【施設ケアマネジャーの教科書】アセスメント(課題分析表)の基本|書き方・文例

3.ケアマネジャーの役割と業務

(筆:ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕)


施設ケアマネジャー(計画作成担当者)の実務では、課題分析(アセスメント)を通して、利用者の生活全体を把握し、ケアプランに反映していくことが要になります。
ただ現場では、「様式は埋めているのに、ケアプランにうまくつながらない」「カンファレンスで情報が噛み合わない」「記録が多く、どこから整理すべきか迷う」といった声が少なくありません。

そこで本記事では、課題分析表(アセスメント様式)に“何をどのように整理して記載すればケアプランにつながるのか”を、新任でも実行しやすい手順として、文例つきで整理します。


はじめに|「標準項目(23項目)」を踏まえ、様式は現場の運用で記載

まず前提を丁寧に確認します。

課題分析には、厚生労働省が示す「課題分析標準項目(いわゆる標準23項目)」という基本の視点があります。
したがって、「課題分析の観点そのものが施設ごとにバラバラ」という意味ではありません。標準項目を踏まえて、必要な情報を客観的に把握することが前提です。

一方で、現場で使っている様式のレイアウト記録ソフトの入力画面は、運用やシステムの違いにより、項目の並び・欄の名称・記入スペース等が異なることがあります。
つまり、整理するとこうです。

  • 押さえる視点:標準23項目(共通)
  • 記載の形式:現場の運用に合わせた様式(異なる場合がある)

なお、「項目の主な内容(例)」は、各項目の解釈の違いにより把握内容に差が生じないよう、具体的な内容を例示したものです。これらの内容について、すべての情報収集を行うことを求めるものではないことも、厚労省資料で示されています。
だからこそ、現場では「全部書く」よりも、ケアにつながる情報を適切に選び、根拠が分かる形で整理することが重要になります。


施設ケアマネの専門性|「集める」より「整理して、チーム実践につなげる」

施設では情報が自然に集まります。介護職の記録、看護記録、リハ所見、栄養情報、家族からの申し出、日々の申し送り…。
施設ケアマネの専門性は、その情報を“増やす”ことではなく、

  • 課題(生活上の支障)を明確にする
  • 本人の意向を踏まえた目標に整える
  • チームで共通理解できる言葉にそろえる
  • 実行できる支援内容と評価(モニタリング)につなげる

この一連を、無理なく進めることにあります。

そのために、情報整理では次の3つを必ず区別します。

  • 本人の主訴(本人が困っていること・望むこと)
  • 家族等の意向(心配・希望・合意できる範囲)
  • 専門職の見立て・評価(観察・記録・多職種所見)

これらを区別せずに扱うと、課題設定の根拠が曖昧になり、目標や支援内容の整合性が取りにくくなります。
だからこそ、「誰の視点の情報か」を明確にして、分けて記載することが基本です。


第1章:観察・聞き取りのコツ

1)観察は「全部」より「変化」を捉える

新任の時期は「項目を漏れなく埋める」意識が強くなりがちです。けれど施設は情報量が多く、全部を追うほど整理が追いつきません。
まずは、“いつもと違う変化”がどの生活領域に現れているかを押さえるのがコツです。

生活領域の例(覚えやすい整理)

  • 体調・痛み・睡眠:不穏・拒否・活動低下の背景になりやすい
  • 動き・ADL:移乗、歩行、食事、排せつ、入浴の変化
  • 認知・見当識:混乱の時間帯・きっかけ
  • 気持ち・安心:不安、恐怖、見通しのなさ
  • 環境・関わり:寒暖、音、照明、声かけ、相性、生活リズム

ここまで押さえると、課題分析表のどの欄に何を書くかが自然に見えてきます。


2)様式に“根拠”を残す最小セット:「事実・本人の言動・影響」

チェック欄だけだと、あとから「なぜこの課題になったのか」が分かりにくく、ケアプランにも落としにくくなります。
そこで、どの様式でも共通して観察すべき項目が3点があります。

①事実(観察)/②本人の言葉/③影響(生活への支障)

文例

睡眠・夜間

  • 事実:夜間2~3回ナースコール、居室出入りあり(3日継続)
  • 本人の言葉:「眠れない」「怖い」
  • 影響:日中の傾眠が増え、食事量が低下

食事

  • 事実:主食が半量以下の日が週3回、咀嚼が遅く中断あり
  • 本人の言葉:「疲れる」「飲み込みにくい」
  • 影響:体重減少傾向、栄養・脱水リスク

入浴

  • 事実:入浴日に「今日はやめる」と拒否(2回連続)
  • 本人の言葉:「寒い」「恥ずかしい」
  • 影響:清潔保持が難しく、皮膚トラブルの懸念

この3つの観察項目に注目することで、チーム共有の精度が上がり、支援内容も具体化しやすくなります。


3)聞き取りは「具体→気持ち→希望」の順で整理する

聞き取りは、支援に必要な情報を整理する重要なプロセスです。
新任の職員ほど抽象的な質問になりやすい傾向がありますので、まず聞き取りの手順を固定しましょう。下記の質問はオープン・クレスチョン形式ですが、利用者のコミュニケーションのレベル等によってクローズド・クエスチョン形式で、「はい/いいえ」で受け答えできるように配慮します。

本人への聞き取り(例)

  • 「いつ頃から気になっていますか?」(具体)
  • 「どんな時が一番つらいですか?」(具体)
  • 「その時、どんな気持ちになりますか?」(気持ち)
  • 「どうなれば少し楽ですか?」(希望)
  • 「これは守りたい、ということはありますか?」(希望)

家族等への聞き取り(例)

