【介護保険最新情報Vol.1487】「認知症介護実践者等養成事業の円滑な運営について」の一部改正を解説

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令和8年3月31日付で、厚生労働省から介護保険最新情報Vol.1487が示されました。今回のテーマは、「認知症介護実践者等養成事業の円滑な運営について」の一部改正です。通知では、この改正を令和8年4月1日から適用するとしつつ、令和9年3月31日までの間は、研修内容について従前の規定によることも差し支えないとされています。まずは、この適用時期と経過的な取扱いを正確に押さえておくことが大切です。

今回の改正は、認知症介護に関する各種研修の目的や標準カリキュラムを見直し、現在の認知症施策や実践の方向性に沿った内容へ改めたものと読むことができます。とくに、従来よりも、本人・家族の尊厳希望をもって暮らすこと意思決定支援共生社会地域資源の活用といった視点が、よりはっきりと打ち出されています。

一部改正の基本ポイント

通知本文では、「認知症介護実践者等養成事業の円滑な運営について」の一部を別添の新旧対照表のとおり改正すると示されています。実務上は、単なる表現修正と受け止めるのではなく、研修のねらいそのものが少し整理し直されたと考えるほうが実態に合っています。

たとえば、認知症介護実践者研修では、従前の「本人主体の介護」「生活の質の向上」「BPSDの予防」といった整理から、改正後は、認知症の人についての正しい理解のもと、本人・家族が尊厳を保持し、希望をもって暮らすことができるようにすること、そして共生社会の実現に向けた認知症ケアの質向上がねらいとして示されています。認知症介護実践リーダー研修でも、同様に、本人・家族の尊厳や希望、地域の認知症ケアの質向上が前面に出されています。

また、認知症介護指導者養成研修についても、認知症の人と家族の尊厳や希望、共生社会の実現に向けた認知症施策の推進への関与といった視点が盛り込まれています。ここから分かるのは、今回の改正が、認知症ケアを事業所内の支援技術だけで閉じるのではなく、より広い社会的文脈の中で位置づけ直しているという点です。

認知症介護実践者研修の見直し内容

今回の改正で、とくに実務者が見ておきたいのが、認知症介護実践者研修の標準カリキュラです。改正後は、講義・演習が23時間(1,380分)、実習のうち課題設定が300分、職場実習4週間、実習のまとめが180分とされています。従前は講義・演習が24時間(1,440分)、課題設定が240分でしたので、時間配分にも見直しが入っています。

内容面では、従前のカリキュラムから組み替えが行われ、たとえば「認知症ケアの理念・倫理と意思決定支援」「QOLを高める活動と評価の観点」「家族介護者の理解と支援方法」「地域資源の理解とケアへの活用」といった項目が確認できます。さらに、学習成果の実践展開と共有の部分では、認知症の人本人の声を聴くこと事例収集中間課題の発表と共が盛り込まれています。

このため、今回の見直しは、従来の知識習得型の色合いに加えて、本人理解を深めながら、現場での実践と振り返りにつなげる構成へと重心が移っていると整理できます。特に「本人の声を聴く」という表現がカリキュラム上に明示された点は、実務者にとっても見逃せないところです。

家族支援と地域資源の視点がより明確に

今回の改正では、家族支援や地域とのつながりも、従前より明確に位置づけられています。認知症介護実践者研修の中には、家族介護者の理解と支援方法が置かれ、家族の置かれている状況や心理、介護負担の要因を理解し、必要な支援方法を展開できることが示されています。これは、認知症ケアを本人への直接支援だけで完結させない考え方を反映したものといえます。

さらに、地域資源の理解とケアへの活用では、関係職種や団体との連携による地域づくりやネットワークづくりを通じて、既存の地域資源の活用や、認知症の人が地域で自分らしく暮らし続けるための地域資源の開発の提案ができることが示されています。通知では、インフォーマルな地域資源、フォーマルな地域資源、そして介護保険施設・事業所を地域資源として捉える視点も盛り込まれています。

この点からも、今回の改正は、認知症ケアを「施設・事業所の中だけの支援技術」としてではなく、地域生活を支える視点を含めて学ぶ方向へ広げていると理解できます。もっとも、ここで注意したいのは、通知が直接、各事業所に新たな義務を課すとまで書いているわけではないことです。あくまで、研修事業の目的や内容の見直しとして読む必要があります。

オンライン研修の取扱い

オンライン実施についても、通知で確認しておきたい点があります。認知症介護基礎研修では、受講者の受講環境や負担、実施主体の準備等の観点から、実施が困難である間は、集合型の講義・演習または同時双方向の意思疎通等ができる方法によるオンライン講義・演習とすることができるとされています。

また、認知症介護指導者養成研修でも、オンラインで行う場合は、同時双方向の意思疎通等ができる方法により、集合研修と同程度の効果が期待できる科目・内容の範囲となるよう留意することが示されています。つまり、オンライン化そのものが否定されているわけではありませんが、単に一方向で動画を配信すればよい、という整理にはなっていません。通知上は、双方向性と教育効果が重視されています。

実務者が押さえたいこと

今回のVol.1487で実務者がまず押さえたいのは、令和8年4月1日適用であること、そして令和9年3月31日までは、研修内容について従前の規定によることも差し支えないという経過的な取扱いがあることです。急な完全切替として受け止めるのではなく、一定の移行期間を見込みながら対応を考えることが現実的です。

そのうえで、改正の方向性としては、認知症ケアの学びを、BPSD対応や生活場面での支援技術にとどめず、本人・家族の尊厳、意思決定支援、QOL、家族支援、地域資源、共生社会へと広げている点が重要です。実務の現場でも、認知症の人の生活全体を捉え、地域との接点まで意識した支援の考え方が、これまで以上に求められていくことがうかがえます。

まとめ

介護保険最新情報Vol.1487は、「認知症介護実践者等養成事業の円滑な運営について」の一部改正を示した通知であり、認知症介護に関する研修の目的と内容を、現行の認知症施策や実践の方向性に合わせて見直したものです。今回の改正では、本人・家族の尊厳、希望、意思決定支援、家族支援、地域資源、共生社会といった視点が、これまで以上に明確になっています。

制度解釈を広げすぎずに整理すると、今回の通知は、各事業所に新たな義務を直接追加したというよりも、認知症介護研修の中身を、より本人中心で、地域を含めた支援の発想へ見直したものと捉えるのが適切です。実務者としては、適用時期と経過措置を確認したうえで、今後の研修受講や人材育成の方向性を考える際の参考にしていくことが大切です。

※ご確認いただきたい点

本記事は、厚生労働省が公表した介護保険最新情報Vol.1487の原文に沿って、実務者向けに要点を整理したものです。
できる限り正確を期して記載していますが、実際の運用判断にあたっては、必ず厚生労働省の原通知・関係告示・最新の疑義解釈等の一次情報をご確認ください。

とくに、厚労省通知や医療関係の情報は、通知本文の文脈や関連する告示・算定ルールをあわせて確認することが重要です。
本記事は実務理解を助けるための参考情報であり、最終的な判断は必ず元情報に基づいて行っていただくことをおすすめします。

著者(講師)

ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表 梅沢 佳裕
 社会福祉士・介護支援専門員・アンガーマネジメントファシリテーター/介護キャンパス 主宰

関連リンク

介護保険最新情報vol.1487(「認知症介護実践者等養成事業の円滑な運営について」の一部改正について)(令和8年3月31日厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課長通知)

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