【第8回】利用者・家族対応の記録|クレーム・要望・相談内容の正しい残し方

12.介護記録の書き方と活かし方

家族や後見人とのやり取りは、信頼関係を支える大切な要素です。記録では「誰が」「どこで」「何を」「どう伝え、どう対応したか」を短く・正確に残します。推測や感情的な表現は避け、事実を中心に書くことがポイントです。介護記録は未来への道しるべ(介護の方向性を知るための指標のようなもの)です。


1.家族とのやり取り記録の基本と文例

●記録の目的

  • 情報をチームで共有する
  • 合意内容や対応履歴を明確に残す
  • トラブル(言った・言わない)を防ぐ

●書き方の基本

  1. 日時・場所・手段(電話・面談など)
  2. 相手の氏名と続柄
  3. 要点(要望・相談・苦情の内容)
  4. 職員の対応と説明内容
  5. 結果(合意・保留)
  6. 共有先・次回対応

●短文の文例

6/10 15:00 面談室。A様長女B様より「昼食後の様子を知りたい」と要望あり。週報と体調変化時のみ当日連絡で説明しご了承をいただいた。本件の看護師・栄養士に連絡。

6/14 11:30 電話。C様次男D様より「洗濯代の内訳を明記してほしい」と要望あり。翌月から内訳追加で対応する旨を伝え了承を得た。本件を事務へ連絡。

→ 長文にせず、主語(誰が)+要点+対応+結果の順に一行でまとめます。


2.感情的なやり取りの客観的な書き方

●基本ルール

  • 「怒っていた」「機嫌が悪い」ではなく、事実を描く(声の大きさ・話速・表情など)
  • 「原因」や「推測」は書かない
  • 発言は短く「」で引用する

●短文の文例

6/12 17:00 面談室。E様長男F様より「連絡が遅い」と大きめの声で要望あり。過去3日の記録を提示し、謝罪した。今後は17時までに連絡すると説明。了承あり。

6/18 9:10 電話。G様妻H様より「毎食後に電話を」と要望あり。体制上困難と説明し、週報のみの対応で提案。納得していただく。

→ 感情を「怒鳴る」「クレーム」ではなく、“声の大きさ”や“表現の実際”で残すのが正しい記録です。


3.障害者支援施設での保護者・後見人対応の記録ポイント

  • 本人の意思表示手段(カード・絵・端末)を活用し、選択内容を記録
  • 同意者(本人・保護者・後見人)の氏名と関係を明記
  • 合理的配慮(環境調整・手順変更)を具体的に書く
  • 情報共有範囲(学校・医療機関など)を限定して記載

●短文の文例

6/20 16:00 面談室。I様母J様より「タグの刺激が気になる」と相談あり。タグを内側に折り柔らかい布を当てる対応でご納得いただく。J様より口頭同意、署名済。生活支援員・学校人へ共有する。

6/25 10:30 電話。後見人K様へ皮膚科受診を説明。記録・写真をメールで送付し同意取得。7/3受診予定。看護・送迎担当へ共有する。

→ 重要なのは、誰が同意したか・どのように確認したかを短く明確に書くことです。


小まとめ

  • 主語(誰が)を省かず、事実を短文で記す
  • 要点→対応→結果→共有先の順に一行でまとめる
  • 感情表現ではなく、観察事実で書く
  • 障害者施設では、本人の意思・同意・配慮を明記

限られた時間でも、「正確な一行」は次の支援につながります。
記録は未来への道しるべです。

(筆:ベラガイア17人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕

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