介護現場で起きる介護ハラスメントやトラブルの多くは、「現場任せ」「担当任せ」で対応されがちです。
しかし、一人で抱え込む対応こそがリスクのはじまりです。
今回は、現場での初期対応を“個人戦”にせず、“チーム戦”に変えるための基本的な流れを整理します。
1.誰に・いつ・何を伝えるかを明確にしておく
トラブルや不安を感じたとき、「上に報告すべきか迷う」職員は多いものです。
しかし、報告が遅れることで問題が深刻化するケースは少なくありません。
そこで重要なのが、あらかじめ「連絡の順番」と「上げる基準」を決めておくことです。
●連絡の順番(例)
1️⃣ 現場職員 → 2️⃣ 直属の上長 → 3️⃣ 管理者 → 4️⃣ 法人本部
この流れを施設内で明文化しておくことで、迷わずに動けるようになります。
●上げる基準の目安
- 同様の行為が繰り返される場合
- 暴言や暴力など、安全を脅かす危険がある場合
- 業務に支障をきたす、または他職員への影響が広がる場合
これらの基準を職員間で共有しておくと、「自分の感覚」で判断するリスクを減らせます。
※報告をためらう職員が多い職場では、「早めの共有」を推奨する文化を作ることが重要です。
早い段階で相談が上がれば、事態が複雑化する前に対処できます。
2.チームで受け止める ― “共有”と“窓口の一本化”
ハラスメント対応をチームで行ううえで大切なのは、情報の共有と対応の一貫性です。
●複数人対応・担当替えの工夫
特定の職員ばかりが負担を背負わないよう、
・複数人での訪問や面談対応
・担当職員の交代
・記録や申し送りでの共有
といった仕組みを作っておくことが有効です。
●窓口を一本化する
苦情や要望の受付を複数の職員がバラバラに受けてしまうと、混乱や誤解を生みやすくなります。
「誰が窓口か」「返答までの流れ」を明示し、施設全体で統一対応を行うことが信頼につながります。
●連絡票・家族向け案内文の活用
実務面では、以下のようなテンプレートを用意しておくとスムーズです。
- 連絡票テンプレート例
事実内容(発言・状況)/職員の対応/今後の希望/施設の判断・方針
※記入時は個人情報やプライバシーに十分配慮し、不要な特定表現を避けましょう。 - 家族向け案内文例
窓口担当名・連絡可能時間・返答予定日を記載。
「〇〇日以内に回答します」と明示することで、問い合わせの重複を防げます。
情報共有の目的は「責任の押し付け」ではなく、「支援の継続と安全確保」です。
個人が抱えず、チームで受け止める仕組みこそ、職員と利用者双方を守る最善策です。
小まとめ
- ハラスメント対応は個人の判断に委ねない。
- 連絡ルートと報告基準を明確化しておく。
- 複数人対応と窓口統一でチームとして支援する。
「報告しやすい文化」「共有しやすい仕組み」が、現場の安全と信頼を守ります。
一人で抱え込まず、“チームで守る介護”を育てていきましょう。

