(連載:現場で差がつく!生活相談員スキルアップ術|連携・調整・対人援助のプロになる!)
介護施設で働く生活相談員にとって、日々の業務を制度の枠組みと結びつけて理解することは不可欠です。
介護保険制度を「難解な法令」として苦手意識を持ち敬遠してしまうと、支援の幅が狭まり、利用者にとって最適な提案ができなくなります。
この記事では、制度の仕組みを実務と結びつけて理解する視点を、ソーシャルワーカーの立場から解説します。
1.介護保険制度を“生活の仕組み”として捉える
介護保険制度は、単なる介護給付の仕組みではなく、「高齢者の生活を地域で支える社会システム」の一つです。
つまり、利用者一人ひとりが「どんな生活を望み」「何を支援すれば自立につながるのか」を明確にするための土台なのです。
制度理解の基本ポイント
- 要介護認定制度:支援の入口。本人・家族の申請、認定調査、主治医意見書がそろって初めてスタート。
- 介護サービス計画(ケアプラン):利用者の希望を反映させる「生活再設計図」。
- 給付と自己負担:介護保険サービスは原則1割~3割負担。介護予防・地域支援事業も含め、すべてが“生活を守る仕組み”の一部。
生活相談員に求められるのは、この制度を「説明する」ことではなく、“生活の中に落とし込んで一緒に考える”力です。
例えば、「週3回デイサービスに通うのが目的ではなく、通うことで体力を維持し、在宅生活を続けたい」という生活目標の翻訳を支援するのが相談員の役割です。
2.制度理解を「相談援助」に活かす3つの視点
介護保険制度は複雑に見えますが、相談援助の現場で生かすには次の3つの視点が鍵になります。
(1)権利擁護の視点
介護保険は、利用者の「自己選択・自己決定の権利」を支える制度でもあります。
相談員は、制度を“使えるようにする”ことだけでなく、“使うかどうかを選べる”状況を整える支援者です。
たとえば「施設入所」か「在宅継続」かを迷う家族に対し、両者の制度上の支援内容・費用・生活環境を比較し、本人の意思を反映できる形で情報提供することが求められます。
(2)生活再構築の視点
入退所・通所・在宅移行など、生活の「節目」には制度理解が不可欠です。
介護報酬や加算項目の知識があれば、個別機能訓練(リハビリ)計画や短期入所の利用などを提案しやすくなります。
制度を活かして生活を再設計することこそ、相談援助職の専門性といえます。
(3)多職種連携の視点
介護保険制度は、チーム支援を前提に設計されています。
介護職・看護職・ケアマネジャー・管理栄養士など、各職種が制度上どの立場で関与しているのかを理解することで、調整がスムーズになります。
「介護報酬の対象外だからできない」ではなく、「どの枠組みなら実現できるか」を考える姿勢が、生活相談員の調整力を支えます。
小まとめ:制度を“使いこなす相談員”へ
介護保険制度を理解することは、相談員の専門性を広げることです。
生活相談員は、制度を説明する立場にとどまらず、制度を通して利用者の生活を再構築する支援者です。
- 制度を「生活の仕組み」として理解する
- 自己決定・権利擁護の視点で情報提供を行う
- 制度知識を活かして生活再設計と連携調整を支える
これらの積み重ねが、現場で信頼される相談員をつくります。
介護保険制度の理解は“座学”ではなく、“実践の武器”です。
次回は、『特養入退所・デイサービス利用開始・中止、これだけは押さえる!インテーク&アセスメントの基本』を解説していきます。
📘参考リンク
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html - WAM NET「介護保険最新情報」
https://www.wam.go.jp/
(筆者:ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕)
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