居宅ケアマネジャーの仕事には、「相談支援」や「ケアプラン作成」のように人と向き合う時間と、給付管理や報酬請求のように数字と制度に向き合う時間があります。
後者は一見地味ですが、事業所の信頼と経営を支える「縁の下の力持ち」の業務です。今回は、給付管理票と提供票の基礎、返戻・減算を防ぐ実務ポイント、そしてケアマネ報酬の最新動向を整理してお伝えします。
1.給付管理票・提供票とは何か
給付管理票とは、介護保険サービスの給付実績を保険者に請求するための根拠帳票です。
居宅ケアマネは、サービス事業所から送られてくる「提供票」をもとに、実際の利用実績を確認し、国保連合会に提出する「給付管理票」を作成します。
たとえば、週3回の通所介護を予定していた利用者が体調不良で1回休んだ場合、予定通り3回分を請求すれば誤請求となり返戻の対象になります。
このように、実績と請求内容の一致を確認することが給付管理の出発点です。
提出期限は原則として翌月10日まで。複数の事業所から提供票が届くため、月初は処理が集中します。スケジュール管理を仕組み化しておくことが重要です。
チェックポイント
- 提供票と利用票の回数・単位数の整合性
- 区分支給限度基準額を超えていないか
- 加算・減算の記載漏れがないか
- 利用者・事業所・ケアマネの署名や番号の記載有無
これらを日常的に確認することが、返戻・減算の最大の予防策です。
2.返戻・減算を防ぐための実務ポイント
「返戻(へんれい)」とは、請求内容に誤りがあるために国保連が支払いを保留することです。
主な原因は、帳票の記入漏れや資格情報の不整合、請求内容と加算要件のズレなどです。
具体的には、次のようなケースがよく見られます。
- 提供票と給付管理票の回数が一致していない
- 要介護認定の有効期限切れを見落としている
- 保険者番号や負担割合証の変更を反映していない
- 加算条件を満たしていないのに加算を算定している
返戻通知を受けた場合は、必ず内容を精査し、修正理由を明示したうえで再提出します。
修正の根拠を記録として残すことは、将来の監査対応や職員交代時の引き継ぎにも役立ちます。
このとき参考になるのが、‶WAMNET(ワムネット)”の公開資料です。
WAMNETは、社会福祉・医療機構(WAM)が運営する行政情報サイトで、介護給付費請求や返戻処理、仕様書、エラーコード一覧などが定期的に更新されています。
介護請求に関する最新情報は、以下の資料から確認できます。
* WAMNET:介護保険請求に関するインタフェース仕様書(居宅介護支援事業所編)
3.ケアマネ報酬の加算・減算 ― 2024年度改定のポイント
2024年度(令和6年度)介護報酬改定では、居宅介護支援の評価体系が大きく見直されました。
とくに「特定事業所加算」に関して、主任介護支援専門員の配置や研修実施体制などの要件が整理され、質の高いマネジメントを行う事業所をより評価する仕組みとなりました。
厚生労働省の公式資料はこちら:
* 令和6年度介護報酬改定の主な事項(厚生労働省)
* 特定事業所加算(届出様式Excel)
このほか、処遇改善加算の統合も大きな変更点です。
従来の「介護職員処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」が一本化され、事務処理が簡素化されました。
ただし、届出様式や配分ルールは変更されているため、最新の通知を確認することが不可欠です。
一方で、減算の対象となるのは次のような場合です。
- 主任ケアマネ不在などで特定事業所加算の要件を満たしていない
- 指定更新時に人員基準を下回っている
- 実地指導・監査で記録不備が判明した
このように、加算を「算定する力」だけでなく、「維持する力」が求められる時代です。
4.“正確さ”は信頼の証
給付管理や報酬請求は、数字を扱う地道な仕事ですが、ケアマネの専門性を支える要の業務です。
ミスを防ぐ丁寧な確認、返戻への迅速な対応、制度の更新を追い続ける姿勢。
そのすべてが「信頼されるケアマネ」をつくります。
制度の理解は、現場での支援を支える土台。
次回は、日々の記録や確認に役立つ「記録業務と書類整備の実務―“実地指導で指摘されない”記録とは」をご紹介します。

