【第2回】怒りを生みやすい“思考のクセ”とは?〜介護現場で感情を穏やかに保つために〜

2.アンガーマネジメント

介護・福祉の現場で働く皆さん、こんにちは。
前回は「怒りの正体」についてお伝えしました。
怒りの原因は“相手”や“出来事”ではなく、自分の中にある「〜べき」という価値観や欲求が裏切られたときに生まれる――そんなお話でしたね。

今回は、その「〜べき」や価値観が強く影響する、**“思考のクセ”**について深掘りします。
なぜ同じ出来事でも、人によって怒りの強さや頻度が違うのか?
そこには、日頃の考え方や受け取り方の習慣が関係しているのです。


1.なぜ“思考のクセ”が怒りを増幅させるのか?

私たちは出来事をそのまま受け取るのではなく、自分なりのフィルターを通して解釈しています。
このフィルターこそが“思考のクセ”です。

たとえば――

  • 「あの人はいつも私を軽く見ているに違いない」
  • 「利用者は感謝すべきだ」
  • 「こういう時は○○するのが当たり前だ」

こうした思考パターンは、無意識に怒りを増幅させやすくします。
なぜなら、現実がそのパターンに沿わないとき、「裏切られた」という感覚が生まれるからです。


2.介護・福祉職に多い5つの“怒りを生む思考パターン”

① 白黒思考(オール・オア・ナッシング)

物事を「正しいか/間違いか」「やるか/やらないか」で極端に考えてしまうクセ。
例:

  • 「説明を聞かない人は間違っている」
  • 「挨拶をしないのは失礼だ」
    → 少しのズレでも“完全な間違い”として捉えやすく、怒りにつながります。

② 過度な期待思考

「〜すべき」「〜してくれるはず」という期待が強いクセ。
例:

  • 「努力すれば必ず評価されるべき」
  • 「新人でも社会人なら常識は身についているはず」
    → 現実が期待通りでないと、強い不満や苛立ちに変わります。

③ 被害者意識型思考

出来事を「自分が損をしている」「被害を受けている」と感じやすいクセ。
例:

  • 「私ばかり大変な業務を押し付けられている」
  • 「あの人は私にだけきつく当たる」
    → 怒りが積み重なり、関係の悪化を招きます。

④ 過去の引きずり思考

過去の出来事や失敗を何度も思い返して怒りを再燃させるクセ。
例:

  • 「あの時の言い方は絶対に忘れない」
  • 「以前も同じミスをされた」
    → 古い怒りがリピート再生され、心を消耗させます。

⑤ 過剰な責任感思考

「自分がやらなければ」「責任を果たさなければ」という思いが強すぎるクセ。
例:

  • 「利用者の全ての要求に応えなければならない」
  • 「職場の雰囲気を守るのは自分の役目だ」
    → 無理を重ねて疲弊し、些細な出来事でも爆発しやすくなります。

3.自分の“思考のクセ”を見つける方法

怒りのコントロールは、自分の思考のクセを知ることから始まります。
おすすめの方法は「怒りの記録」をつけることです。

  1. いつ(時間・状況)
  2. どこで
  3. 誰に対して
  4. 何が起きたか
  5. その時の気持ち(第一次感情も)
  6. その裏にあった“〜べき”や考え方

こうして書き出すと、自分がどんなパターンに反応しやすいかが見えてきます。


4.思考のクセに気づいたらどうする?

気づいたら、すぐに変えなくても構いません。
大事なのは、「これは自分のフィルターかもしれない」と一歩引いて見られるようになることです。

例えば――

  • 白黒思考なら「中間のグレーゾーンもあるかもしれない」と考える
  • 過度な期待思考なら「理想はこう。でも現実は違うこともある」と受け止める
  • 被害者意識型なら「他の要因はないか?」と視野を広げる

この小さな意識の変化が、怒りの連鎖を断ち切ります。


5.介護現場で役立つ“思考クッション法”

介護・福祉の現場では、とっさの対応が求められます。
そんなときに役立つのが“思考クッション法”です。

やり方は簡単

  1. 「事実」と「解釈」を分ける
  2. 自分の考えに“別の見方”を1つ足す

例:

  • 事実:「利用者が約束の時間に来なかった」
  • 解釈①(怒りを生む):「約束を守らないのは失礼だ」
  • 解釈②(クッション):「もしかすると体調が悪かったのかもしれない」

こうすることで、怒りが一気に高まるのを防げます。


まとめ|思考のクセを知ることが怒り対策の第一歩

怒りは、出来事そのものではなく、自分の“解釈”や“価値観”によって生まれます。
自分の思考パターンに気づき、柔軟に見直すことで、感情の波は穏やかになります。

介護・福祉職にとって、感情の安定は利用者への支援の質にも直結します。
次回は、実際に現場でできる「怒りを落ち着かせるための体の使い方・呼吸法」について解説します。
お楽しみに!

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