虐待防止委員会は何をする?事業所で押さえたい役割・議題・記録の基本

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主な対象読者
管理者、虐待防止担当者、虐待防止委員会メンバー、生活相談員、ケアマネジャー、リーダー職
※今回は高齢者分野の虐待防止委員会を取り上げます。障害福祉分野についても、制度上の違いを踏まえて別月の記事で詳しく解説します。

「虐待防止委員会を開いているものの、毎回似た内容になってしまう」「虐待事案がなければ、何を話し合えばよいのか分からない」。現場では、このような悩みもあります。

虐待防止委員会は、開催実績を残すための会議ではありません。日頃の支援や職場環境を振り返り、虐待の未然防止、早期発見、再発防止につなげるための仕組みです。

高齢者虐待防止を考える際には、事業所の職員による虐待だけに目を向けないことも大切です。高齢者虐待防止法では、「養護者による高齢者虐待」と「養介護施設従事者等による高齢者虐待」が分けて規定されています。

虐待防止委員会でも、この二つの視点を持って日頃の取組を確認することが求められます。

この記事で分かること
・虐待防止委員会の基本的な役割
・養介護施設従事者等による虐待を防ぐ視点
・養護者による虐待を早期発見する視点
・委員会で取り上げたい議題と記録
・通報と委員会の役割の違い

虐待防止委員会の役割を確認する

介護保険サービスでは、虐待の発生または再発を防止するため、委員会の開催、指針の整備、職員研修、担当者の配置などの措置が広く運営基準に位置づけられています。

ただし、具体的な取扱いはサービス種別によって異なります。実際の運用では、自事業所に適用される運営基準、解釈通知、指定権者の最新資料を確認してください。

そのうえで、高齢者分野の虐待防止委員会では、次の二つの方向から現場を見ると役割が明確になります。

1.養介護施設従事者等による虐待を防ぐ

一つ目は、事業所の職員による虐待や、その背景にある不適切なケアを防ぐことです。

たとえば、

  • 強い言い方や威圧的な対応が増えている
  • 利用者の拒否を十分に確認せず介助している
  • 身体拘束や行動制限につながりかねない対応がある
  • 特定の職員に負担が集中している
  • 職員によって支援方法が大きく異なっている

といった状況は、委員会で確認したい材料になります。

気になる関わりが見つかったときは、職員個人の問題だけで終わらせません。

強い声かけの背景に、業務の集中、職員配置、支援方法の共有不足、認知症への理解不足、職員の疲弊などが関係していることもあります。

「誰が悪かったか」だけを追及するのではなく、なぜそのような言動や対応が起きたのかを確認する。 虐待場面やその時の状況などからリスク・アセスメントを行う。これが再発防止につながります。

2.養護者による虐待の早期発見につなげる

もう一つが、養護者による高齢者虐待を早期に把握する視点です。

高齢者虐待防止法でいう養護者とは、高齢者を現に養護している者で、養介護施設従事者等以外の者を指します。家族が該当することが多いものの、家族だけに限定される概念ではありません。

介護職、訪問介護員、通所介護職員、生活相談員、ケアマネジャーなどは、本人や養護者と継続的に関わる中で、小さな変化に気づくことがあります。

たとえば、

  • 本人に不自然なあざや傷がみられる
  • 養護者が同席すると本人の表情や発言が変わる
  • 必要な介護サービスが突然中断された
  • 食事、清潔保持、受診などが十分に行われていない
  • 養護者の介護負担や疲弊が強くなっている
  • 本人の金銭管理に気になる変化がある

といった状況です。

こうした変化について、職員が「家族のことだから」と抱え込まず、何に気づき、誰に共有し、どのように相談・通報へつなぐのかを事業所内で確認しておくことも虐待防止委員会の役割です。

養護者による虐待への対応では、本人の安全確保とともに、養護者への支援という視点もあります。介護負担、孤立、経済的な困難などが背景にある場合には、市区町村や地域包括支援センター等との連携につなげていきます。

委員会では何を議題にするのか

虐待防止委員会では、「事業所内で虐待を起こさない視点」と「利用者の生活の中で起きている虐待を早期に把握する視点」の両方を持って議題を考えます。

たとえば、次のような内容です。

  • 不適切ケアとして気になった場面
  • 強い言葉かけや行動制限につながる支援
  • 身体拘束等に関係する支援上の課題
  • 職員のストレスや業務負担
  • 利用者や家族からの相談・苦情
  • 本人の身体状況、表情、生活状況の変化
  • 養護者の介護負担や疲弊について気になること
  • 虐待防止チェックリストの結果
  • 前回決めた改善策の実施状況
  • 通報・相談先と事業所内の報告ルート

