【介護・福祉職のアンガーマネジメント】第10回:怒りと“チームコミュニケーション”

2.アンガーマネジメント

監修・執筆:梅沢佳裕(社会福祉士・介護支援専門員・研修講師)

介護・福祉・医療の現場で生じる怒りやイライラは、
個人の性格や忍耐力だけの問題ではありません。
実際には、チーム内のコミュニケーションのズレや行き違いが、
怒りを増幅させているケースが多く見られます。

アンガーマネジメントというと、
「自分の感情を抑える方法」「怒らない技術」と捉えられがちですが、
現場で本当に重要なのは、チーム全体で感情をどう扱うかという視点です。

第10回では、
怒りとチームコミュニケーションの関係を整理し、
支援者が感情に振り回されず、チームとして機能するための実践的な考え方を解説します。


なぜチーム内で怒りが生まれやすいのか

介護・福祉の現場では、
多職種が連携しながら、時間的・精神的な余裕の少ない状況で業務を行っています。
そのため、怒りの原因は「誰か一人の問題」ではなく、
関係性や構造の問題として生じやすくなります。

たとえば、
「言わなくても分かっているはず」
「前も同じことを伝えた」
といった思い込みは、
相手への不満や苛立ちを生みやすい典型的な要因です。

また、報連相が不足したり、情報の背景が共有されていないと、
同じ出来事でも受け取り方に差が生まれます。
この認識のズレが積み重なることで、
怒りは個人の中だけでなく、チーム全体に広がっていきます。


アンガーマネジメントで変わるチームコミュニケーション

アンガーマネジメントをチームに取り入れる際に、
まず押さえておきたいのは、
感情を個人で抱え込まないという考え方です。

怒りは、わがままや未熟さの表れではありません。
多くの場合、
「困っている」「負担が大きい」「理解されていない」
といったサインとして現れます。

感情を出すこと自体を問題視するのではなく、
どう伝えるか、どう受け取るかをチームで共有することが重要です。

その際に役立つのが、
事実と感情を分けて伝える考え方です。

「〇〇されて腹が立った」という表現ではなく、
「〇〇という出来事があり、そのとき不安や苛立ちを感じた」
と整理することで、
相手は防衛的になりにくくなります。


現場で実践できるチーム向けアンガーマネジメント

チームでアンガーマネジメントを機能させるためには、
難しい理論よりも、
共通のルールや視点を持つことが効果的です。

たとえば、
・感情と事実を分けて話す
・相手の言い方だけで判断しない
・その場で評価や結論を出さない

こうしたシンプルなルールを共有するだけでも、
コミュニケーションの質は大きく変わります。

また、短時間でも構わないので、
日常的に振り返りの時間を持つことが大切です。
「今日、気になった場面はあったか」
「少し引っかかったやり取りはなかったか」
といった確認を行うことで、
怒りを溜め込まず、早い段階で整理することができます。


管理職・リーダーに求められる感情マネジメントの視点

チーム内の怒りや不満を、
単なる「問題行動」として扱ってしまうと、
職員は感情を表に出しづらくなります。

管理職やリーダーに求められるのは、
怒りを否定することではなく、
安心して言語化できる環境を整えることです。

感情が共有されやすい職場では、
誤解やすれ違いが早期に修正され、
結果として支援の質や職場定着率の向上にもつながります。

アンガーマネジメントは、
個人のセルフケアにとどまらず、
組織マネジメントの一部として位置づけることが重要です。


そのまま使えるチェックリスト【チーム感情マネジメント】

□ 怒りを感じたとき、事実と感情を分けて話せているか
→ 何が起きたのかと、どう感じたのかを整理して伝えられているか。

□ 「言い方」より「意図」を確認できているか
→ 強い表現だけに反応せず、相手が何を伝えたかったのかを考えられているか。


小まとめ:怒りを「チームの課題」として扱う

怒りは、個人の弱さではありません。
多くの場合、チームや関係性の中で生じるサインです。

アンガーマネジメントをチームで共有することで、
感情に振り回されにくい職場づくりが可能になります。
支援者一人ひとりが安心して働ける環境は、
最終的に利用者への支援の質を高めることにつながります。

(筆:ベラガイア17人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕

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