【法定研修】ストレスケアとアンガーマネジメント(第2部)

16.介護の法定研修と現場スキル

― 業務でイライラしてしまった時に直ぐに実践できる感情コントロール法

はじめに:感情はコントロールできる“スキル”

介護や福祉の現場で働く私たちは、日々たくさんの感情に向き合っています。
利用者や家族、同僚との関わりのなかで、時には怒りや焦りを感じてしまうこともあります。
しかし、アンガーマネジメントは「怒らない方法」ではなく、怒りと上手につきあうための実践スキルです。

実はこのスキルにはいくつかの段階があり、それぞれを少しずつ身につけることで、
感情に飲み込まれず、冷静な判断を保つことができます。
今回はその中でも、最初のステップとなる“衝動を扱う方法”に少しだけ触れてみましょう。


1.怒りの“ピーク”をやり過ごすコツ

怒りの感情は、一瞬で高まり、そして数秒でピークを迎えます。
その短い間に、思わず強い口調で返してしまったり、表情を険しくしてしまったりします。
しかし、この数秒をやり過ごす技術を身につけることで、後悔の少ない対応が可能になります。

たとえば――

  • まずは呼吸を整える。鼻から4秒吸い、口から4秒吐く。
  • 「少し確認しますね」と一言残して間を取る
  • 手のひらを軽く握るなど、身体の固定動作を使って落ち着く。

こうした動作を意識するだけで、怒りの波をやり過ごすことができます。
これが“衝動のコントロール”の第一歩です。


2.心を落ち着かせる「コーピングマントラ」

感情が高ぶったとき、人の思考は狭くなりがちです。
そんなときに役立つのが、心の中で唱える「コーピングマントラ」です。
これは、自分の心を静めるための短い“おまじないの言葉”のようなものです。

たとえば――

  • 「大丈夫、落ち着いて」
  • 「今は判断しない」
  • 「相手も困っているだけかもしれない」

短く、肯定的な言葉を自分に投げかけることで、
感情の流れが少しずつ落ち着いていきます。
呼吸+マントラの組み合わせは、最も実践的で効果的な方法の一つです。


3.現場での実践イメージ

この方法は、どんな場面で活かせるでしょうか。
いくつかの介護業務の場面を想像してみましょう。

  • 食事介助の場面
     利用者がなかなか口を開けず、何度も促しても拒否される。
     → そんなときこそ「一度深呼吸」「少し待とう」と心の中で唱える。
     怒りが込み上げる前に、落ち着いて次の対応を考えられます。
  • 家族対応の場面
     面会に来た家族から、想定外のクレームや強い言葉を受けた。
     → すぐに反論せず、「いまは聴く時間」と自分に言い聞かせる。
     感情を抑え込むのではなく、時間を置くことで誤解を減らせます。
  • 同僚との連携場面
     忙しい時間帯に声をかけても反応がなく、イライラしてしまった。
     → 「相手も今、必死で動いている」と視点を変え、6秒だけ黙る。
     その間に、冷静さとチームワークを取り戻せます。

このように、“衝動のコントロール”は特別な場面だけでなく、
日常業務のなかで繰り返し活用できるスキルです。


4.感情を扱う力は、心の筋トレ

怒りをなくすことはできませんが、扱う力を鍛えることはできます。
それは筋トレと同じで、意識と反復が鍵です。
最初は難しく感じても、続けるうちに「一呼吸おく習慣」が自然と身につきます。

その結果、

  • 利用者との関係が穏やかになる
  • 職場の雰囲気が落ち着く
  • 自分自身の疲弊が減る

といった変化が少しずつ現れてきます。


小まとめ

怒りは、誰にでも起こる自然な感情です。
しかし、その扱い方を学ぶことで、支援の質も自分の心の安定も守れます。

本研修「ストレスケアとアンガーマネジメント」では、
今回ご紹介した“入り口”だけでなく、より深い感情マネジメントの手法を体験的に学ぶことができます。
現場で“イライラを行動に移さない力”を育てたい方は、ぜひ本編の研修で体感してください。


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第1部はこちら
【法定研修】ストレスケアとアンガーマネジメント(第1部)
― 感情労働の時代を生き抜く介護職の“こころの整え方”

(筆:ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕

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