はじめに
利用者の入退院は、在宅生活の継続にとって大きな節目になります。入院すれば、家族や本人は不安を抱え、退院後の生活再建には準備と調整が欠かせません。居宅ケアマネジャーがここで果たす役割は、速やかな連絡と正確な情報提供です。2024年度の介護報酬改定では、入院直後の連携が改めて評価され、入院時情報連携加算の内容が見直されました。2025年時点では、この仕組みが実務における標準として運用されています。
1.入院時情報連携加算とは
「入院時情報連携加算」は、利用者が病院に入院した際に、ケアマネジャーが在宅での生活状況や支援内容を病院に伝える行為を報酬として評価する仕組みです。
加算の種類と単位
- 加算(Ⅰ)250単位
入院した当日中に病院職員へ情報を提供した場合に算定できます。夜間や休日に入院し、事業所が営業時間外の場合は翌日の提供でも認められます。 - 加算(Ⅱ)200単位
入院の翌日または翌々日に情報を提供した場合に算定できます。
この加算は月1回までで、(Ⅰ)と(Ⅱ)の併算定はできません。
提供する情報の内容
必要とされる情報は以下の通りです。
- 既往歴や服薬の状況
- 認知機能や行動症状の有無
- 家族構成や介護力
- 在宅で利用しているサービス内容
- 食事・排泄・移動などの日常生活動作に関する支援状況
これらの情報は、厚生労働省が示している標準仕様に基づくデジタル様式でのやり取りが推奨されています。
2.退院・退所加算の整理
退院に向けた連携も評価の対象となります。
- 退院・退所加算(Ⅰ)イ:450単位/(Ⅰ)ロ:600単位
- 退院・退所加算(Ⅱ)イ:600単位/(Ⅱ)ロ:750単位
- 退院・退所加算(Ⅲ):900単位
加算は、退院前に病院と面談や情報共有を行うことが基本ですが、やむを得ない場合は退院後7日以内の情報取得でも算定可能です。オンライン面談を行う場合には、本人・家族の同意と個人情報保護を必ず確認します。
3.入退院時の実務の流れ
入院直後(最初の48時間)
入院の知らせを受けたら、すぐに家族と地域連携室に連絡し、在宅での実態をまとめた情報提供書を提出します。提出はデジタル様式を使い、送付の日時や方法、宛先を記録に残します。
この時点で確認するべき事項は以下です。
- 治療方針(安静度や感染対策の有無)
- 退院の見込み時期と条件
- リハビリや機能回復の見通し(必要となる福祉用具など)
- 家族の介護力(体調や就労状況、協力者の有無)
退院が近づいた段階
退院予定が分かれば、退院前カンファレンスの開催を依頼します。並行して、訪問看護・訪問介護・通所サービスや福祉用具の利用枠を事前に確保します。退院当日は、搬送手段、鍵の受け渡し、初回訪問の時間割、夜間連絡先を確認し、酸素や食事、内服などでトラブルが起きないようにします。
4.情報を医療職に伝わる形に整える
医療職が判断に使えるのは、観察可能な事実や測定できる数値です。「ふらついている」「息苦しそう」といった表現も参考にはなりますが、そのままでは根拠に乏しいため、客観的な指標に置き換えてから共有することが大切です。
書き方の工夫
- 観察した事実を記す
時間、回数、距離、量といった形で明確にする。 - 比較を加える
先月や退院直後と比べてどう変化したかを示す。 - 背景を補足する
本人や家族の訴えを追加し、情報の厚みを持たせる。
具体例
- 「息切れがある」
→ 「屋内十メートル歩行で休止を二回挟み、前月は休止なし。本人は『夜眠れない』と訴えている」 - 「食欲がない」
→ 「摂取量は半分以下。体重が一か月で1.2キログラム減少。嚥下時の咳込みが増えている」 - 「ふらつきがある」
→ 「起立は三回目で成立。歩行は手すりに依存。転倒歴がある」
こうした表現に整えることで、病院側の記録や診療の判断に直結する情報になります。
まとめ
入退院時の連携では、時間の厳守と情報の質が最も重要です。
- 入院時は当日から翌々日までに情報を提供して加算を確実に算定する。
- 退院に向けては面談や情報受領の段階に応じて退院・退所加算を取りこぼさない。
- 日常観察は客観的な指標に整えて伝える。
- 厚労省が推奨するデジタル様式を活用し、送受信の記録を残す。
これらを徹底することで、利用者の在宅再開はより安定し、再入院の予防にもつながります。