  • 「以前はどんな生活リズムでしたか?」(比較)
  • 「今いちばん心配なことは何でしょう?」(中心)
  • 「優先順位をつけるなら、まず何を守りたいですか?」(優先)

本人の主訴と家族等の意向は一致しないこともあります。だからこそ“分けて記録する”ことが、後の調整を助けます。


4)職員情報は「評価語」を“事実の表現”に置き換える

施設では、職員から「わがまま」「すぐ怒る」「意欲がない」といった言葉が出やすいものです。
施設ケアマネは、それを否定するのではなく、ケアにつながる事実表現に置き換える役割を担います。

置き換えの質問(テンプレ)

  • 「いつ、どの場面ですか?」
  • 「その時、本人は何と言いましたか?」
  • 「どんな行動がありましたか?」
  • 「直前に何がありましたか?」
  • 「うまくいった対応/難しかった対応は?」

置き換え例

  • 「わがまま」→「入浴前に『寒い』『恥ずかしい』と訴え、拒否が続いている」
  • 「すぐ怒る」→「声かけ直後に『触らないで』と言い、腕を振り払う場面がある」

第1章 小まとめ

観察は“変化”を軸に生活領域で整理し、様式にはチェックだけで終わらせず「事実・本人の言葉・影響」を添えて根拠を残す。聞き取りは「具体→気持ち→希望」の順で整理し、職員情報は評価語を事実表現に置き換える。これが、ケアプランにつながるアセスメントの土台になる。


第2章:事実/見立て(仮説)を分ける整理術|課題分析表からケアプランへ反映する「書き換えの手順」

1)会議を噛み合わせる鍵は「事実→見立て→対応」

カンファレンスで話が噛み合わないとき、よくあるのは…、
ある人は“事実(ありのまま観察したこと)”、別の人は“見立て(職員の予測・予見)”、さらに別の人は“対応案(介護方針や介護内容・どう関わるか)”を話している状態です。

施設ケアマネはまず、情報を次の3つに分けて提示します。

  • 事実(観察事実):何が、いつ、どの程度、どう起きているか(具体的な言動・頻度・状況)
  • 見立て(仮説):背景として何が関与していそうか(身体・心理・環境)
  • 対応(方針/試行):次に何を行い、何を指標に確認するか(支援内容・評価)

これだけで議論が整理され、意思決定がしやすくなります。


2)事実は「要点1文+影響1点」で伝える

事実は長くなるほど伝わりません。
一度書いたら、要点を1文に整えます。

  • ×「不安が強い」
  • ○「夜間にナースコールが増え、『眠れない』と訴える日が続いている」

さらに、影響を1点だけ添えると、支援の必要性が共有されます。
○「…その結果、日中の傾眠が増え、食事量が低下している」


3)見立ては断定せず「仮説」として置き、検証できる形にする

見立ては断定せず、「~が影響している可能性がある」と整理します。
そのうえで、利用者の状態像の変化と支援の変更の可否ポイントをモニタリングで確認しながら調整します。

予見される観察ポイント(例)

  • 身体面:痛み、便秘、感染、薬の影響、睡眠
  • 心理面:不安、混乱、恐怖、喪失感
  • 環境面:寒暖、音、照明、声かけ、生活リズム

予見された観察ポイントの書き方(例)

  • 「痛みや排泄不快が影響している可能性がある」
  • 「夕方以降の刺激や疲労が影響している可能性がある」

4)課題分析表→ケアプランへ「課題→目標→支援内容→評価」に整える

課題分析表の情報は、そのままではケアプランには移行されません。
以下の流れで、アセスメントを「課題設定→目標設定→支援内容→評価(モニタリング)」に展開します。

  1. 課題(生活上の支障)
  2. 目標(本人の意向を踏まえた到達点)
  3. 支援内容(誰が・いつ・何を)
  4. 評価(モニタリングで何を見るか)

変換例:夜間不眠(ナースコール増)

  • 課題:夜間の不眠と不安でナースコールが増え、生活リズムが乱れている
  • 目標:夜間の不安が軽減し、休める日が増える
  • 支援内容:就寝前の排泄・疼痛確認(看護連携)/照明・声かけの統一/日中活動と休息調整
  • 評価:ナースコール回数、睡眠状況、日中傾眠を1週間記録し見直す

5)本人の主訴と家族等の意向が異なるときは「共通の目的」に整える

施設では、本人と家族等の希望が一致しない場面があります。
このとき、どちらかを否定して決着させるのではなく、共通の目的(安心・安全・納得)に整理し直し、施設内で実行可能な支援に落とし込みます。

たとえば「帰りたい」という主訴の背景にある不安や見通しのなさを丁寧に確認し、面会・連絡の工夫、生活歴の活用、環境調整、声かけの統一などを支援内容として組み立てます。
“調整できる形に整える”ことが、施設ケアマネの重要な役割です。


第2章 小まとめ

事実・見立て(仮説)・対応を分けて整理すると、会議の議論がかみ合い意思決定がしやすくなる。課題分析表の情報は「課題→目標→支援内容→評価」に整えて初めてケアプランに反映でき、主訴と意向の違いは共通の目的に整理することで調整しやすくなる。


まとめ|アセスメントをケアプランにつなげる“基本の型”

課題分析は、標準23項目の視点を踏まえつつ、現場で必要な情報を適切に選び、根拠が分かる形で残すことが大切です。
様式はチェックだけで終わらせず「事実・本人の言葉・影響」を添え、整理は「事実/見立て(仮説)/対応」に分け、ケアプランは「課題→目標→支援内容→評価」に整える。
この基本が押さえられると、新任の施設ケアマネの方でも迷いが減り、チームで一貫した支援につながりやすくなります。

(筆:ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕


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