【第10回】介護記録 × ケアの質|サービス提供の質を高める記録の書き方

12.介護記録の書き方と活かし方

──「書くこと」はケアの質を上げる“技術”である

介護記録は、単なる作業ではありません。
「その利用者の支援が、翌日・来週・来月も正しく続くための情報設計」です。
つまり、記録の書き方一つで、ケアの質は確実に変わります。

本記事では、特養・デイサービス・障害者支援施設で共通して使える
“サービス提供の質を高める” 介護記録の技術を、新任にも分かりやすく解説します。


1.ケアの質を上げる記録の基本|「主語・事実・根拠・意図」の4点セット

介護記録で最も重要なのは、
「介護職の感想」ではなく「支援を続けるために必要な事実」を明確に残すことです。

①主語

「誰が」「何をしたか」は絶対に省略しません。
主語が抜けると情報価値が一気に下がります。

〈悪い例〉
10時食堂へ誘導した。歩行安定。

→ 誰が誘導したのか不明。支援内容も曖昧。

〈良い例〉
10時、職員Aが居室へ迎え、食堂まで歩行介助。歩行は時折ふらつきあり。


②事実

介護記録は「事実→判断→意図」の順番が鉄則です。
特に事実の精度が低いと、チーム全体が誤認します。

〈例〉
・食事:完食/半分残した/むせ1回
・排泄:尿意訴えあり/便性状はバナナ状/下痢2回
・入浴:皮膚発赤(両上腕)/洗身時に痛み訴え

事実の記録は、ケアマネのモニタリング・主治医の判断材料にもなります。


③根拠

例えば「見守り強化した」「水分摂取を促した」などの介入を書くときは、
なぜその介入が必要だったのかの根拠を書きます。

〈例〉
・歩行中にふらつきが数回見られたため、昼食後も見守りを継続。
・発熱37.8度のため、入浴は中止し看護師へ報告。

根拠が書かれていれば、他の職員が同じ判断を引き継げます。


④意図(次の人がどう動けばよいか)

「次の担当者の行動が決まる」記録こそ良い記録です。

〈例〉
・夕食後も水分摂取を促してください。
・夜勤帯、転倒リスクのためトイレ誘導をお願いします。


2.質を高めるための“技術”|読み手が迷わない書き方

介護記録に「上手い文章力」は必要ありません。
必要なのは“読み手に迷わせない設計”です。


時間→状況→支援内容→結果 の順序で書く

これは梅沢式の一貫した原則です。

〈例〉
14:30 職員Bがカンファ室前で転倒を発見。
意識清明、痛みなし。
歩行時に左へ傾く様子があり、その後は車いすで居室へ移動。
看護師に報告し観察継続。

順序が整理されているため、誰が読んでも混乱しません。


抽象語を使わない

「しんどそう」「元気ない」「普段どおり」は NG。
読み手により解釈が変わるため、事故の原因になり得ます。

〈良い例〉
・表情が乏しく声掛けへの反応が弱い。
・歩行がふらつき転倒リスクが高い。
・食事中、咳込み2回。


ネガティブ表現ではなく“事実+支援”

「拒否」「問題行動」などの言葉は必要な場面以外は避けます。

〈改善例〉
×「入浴を拒否」
○「入浴を案内したが『今日は疲れた』と発言。時間を空け再提案予定」

事実と対応をセットで書くことで、次のケアが円滑になります。


3.サービス提供の質が上がる“記録の視点”3つ

①「利用者の変化」に敏感になる

変化を捉える職員ほど、記録の質が高くなります。

・食事量の変化
・声掛けへの反応
・歩行の安定性
・排泄パターンの変化
・感情・意欲の変化

これは事故予防・健康管理に直結します。


②「チームで共有すべき情報」を優先する

記録は“全部書く”のではなく
“共有すべき情報を選ぶ技術”が必要です。

・いつもと違う行動
・リスクに関わること
・ご家族からの要望
・医療的変化
・認知症症状の変化

記録に残す基準があると、チームの判断がぶれません。


③「読み返される記録」を意識する

介護記録は“後で必ず読む人がいる”文章です。

・ケアマネ
・看護師
・リハ職
・管理者
・家族説明
・行政対応(監査含む)

読み返しても意味が通じる記録を残すことが、
介護サービス全体の質向上につながります。


小まとめ

介護記録は「義務」ではなく、
“サービス提供の質を高めるためのケアツール”です。

主語・事実・根拠・意図がそろった記録は、
チーム全員が同じ方向を向き、利用者にとって最善の支援につながります。

記録の技術を身につけることは、介護のプロとしての力量向上そのものです。
今日の一枚の記録が、明日のよりよいサービスをつくります。

(筆:ベラガイア17人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕

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