【第2回】介護離職を防ぐ「3つのカギ」を徹底解説!

10.仕事と介護の両立・介護離職防止

~制度・情報・風土が企業を変える~

介護離職を「防げなかった企業」と「防げた企業」の違いとは?

介護離職を防ぐためには、偶然や成り行き任せではなく、明確な戦略が必要です。
前回のブログでご紹介したとおり、年間約10万人が「介護を理由に退職」している国内企業の現状では、企業が積極的に両立支援に乗り出さなければ、人材の流出は避けられません。

では、どうすれば「介護と仕事を両立できる職場」を実現できるのでしょうか?
その答えが、今回のテーマである「3つのカギ」=制度・情報・職場風土です。


カギ①:制度を“形だけ”で終わらせない

✔ 仕事と介護の両立支援制度の整備はスタート地点

企業がまず整えるべきは、法定・任意を問わず「仕事と介護の支援制度」です。
例えば以下のような制度は、多くの企業がすでに導入済み、あるいは導入可能です。

  • 介護休暇(年5日:要介護家族1人につき)
  • 介護休業(通算93日:分割取得可能)
  • 時短勤務、フレックスタイム制、在宅勤務
  • 所定外労働の免除・制限
  • 積立有給制度(私傷病・介護への流用)
  • 社外相談窓口(EAPなど)

✔「使えない制度」は“存在しない”のと同じ

大切なのは、制度が「あるか」ではなく、「使われているか」です。
特に管理職や同僚の理解がない職場では、「制度があっても使いにくい」「休むとキャリアに悪影響がある」と社員が感じ、実際には利用をためらうケースが後を絶ちません。

→ 制度の運用とともに、周囲の受け入れ体制や業務調整ルールの明確化が不可欠です。


カギ②:正しい情報を“事前に”届ける

✔「介護はある日突然」は本当

親の病気や転倒をきっかけに、明日から突然「介護生活」が始まる——。
こうしたケースは非常に多く、介護の前兆や段階的な移行がなく、本人も職場も準備不足のまま突入してしまうことが問題です。

✔ 会社が情報発信を行うメリット

そのため、企業が行うべきは、“介護の備え”に関する情報を、予防段階から社員に届けることです。

  • 社内イントラネットに介護制度の案内ページを設置
  • 人事面談の際に家庭状況をヒアリング
  • 社内セミナーや外部講師による両立支援講座の開催
  • パンフレットや事例集の配布(「こうすれば両立できた」)

「親が高齢だけど、まだ元気だから自分は関係ない」と思っている社員にこそ、早期から「情報の種まき」が重要です。
情報は「トラブルが起きてから探すもの」ではなく、「事前に得ておくべき備え」なのです。


カギ③:風土が“制度の使いやすさ”を決める

✔ 制度があっても、職場の雰囲気がNGなら使えない

ある企業では、時短勤務の制度があるにもかかわらず、実際には利用率が極端に低い状態が続いていました。理由は、「使ったら昇進に響く」「周囲に迷惑をかけたくない」という“職場の空気”が原因でした。

制度だけ整っていても、社員が「使いにくい」と感じている時点で、それは機能不全です。

✔ 「両立支援=特別扱い」ではないと伝える

風土づくりのポイントは、「仕事と介護の両立支援制度を使うことは特別ではない」という企業の明確なメッセージです。
たとえば、

  • 経営トップが制度利用の促進をメッセージとして発信
  • 管理職が制度の内容と活用事例を学ぶ研修の実施
  • 制度利用社員が孤立しないようなチーム運営方法の共有

といった取り組みが、職場全体に「使っていいんだ」という空気を醸成します。

風土改革なくして制度の定着なし。これは企業の長期的な競争力にもつながる重要施策です。


まとめ|3つのカギは“セット”で考える

介護離職を防ぐためには、次の3点を“同時に”動かすことがカギとなります。

カギ具体的な取り組み例
制度介護休業、時短、在宅勤務、EAPなどの整備
情報セミナー、イントラ、パンフ配布、相談窓口の紹介
風土管理職研修、制度利用のメッセージ化、職場の理解

制度だけ導入しても、情報が届かず、風土が冷たい――そんな状況では意味がありません。
3つのカギをバランスよく機能させてこそ、社員も企業も安心できる「両立職場」が実現するのです。

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