厚生労働省は令和8年10月21日、介護保険最新情報Vol.1548「介護現場において事故が発生した際の報告について」を発出しました。
今回の事務連絡では、介護事故の情報を全国的に収集・分析する新システムの整備と、事故報告書の様式見直し案が示されています。新システムは令和9年(2027年)4月頃の稼働を予定しています。
見直し案には、事故発生前の利用者の状態や発生状況、原因分析、再発防止策など、事故情報をより具体的に把握するための項目が盛り込まれました。
ただし、報告様式は現在も調整中であり、今回示されたものは確定版ではありません。 現行の事故報告との違いや、今後の実務への影響を整理します。
介護事故報告の新システム|2027年4月頃から稼働予定
全国の事故情報を収集・分析する仕組みを整備
介護保険施設等の事故報告については、令和6年11月29日の厚生労働省通知により、標準的な報告様式が示されています。
その後、令和7年12月25日の社会保障審議会介護保険部会では、全国の事故情報を収集・分析し、事故防止に役立つ情報を介護現場へ還元する必要性が示されました。
これを踏まえ、厚生労働省は「介護現場における事故情報報告システム」を、介護サービス情報公表システムのサブシステムとして構築する予定です。
新システムでは、事故報告の内容を統一して情報を集約し、事故の発生傾向や原因を分析することで、全国的な事故防止の取組に活用することが想定されています。
現時点で示されている内容は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| システム名称 | 介護現場における事故情報報告システム |
| 稼働予定 | 令和9年(2027年)4月頃 |
| システムの位置づけ | 介護サービス情報公表システムのサブシステム |
| 報告様式 | 見直し案を調整中 |
| 入力フォーム | システム稼働後、見直し後の報告様式を反映する予定 |
今回の事務連絡は、新システムの整備と様式見直し案を事前に周知するものです。現段階で、新たな事故報告様式への切替えや、新システムでの報告を求める内容にはなっていません。
第1報の提出期限はどうなる?
今回の見直し案にも、第1報の提出に関する取扱いが記載されています。
第1報は、様式の1から6までの項目について可能な限り記載し、事故発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に提出するという内容です。
この「5日以内」は、令和6年11月の標準様式にも記載されており、今回新たに設けられた期限ではありません。
また、事故報告の対象や提出方法、緊急時の連絡手順などについては、自治体が個別に定めている場合があります。
新システムが稼働するまでは、引き続き管轄自治体の定める事故報告の取扱いに従ってください。
事故報告書の見直し案|主な変更点と現場での確認事項
今回のPDFには、現行様式と見直し案を比較した新旧対照表が添付されています。
見直しの特徴は、事故発生時の状況を具体的に把握するとともに、原因分析と再発防止策を共通の項目で整理できる構成となっていることです。
① 事故発生前の利用者の状態を記載
見直し案では、事故の概要に「事故発生前の利用者の状況・状態」という項目が設けられています。
ここには、普段の様子との違いや疲労、眠気など、事故発生前の心身の状態を記載することが想定されています。
例えば転倒事故であれば、事故直前の歩行状態や行動、普段と異なる様子などが確認の対象になります。
また、利用者の身体状況については、要介護度や認知症高齢者の日常生活自立度に加え、障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)の項目も設けられています。
② 事故の種別・発生場所・対応経過を具体化
事故の種別や発生場所についても、選択肢が見直されています。
事故種別には、転倒、転落、誤嚥・窒息、誤薬・与薬もれ等のほか、所在不明、溺水、熱中症、強打・圧迫、自傷行為、利用者間トラブルなどが示されています。
発生場所も、居室や廊下、浴室に加え、洗面所、エレベーター、玄関、車両など、詳しい分類が設けられています。
事故発生時期は年月と時間帯を選択する形式となり、発生時の状況や職員の対応については、時刻を添えて経過を記載する欄が示されています。
事故がどのような状況で発生し、その後どのように対応したのかを、時系列で確認しやすい構成です。
③ 原因分析を6つの観点から整理

今回の見直し案で、特に注目したいのが事故の原因分析です。
現行様式では、本人要因、職員要因、環境要因について自由記載する形式となっています。
見直し案では、事故を「利用者の日常生活動作中に発生した事故」と「介助中等、職員が関与した事故」に分類し、原因に関係する項目を選択して記載する構成が示されています。
原因分析の主な観点は、次の6つです。
- 利用者の行為や状態変化
- 組織運営体制
- マニュアル・手順
- 環境・設備
- 介護技術
- 職員間の連携・情報共有
該当する項目は複数選択でき、その他の要因についても記載できます。
事故の背景には、利用者の心身の状態、職員配置、支援手順、設備、情報共有などが関係している場合があります。今回の見直し案では、こうした要因を複数の観点から確認できる形式になっています。
④ 再発防止策も原因分析と対応した項目へ
再発防止策についても、原因分析と同じ観点に沿って記載する形式が示されています。
例えば、原因分析で職員間の情報共有に関する課題が確認された場合は、申し送りの方法や情報共有の手順などを検討します。
環境・設備が関係している場合には、動線や設備の状態、使用方法などが検討の対象になります。
原因分析で確認した要因と再発防止策を対応させる構成は、事故防止委員会での検討にも参考になる内容です。
ただし、これらは現時点の様式案に基づく説明です。正式な記載項目や入力方法については、今後の通知を確認する必要があります。
管理者・事故防止委員会が確認しておきたいこと
新システムの稼働を見据え、現段階では次の3点を確認しておくとよいでしょう。
1.事故発生時の報告・連絡手順
事故発生後の利用者の安全確保、家族や関係機関への連絡、自治体への事故報告について、現在の事業所内の手順を確認します。
2.事故記録と原因分析の内容
事故発生前の利用者の状態や発生時の状況、職員の対応が記録されているかを確認します。原因分析では、利用者の状態だけに偏らず、組織運営や支援手順、環境などの要因にも目を向けます。
3.再発防止策の検討と共有
事故防止委員会などで原因分析の内容を確認し、必要な改善策を検討します。検討結果を職員間で共有し、その後の取組状況も確認していきます。
これらは、今回の事務連絡によって新たに義務付けられた事項ではありません。現在の事故防止・再発防止の取組を振り返る際の実務上の確認事項です。
まとめ
介護保険最新情報Vol.1548では、介護事故情報を全国的に収集・分析する新システムの整備と、事故報告書の見直し案が示されました。
「介護現場における事故情報報告システム」は令和9年4月頃の稼働を予定しており、収集した事故情報を事故防止に活用する仕組みの構築が進められています。
見直し案では、事故発生前の利用者の状態や発生状況に加え、原因分析と再発防止策を具体的に整理するための項目が設けられています。
報告様式は現在も調整中であり、今回の案がそのまま確定するとは限りません。 各事業所では、現行の事故報告手続きを継続しながら、今後示される正式な様式と新システムの運用方法を確認してください。
参考・出典
厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1548」(令和8年10月21日)
「介護現場において事故が発生した際の報告について」
厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1332」(令和6年11月29日)
「介護保険施設等における事故の報告様式等について」
関連リンク
■介護保険最新情報Vol.1548(介護現場において事故が発生した際の報告について)(令和8年10月21日厚生労働省老健局高齢者支援課、認知症施策・地域介護推進課、老人保健課事務連絡)
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