット
ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表 梅沢 佳裕
社会福祉士・介護支援専門員・アンガーマネジメントファシリテーター
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