【生活相談員】第10回:相談員の“ホスピタリティ”とは?|マニュアルでは伝わらない配慮の力

15.相談員の役割とソーシャルワーク

監修・執筆:梅沢佳裕(社会福祉士・介護支援専門員・研修講師)

介護施設で働く生活相談員に求められる力は何かと問われたとき、多くの人は「制度理解」「連携調整」「家族対応」などを挙げるでしょう。しかし実務の現場では、それだけでは十分ではありません。

利用者や家族から「この人に相談してよかった」と思われる相談員には、共通する力があります。それが、ホスピタリティ力です。

ただし、ここでいうホスピタリティは、単なる“感じの良さ”や“丁寧な言葉づかい”を指すものではありません。
生活相談員に求められるホスピタリティとは、ソーシャルワークの専門性に裏打ちされた、信頼構築の実践力です。

本記事では、特養・デイサービスを中心に、生活相談員にしかできないホスピタリティの本質と具体的な実践方法を解説します。


生活相談員のホスピタリティとは?役割と専門性の本質

「相談員って、何でも屋なのですか?」
新任の相談員からよく聞かれる言葉です。

役割が曖昧に感じられる背景には、専門性が言語化されていないことがあります。生活相談員は、単に受付や連絡調整をする職種ではありません。

生活相談員の本質は、利用者中心の視点を軸に、本人・家族・職員の関係を整え、支援の方向性を見いだすソーシャルワーカーであるという点にあります。

ホスピタリティとは、その専門性を土台にした態度です。

ホスピタリティとソーシャルワークの関係

ソーシャルワークの基本原則には、自己決定支援、権利擁護、利用者中心の支援などがあります。
ホスピタリティとは、これらを“態度”として体現することです。

例えば、入所時の面談場面。

  • 制度説明を一方的に行う
  • 家族の不安に形式的に答える

これでは信頼は生まれません。

一方で、

  • 不安の背景を丁寧に聴き取る
  • 生活歴や価値観に触れながら支援の方向性を示す
  • 制度上の制約も率直に説明する

こうした姿勢が、専門職としてのホスピタリティです。

迎合ではなく、専門的立場を保ちながら配慮することが重要です。


現場で発揮するホスピタリティの実践法とは?

では、実務でどのように発揮すればよいのでしょうか。

① 初回面談で信頼を得る姿勢

初回面談は、生活相談員の第一印象が決まる場面です。

重要なのは、次の三点です。

  • 相手の話を途中で遮らない
  • 要約して確認する
  • 分からないことは曖昧にせず説明する

例えば家族が「本当にここで大丈夫でしょうか」と不安を口にした場合、

「大丈夫です」ではなく、

「どの点が一番ご心配でしょうか」と問い返す。

ここにホスピタリティの本質があります。

② 家族対応でぶれない軸を持つ

家族から厳しい言葉を受けることもあります。
そのとき、感情的に反応しないことが大切です。

  • 感情と事実を分けて整理する
  • 家族の負担や不安を理解する
  • チームに持ち帰り検討する

相談員は、施設の立場だけでも家族の立場だけでもなく、利用者中心の立場に立つ専門職です。

この軸があるからこそ、信頼が積み重なります。

③ 他職種との関係づくり

ホスピタリティは対利用者・家族だけではありません。
介護職、看護職、リハビリ職などとの連携も重要です。

  • 情報を独占しない
  • 記録を共有する
  • 決定事項を明確に伝える

生活相談員は、情報を整理し、支援の方向性を可視化する役割があります。
ここでも透明性と誠実さがホスピタリティの根幹です。


よくある誤解と注意点

ホスピタリティを誤解すると、過剰対応や感情労働の過多につながります。

注意点は三つです。

  • すべてを引き受けない
  • 境界線を明確にする
  • チームで支える前提を忘れない

「いい人」で終わるのではなく、専門職として信頼される人になることが目標です。


そのまま使える自己点検チェック

このチェックは「できている/できていない」を裁くためではなく、相談援助の質を上げる“振り返りの物差し”です。
全部を一気に直す必要はありません。引っかかった項目が、次に伸ばすポイントです。

□ 利用者の言葉を要約して確認している

相手の話を一度まとめて「こういう理解で合っていますか」と確かめることです。誤解を減らし、安心感をつくります。
→ できていないときは、要約は1文だけを意識すると実践しやすいです。

□ 家族の不安を具体化している

「不安です」をそのまま受け取らず、何が一番心配かを言葉にします。対策が具体になります。
→ 迷ったら「いちばん気がかりな点を1つだけ教えてください」と聞きます。

□ 記録に主観ではなく事実を書いている

「怒っていた」ではなく、発言・行動・状況を残すことです。チームの対応がぶれません。
→ 忙しいときは「本人の発言/家族の発言/説明/決定事項」だけでも事実で記録します。

□ 制度説明と価値確認を分けている

制度の話と「何を大事にしたいか」を混ぜずに整理します。相手が納得しやすくなります。
→ 制度の前に「今日いちばん確認したいことは何ですか」と入口を作るのが有効です。

□ 自分の立場を明確にしている

生活相談員としての役割と限界を示し、いつ・誰が・どう決めるかの見通しを渡します。行き違いを防ぎます。
→ 曖昧になりがちなときほど「○日までに、チームで検討し回答します」と期限を添えます。

※使い方のコツ:毎回5つ全部ではなく、1回の面談で1項目だけ意識すると定着しやすいです。


現場でよくある質問(Q&A)

Q. ホスピタリティは性格の問題ではありませんか?
A. いいえ。専門的態度として学び、磨くことができる力です

Q. 忙しい現場でも実践できますか?
A. できます。大切なのは時間ではなく姿勢です。要約や確認など、小さな積み重ねが信頼を生みます。

Q. 若手でも身につきますか?
A. 身につきます。振り返りと意識化が鍵です。


小まとめ

生活相談員のホスピタリティとは、単なる接遇マナーではありません。
それは、ソーシャルワークの専門性を土台にした信頼構築力です。

制度理解、連携調整、家族支援。
そのすべてをつなぐのが、ホスピタリティです。

「感じが良い人」ではなく、
**「専門職として信頼される相談員」**を目指していきましょう。


(筆者:ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕

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