第3回:「そのプランに根拠はあるか?」と言われないケアプラン作成術

3.ケアマネジャーの役割と業務

~希望と現実を調整し、目標とサービスを一貫させる方法~


1. ケアプランの“根拠”とは何か?

実地指導やサービス担当者会議で必ず確認されるのが、

「このケアプランに根拠はあるのか?」

という点です。ここでいう根拠とは、単なる“経験則”や“なんとなく”ではなく、アセスメント結果に基づき、明確な課題→目標→サービス内容の流れがつながっていることを指します。

例えば、「デイサービス週2回利用」とだけ書かれていても、

  • 本人の希望(社会参加)
  • 課題(活動性低下・閉じこもり傾向)
  • 目標(外出機会を確保し、交流を維持)
    がつながっていなければ「根拠が弱い」と判断されてしまいます。

2. 利用者の“希望”と“現実”をどう調整するか

ケアマネ実務で最も難しいのは、利用者の希望と制度上の現実とのギャップ調整です。

例:独居80代女性のケース

  • 希望:「毎日デイサービスに行きたい」
  • 現実:介護給付限度額や事業所の空き状況で、週2回が限度

この場合、希望を完全に否定するのではなく、代替策を提案することが重要です。

  • デイサービスは週2回
  • 他の日は訪問ヘルパーの短時間利用
  • 自主的に近隣のサロンへ参加を促す

こうして「希望は尊重しつつ現実的に組み込む」姿勢が信頼につながります。


3. 長期目標・短期目標・サービス内容のつなぎ方

ケアプランの要は、目標設定の一貫性です。

悪い例

  • 課題:転倒の危険がある
  • 目標:安心して生活できるようにする
  • サービス:デイサービス週1回利用

→ 課題とサービスが直結せず、根拠が薄い。

良い例

  • 課題:歩行時にふらつきがあり転倒リスクが高い
  • 長期目標:自宅内を安全に移動できるようになる
  • 短期目標:3か月以内に杖歩行で転倒せずにトイレへ移動できる
  • サービス:訪問リハビリ週2回、福祉用具(手すり・杖)導入

→ 課題→目標→サービスが一本の線で結ばれ、根拠が明確


4. 主治医・サービス担当者とのすり合わせの勘所

ケアプランは一人で完結できません。主治医やサービス担当者との情報調整が不可欠です。

  • 主治医:医学的根拠を確認。服薬管理やリハビリの可否は必ず医師に確認する。
  • 訪問看護:症状観察や服薬支援の実態をフィードバック。
  • 訪問介護:ADL/IADLの実態を報告してもらう。
  • デイサービス:社会参加や交流の様子を伝えてもらう。

すり合わせのコツは、「意見が食い違う時こそ記録を基準に戻る」こと。
観察記録やバイタルデータといった事実ベースの情報があれば、調整がスムーズになります。


5. 実例:根拠あるプランが生活を変えた

ケース:心不全既往の男性(78歳)

  • 希望:「畑仕事を続けたい」
  • 課題:運動耐容能低下で息切れ頻発
  • 長期目標:好きな畑仕事を安全に継続
  • 短期目標:20分間の軽作業で息切れが悪化しない
  • サービス:心リハ後の訪問看護週2回+訪問リハ週1回

→ 医師の意見書とデータに基づき、畑作業をリハビリの一環と位置づけた。結果、本人の意欲が維持され、生活の質が向上。

※運動耐容能低下(うんどうたいようのうていか)
→ 運動や活動に対してどの程度耐えられるか(運動耐容能)が落ちている状態。心不全や呼吸器疾患、高齢による体力低下などでよく使われる表現です。


6. よくある失敗例と回避策

  • 失敗1:本人の希望をそのまま書き写すだけ
     → 「週3回デイサービス希望」とだけ記載 → 根拠不足
  • 失敗2:抽象的すぎる目標
     → 「安心して生活できる」 → 具体的な行動に落とし込む必要
  • 失敗3:医師の意見を確認せずリハビリ導入
     → 安全性に欠け、後に修正 → 初動で主治医確認必須

7. まとめ

「そのプランに根拠はあるか?」と問われたときに自信を持って答えるためには:

  1. 希望と現実を調整する力
  2. 課題→目標→サービスの一貫性
  3. 多職種連携による医学的・生活的根拠

この3つを意識することで、ケアプランは単なる書類から「利用者の生活を変えるツール」に進化します。

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