【介護記録の書き方・活かし方】第12回:入浴介助の介護記録の書き方|NG例と修正文例つき

12.介護記録の書き方と活かし方

監修・執筆:