働く女性の「仕事と介護の両立」は、一様ではありません
「仕事と介護の両立」と聞くと、正社員として働き、一定の制度を利用できる女性を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし実際には、非正規雇用、ひとり親、単身女性など、立場によって直面する介護リスクは大きく異なります。
本稿では、働く女性を一括りにせず、
「どの立場に、どのような両立の壁があるのか」
を丁寧に整理します。
重要なのは、これを「個人の弱さ」や「自己責任」として扱わないことです。
問題の多くは、制度や職場の仕組みが想定していない現実にあります。
非正規雇用で働く女性が直面しやすい介護リスク
パートタイム、派遣、契約社員など、非正規雇用で働く女性は年々増えています。
一方で、仕事と介護が重なったとき、正社員とは異なる困難に直面しやすい立場でもあります。
たとえば、
- 介護休業制度の対象外、もしくは取得要件を満たしにくい
- 勤務時間が短く、収入減の影響が生活に直結する
- 職場に相談窓口がなく、声を上げづらい
- 「代わりはいくらでもいる」という空気を感じやすい
といった状況が生じがちです。
非正規雇用は「柔軟に働ける」という側面が強調されがちですが、
介護という長期・不確定なケアが加わると、
柔軟さが“不安定さ”に変わる瞬間があります。
これは働く女性の姿勢の問題ではなく、
制度が非正規雇用を前提に設計されていないことが背景にあります。
ひとり親女性に集中しやすい「時間」と「責任」の負荷
ひとり親で働く女性にとって、仕事と介護の両立は、さらに複雑な課題となります。
子育て・家事・就労に加え、親の介護が重なると、生活のバランスは一気に崩れます。
特に特徴的なのは、
- 代替要員(家族)がいない
- 突発的な介護対応を一人で引き受けざるを得ない
- 子どもの生活と親の介護、二世代ケアの板挟みになる
- 時間的余裕がなく、制度情報を調べる余力がない
といった点です。
ひとり親女性が介護を抱えた場合、
「誰かと分担する」という選択肢自体が存在しないことも少なくありません。
これは決して「頑張りが足りない」からではなく、
支援を前提とした社会設計が追いついていないことによるものです。
単身女性が抱え込みやすい「見えにくい介護」
単身で働く女性の場合、介護の困難さは外から見えにくくなります。
配偶者や同居家族がいないため、
「大変さ」が周囲に伝わりにくいからです。
単身女性が抱えやすい特徴として、
- 介護の相談先が限られ、孤立しやすい
- 緊急時のバックアップ体制がなく、常に気が抜けない
- 「自分がやるしかない」と責任を一身に背負いやすい
といった傾向が挙げられます。
また、「単身=身軽」という誤解も根強く、
職場で配慮が後回しにされるケースも見られます。
しかし実際には、
単身であるがゆえに、介護の負担が一点に集中しやすいという現実があります。
共通しているのは「制度が想定していない働き方」
非正規雇用、ひとり親、単身女性。
立場は異なりますが、共通しているのは次の点です。
- 標準的な世帯モデル(正社員・配偶者あり)を前提にした制度設計
- 職場の支援が「正社員中心」で組み立てられている
- 個別事情が見えにくく、声を上げにくい環境
つまり、リスクの正体は
女性の生き方そのものではなく、制度と職場の想定の狭さにあります。
企業・社会に求められる視点とは
働く女性を支えるために必要なのは、
「特別扱い」ではなく、前提を広げる視点です。
たとえば、
- 雇用形態にかかわらず相談できる窓口の整備
- 介護に関する情報提供を正社員以外にも届ける
- 管理職が多様な家庭背景を理解する研修
- 「誰でも介護当事者になり得る」という認識の共有
こうした取り組みは、結果として
組織全体の安定と人材定着にもつながります。
小まとめ
仕事と介護の両立リスクは、女性の立場によって大きく異なります。
非正規雇用、ひとり親、単身女性が直面する困難は、
個人の問題ではなく、制度や職場の想定不足から生じています。
この現実を正しく理解することが、
男女共同参画を進め、
多様な女性が働き続けられる社会への第一歩です。
【働く女性×仕事と介護の両立支援】
第1回:介護離職の約8割は女性──働く女性を直撃する「親の介護リスク」とは?
第2回:介護離職を防ぐ3つの対策──働く女性のキャリアを守る「企業の必須アクション」
第3回:働く女性を取り巻く“ケア負担の偏り”とキャリアへの影響─社会構造から読み解く真の課題
第4回:就業・家事・ケアの「トリプル負担」が生まれる背景と“見えにくい現実”
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