【アンガーマネジメント】第5回:怒りを未然に防ぐ“環境づくり”

2.アンガーマネジメント

介護の現場で生まれる怒りやイライラは、「性格」など個人的要因の問題だけではなく、環境や仕組みの未整備によって引き起こされることが少なくありません。
情報がきちんと伝わらない、時間に余裕がない、相談できる空気感がない——こうした職場環境は、誰にとってもイライラを増幅させる一因となる可能性があります。

今回は、入所系サービスである「特養ホーム」と居宅系サービスの「訪問介護」を取り上げ、怒りを未然に防ぐ環境づくりについて考えてみたいと思います。


1.怒りは「我慢」より「設計」で防ぐ

怒りを抑え込むテクニックも大切ですが、それ以前に怒りが生まれにくい職場環境を整えることも重要です。

  • 情報共有が徹底されている
  • 休憩時間が確保されている
  • 気持ちを共有できる仕組みがある

この三つが整えば、同じ出来事に出くわしてもイライラを回避できるかもしれません。逆にどれか一つでもこれらの要素が欠けていれば、些細なことが爆発の引き金になってしまいます。


2.情報共有の工夫:3分ミーティング+即時記録

特養ホームの場合

複数の利用者を24時間の交替勤務で介護する特養ホームでは、引き継ぎのズレがトラブルのもとになりやすいです。そこで引継ぎ時の情報共有をしっかり確実に行うことで、いらないトラブルを回避できます。

  • 交代前の3分ミーティング:出勤者と退勤者がその日の「大事な3点」を口頭で確認。
  • 即時記録:内容は電子記録や紙に残し、上段に「本日注意」マークをつけておく。

事例:入浴キャンセルの伝達が引継ぎ時に漏れてしまい、二重案内というミスを起こしていた特養で、このっ情報共有を徹底したところ、ヒヤリ・ミス等が激減し、スタッフの確実な伝達がイライラの軽減にもつながったという事例がありました。

■大事な3点とは・・・

  1. 利用者さんの体調や行動の変化

「Aさんは昼食後に強い倦怠感があり、午後の入浴はキャンセル」

「Bさんは今朝からせき込みが目立つので、食事時に注意」

  1. 支援内容の変更や注意点

「Cさんは転倒リスクが高まっているため、夕方の移動は付き添い必須」

「Dさんは服薬時間が変更になり、午後2時に確認が必要」

  1. 当日の特別な予定や行事

「今日はご家族が15時に面会予定、迎え入れ準備をお願いします」

「夜間は消防訓練があるため、居室誘導のサポートを忘れずに」

訪問介護の場合

訪問介護は直行直帰が多く、現場で顔を合わせないのが特徴です。

  • 短い電話やチャットで前後担当者が1〜2分の情報共有を行う。
  • 記録アプリや写真共有を使って「キャンセル・変更」をリアルタイムで伝える。

事例:服薬内容の変更が伝わっておらず誤薬が発生していた事業所で、電話+アプリを用いてリアルタイムでの情報共有を徹底した結果、誤薬を回避できたという事例がありました。


3.余白と休憩で心を守る

怒りは疲労時間の圧迫で増幅します。余裕を持たせることは感情コントロールの基本です。

特養ホームの午前の流れ例

時刻予定余白休憩
9:00申送り+5分
9:30口腔ケア・整容+5分9:45 ちょい休み1分
10:00入浴介助+5分
11:30水分配布・記録+5分10:45 休憩15分

ポイント:60分業務に10分余白を設け、午前中に1分休憩+15分休憩を必ず入れる。

訪問介護の午前の回り方例

時刻予定余白休憩
9:00利用者①・整容支援+5分
9:45移動+5分車内で1分呼吸
10:15利用者②・調理支援+5分
10:55移動・記録送信+5分11:10 休憩15分

ポイント:移動の合間に「1分呼吸」、午前中に必ず15分の休憩を確保する。


4.チームで怒りをためない仕組み

怒りを一人で抱えるとストレスが蓄積し、どんどん感情がエスカレートしやすくなります。感情を吐露し合えるコミュニケーションの場を取り入れることで、イライラの爆発を防げぐための一助になるはずです。

  • 週1回・10分の感情シェア:一人1分でいいので「大変だったこと」「困ったこと」などを共有。
  • ありがとうの言葉:お互いに「フォローされてうれしかったこと」「助かったこと」など目向きワードを積極的に相手に言語化し伝える、これがとても大事です!

5.まとめ:場を整えることが感情コントロールの第一歩

  • 情報共有:入所系は大事なことを厳選してしっかり伝える「3分ミーティング」、訪問は「電話+アプリの利用」
  • 時間と休憩:60分に1分・5分・10分・30分と段階的な一呼吸、午前・午後に休憩を必ず入れる
  • チームの風土づくり:感情シェアと「ありがとう」で怒りをためない

アンガーマネジメントは「怒ってからどうするか」だけでなく、怒りを生まない環境をあらかじめ整えることから始まっているのです。

次回は「怒りを長引かせない“切り替えの習慣”」を具体的にご紹介します。

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