毎回すべてを扱う必要はありません。その時期の事業所や利用者の状況に合わせて議題を選ぶことで、委員会の話し合いが具体的になります。

委員会での検討例①|事業所内の支援

「最近、利用者に『待って』『座っていて』という声かけが増えている」

→どの時間帯に多いのか
→業務の集中や職員配置は関係しているか
→利用者は何を求めていたのか
→別の声かけや支援方法はないか

事実 → 背景 → 改善策の順に確認します。

委員会での検討例②|養護者による虐待の早期発見

「通所利用時、本人の腕にあざがみられ、最近欠席も増えている。家族からは介護疲れを訴える発言があった」

→職員が確認した事実は何か
→これまでの本人・家族の変化はどうか
→誰に報告・共有したか
→市町村や地域包括支援センターへの通報・相談が必要な状況か

虐待の有無を委員会で確定することが目的ではありません。 気になる情報を適切な対応につなげるための体制を確認します。

委員会記録には「何を決めたか」を残す

委員会記録では、日時、参加者、議題に加え、確認した内容、検討結果、今後の対応が分かるようにします。

たとえば、

「虐待防止について検討した」

だけでは、その後の取組を確認できません。

事業所内の課題であれば、

「夕食前に利用者を急がせる声かけが増えているとの意見あり。17時台の業務集中が背景にある可能性があるため、職員配置と介助手順を確認する。」

養護者による虐待の早期発見に関する内容であれば、

「通所時に右前腕のあざを確認。本人の発言と家族からの介護負担に関する相談内容を管理者へ共有。自治体の高齢者虐待対応窓口への相談・通報手順を確認した。」

というように、事実と対応経過が分かる記録にします。

個人情報や虐待に関する情報を扱うため、記録の管理や共有範囲にも配慮が必要です。

通報と委員会の役割を混同しない

管理者や虐待防止担当者が特に確認しておきたいのが、法令上の通報と委員会活動は別のものだという点です。

養介護施設従事者等による虐待について、自ら勤務する養介護施設・養介護事業で、虐待を受けたと思われる高齢者を発見した養介護施設従事者等には、速やかに市町村へ通報する義務があります。

この場合、

「まず委員会で検討し、虐待と判断できたら通報する」

という手順にはなりません。

「虐待を受けたと思われる」段階で、法令に沿った対応が必要です。

一方、養護者による高齢者虐待では通報規定の構造が異なります。

本人の生命または身体に重大な危険が生じている場合は、市町村への速やかな通報が義務です。それ以外の場合は、速やかな通報に努めることとされています。

だからこそ、委員会では「誰が通報の可否を判断するか」を決めるのではなく、職員が異変に気づいたときに、迷わず管理者等へ共有し、市町村や地域包括支援センター等へつなげられる体制を確認しておくことが大切です。

委員会の開催を待ったり、事業所内だけで長く事実確認を続けたりすることで、必要な通報・相談を遅らせないようにします。

職員が「気になる」と言える委員会にする

虐待の未然防止や早期発見には、職員が小さな違和感を言葉にできることも欠かせません。

「最近、この利用者への声かけが強くなっている」
「自分の対応にも迷いがある」
「家族の疲れ方が以前と違う」
「本人の表情が気になる」

こうした声が早い段階で共有されれば、事業所内の不適切ケアを見直すことも、養護者による虐待の早期発見につなげることもできます。

報告した職員を責める雰囲気があると、情報は上がりにくくなります。

事業所の内側にも、利用者の生活の場にも目を向ける。 その両方を職員が安心して共有できる場にすることが、虐待防止委員会を機能させるポイントです。

まとめ

高齢者虐待防止法では、高齢者虐待を養護者による高齢者虐待と養介護施設従事者等による高齢者虐待に分けています。

虐待防止委員会でも、この二つを意識しておく必要があります。

養介護施設従事者等による虐待については、不適切ケア、職員の負担、支援方法、職場環境などを振り返り、未然防止と再発防止につなげます。

養護者による虐待については、本人や養護者の変化を職員が早期に捉え、必要な相談・通報につなげられる体制を確認します。

そして、虐待が疑われる場面では、委員会が虐待かどうかを判定してから通報するものではありません。 法令に基づく通報と、委員会による予防・改善活動の役割を分けて理解しておくことが大切です。

事業所の中だけを見ず、利用者の生活全体に目を向ける。
この視点が、虐待防止委員会を実際の支援に結びつける基盤になります。

【次回の内容】
次回は、『身体拘束をしない支援の進め方|介護・福祉現場で考えたい代替支援の基本』を取り上げます。

【参考・出典】

厚生労働省「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」
厚生労働省「市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について(令和8年3月改訂)」
厚生労働省「介護保険サービスの運営基準・解釈通知」関連資料

※本記事で使用する「養介護施設従事者等」「養護者」は、高齢者虐待防止法上の用語です。障害福祉分野では、障害者虐待防止法に基づき、養護者、障害者福祉施設従事者等、使用者による虐待が区分されており、通報規定や対応の仕組みも異なります。

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梅沢 佳裕

ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表
最新福祉情報サイト【介護キャンパス】主宰
梅沢 佳裕

社会福祉士・介護支援専門員・アンガーマネジメントファシリテーター他。
東京都を拠点に、介護・福祉事業所の人材育成、管理職研修、法定研修、制度改正対応、BCP、カスタマーハラスメント対策などをテーマに、研修講師・コンサルティング・執筆活動を行っています。

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公的資料や最新通知を確認しながら、制度と現場実践をつなぐ分かりやすい解説を心がけています。

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