福祉職・医療職の現場で、
「なぜ、あの一言でこんなに腹が立ったのだろう」
「後から考えると、そこまで怒る必要はなかったかもしれない」
と感じた経験はないでしょうか。
怒りは突然生まれるように見えますが、その背景には
感情そのものだけでなく、物事の受け止め方=思考のクセが深く関係しています。
今回は、怒りと「思考の柔軟性」の関係について、現場目線で整理していきます。
1.怒りが強くなるときに起きている「思考の硬さ」
怒りが生じる場面では、私たちの考え方は無意識のうちに
一方向に偏りやすくなります。
たとえば、
「こんな言い方をされるのはおかしい」
「こちらは専門職なのだから、理解してくれるはずだ」
といった思いが強くなると、他の可能性を考える余裕が失われます。
この状態では、
・相手の背景や事情を想像しにくくなる
・別の解釈を考える前に感情が反応する
・白か黒かで判断しやすくなる
といった傾向が現れます。
思考が硬くなるほど、怒りは増幅しやすくなります。
逆に言えば、「他の見方もあるかもしれない」と
一歩引いて考えられるだけで、感情は自然と落ち着いていくのです。
2.思考の柔軟性を取り戻すための視点の持ち方
思考の柔軟性とは、「前向きに考えること」ではありません。
出来事を無理に良い方向へ解釈する必要はなく、
複数の見方を許容する姿勢を持つことが大切です。
たとえば、きつい言葉を向けられたとき、
「自分が否定された」と即座に結論づけるのではなく、
「相手はいま、不安や焦りを抱えているのかもしれない」
「状況への不満が、言葉として出ているのかもしれない」
と考える余地を残します。
このような“余白”があるだけで、
怒りは一気に膨らみにくくなります。
完璧に受け止め直す必要はありません。
「別の可能性もある」と思えること自体が、
感情コントロールにつながります。
福祉職・医療職にとって、思考の柔軟性は
自分を守り、支援の質を保つための専門的スキルの一つです。
感情を抑え込むのではなく、
感情に振り回されにくい“考え方の幅”を持つことが重要です。
小まとめ:怒りを和らげる鍵は「考え方の幅」
・怒りが強いときほど、思考は一方向に偏りやすい
・決めつけや思い込みが、感情を増幅させる
・思考の柔軟性とは、別の見方を許容する姿勢
・「他の可能性もある」と考える余白が、怒りを和らげる
アンガーマネジメントは、感情を我慢することではありません。
考え方の幅を少し広げることで、怒りに飲み込まれず、
福祉職・医療職としての落ち着いた関わりを続けることができます。

