監修・執筆:梅沢佳裕(社会福祉士・研修講師)
夜勤明け、布団に入っているのに眠れない。
ようやく眠れても、目覚めたときに疲れが残っている。
そして次の勤務では、些細なことでイライラして自己嫌悪になる——。
夜勤に入る介護職の方なら、一度は経験があるのではないでしょうか。
夜勤のつらさは、気合いや根性の問題ではありません。夜勤は、体内時計(いわゆる体のリズム)を揺さぶり、さらに緊張感のある見守りや急変対応が重なることで、心身が「休みモード」に切り替わりにくくなります。結果として、睡眠の質が落ち、回復しない疲れが積み重なり、メンタル面にも影響が出やすくなるのです。
今回は、夜勤特有の「眠れなさ」を整理しながら、現場の働き方に合わせた具体策をお伝えします。
夜勤で眠れないのはなぜ?介護職の睡眠が乱れやすい理由
夜勤で睡眠が乱れやすい理由は、大きく2つあります。
1つ目は、生活リズムが不規則になり、体内時計がズレやすいことです。日勤中心の生活をしていると、身体は「夜に眠って朝に起きる」前提で働きます。そこに夜勤が入ると、眠る時間が日中にずれ込み、光や生活音の影響も受けやすくなります。これが「眠れない」「浅い眠りになりやすい」状態をつくります。
2つ目は、夜勤中の緊張やストレスが、帰宅後まで残りやすいことです。夜勤は少人数になりやすく、判断や対応を一人で背負う場面も出てきます。利用者の急変に備えながらの見守り、ナースコール対応、巡視、記録。こうした緊張が続くと、帰宅しても脳が興奮したままになり、布団に入っても頭が切り替わらないことがあります。
つまり、夜勤の不眠は「体のリズム」と「心の緊張」の両方から起きやすいのです。
夜勤明けの寝つきが悪い…よくある失敗と注意点
「夜勤明けはとにかく寝なきゃ」と思うほど、かえって眠れないことがあります。ここでは、現場でよく見られる“つまずき”を整理します。
まず多いのは、夜勤明けにスマートフォンを長時間見てしまうことです。画面の強い光は目を刺激し、脳を起こしやすくします。情報を追うと、気持ちも切り替わりにくくなります。帰宅後は、できれば「見る時間を決める」「明るさを落とす」など、刺激を減らす工夫が有効です。
次に、「寝だめ」で帳尻を合わせようとして、休日に寝すぎてしまうケースです。もちろん疲労回復は大切ですが、長く寝すぎると体内時計がさらにズレて、次の夜勤や日勤への切り替えがつらくなることがあります。夜勤が続くときほど、睡眠を「長さ」だけでなく「整え方」で考えた方が安定しやすいです。
そして、いちばん厄介なのが「布団の中で考え続ける」ことです。
「夜間の対応は正しかったか」「あの家族の言い方がきつかった」「次のシフトが不安だ」など、頭の中で反省会が始まると、眠りは遠のきます。眠れないときは、頑張って寝ようとするより、いったん寝床から出て、照明を落とした状態で軽く体を伸ばす、温かい飲み物を少量飲むなど、“切り替え”を優先した方が入り直しやすくなります。
夜勤の睡眠を整える具体策|夜勤前・夜勤中・夜勤明けのコツ
ここからは、すぐに試せる対策を「夜勤前・夜勤中・夜勤明け」に分けて紹介します。大切なのは、全部やろうとしないことです。あなたの勤務形態に合うものを、まず1つ選んでください。
夜勤前:仮眠と食事で「眠気の借金」を減らす
夜勤前に余裕があれば、短い仮眠が役立ちます。長く眠れなくても構いません。横になって目を閉じ、身体を休めるだけでも回復感が違います。仮眠が難しい場合は、夜勤前の予定を詰めすぎず、移動や準備の“バタバタ”を減らすだけでも負担が下がります。
食事は、夜勤中に胃腸が重くならないように意識します。満腹は眠気を強めることがありますし、逆に空腹でも集中力が落ちます。夜勤前は「消化に負担が少ない」「食べ過ぎない」を基本にし、夜勤中も軽い補食を上手に使うと安定します。
夜勤中:休憩は「短い回復を複数回」
夜勤中は、まとまった休憩が取りにくいこともあります。そんなときは、短い回復を複数回入れる考え方が現実的です。
たとえば、休憩に入ったら、最初の1分で呼吸を整えます。鼻から吸って、口からゆっくり吐く。これを数回行うだけでも緊張が緩みます。次に、首・肩・背中を軽く動かし、体のこわばりを取ります。短い時間でも、こうした“回復の型”を持っていると、夜勤の疲れ方が変わります。
カフェインについては、頼りすぎない工夫が大切です。飲むならタイミングを決め、「夜勤の終盤に残さない」意識を持つと、明け方以降の寝つきに影響が出にくくなります。
夜勤明け:眠りに入りやすくする「3ステップ」
夜勤明けは、次の3ステップが基本になります。
1つ目は、帰宅後に「光」を減らすことです。明るい光は目と脳を起こしやすいので、できる範囲で部屋の照明を落とし、スマホ画面の明るさも下げます。
2つ目は、入浴・シャワーで体を切り替えることです。熱いお湯でシャキッとさせるより、軽く流す、ぬるめで短く温まるなど、眠りに向かう形を選びます。
3つ目は、寝床に入る前に頭を整理することです。布団の中で考え続けないために、メモに「気がかり」を短く書き出し、最後に「今は休む」「今日はここまで」と区切りの言葉を入れます。これだけでも反省会が始まりにくくなります。
現場でよくある質問(Q&A)※短く
Q. 夜勤明けにどうしても眠れない日は?
A. 無理に寝ようとせず、いったん寝床から出て刺激を減らし、体を緩めてから入り直すと切り替えやすいです。
Q. 休日の寝だめはしてもいい?
A. 疲労回復は大切ですが、長く寝すぎるとリズムが乱れやすいので、「少し長め」程度に留める方が安定しやすいです。
Q. スマホを見ないのが難しい…
A. 「ゼロ」より「短時間」。見るなら時間を決め、画面を暗くし、刺激の強い情報は避けるだけでも効果があります。
小まとめ
夜勤の不眠は、あなたの努力不足ではなく、夜勤特有の働き方が生む「体のリズムの乱れ」と「緊張の残りやすさ」が重なって起きやすいものです。
夜勤前の仮眠、夜勤中の短い回復、夜勤明けの光と切り替え——。全部を完璧にしなくて構いません。まずは「これならできそう」と思う対策を1つ選び、続けてみてください。睡眠が少し整うだけでも、疲れ方とメンタルの安定感は変わってきます。
ベラガイア17 人材開発総合研究所 梅沢佳裕
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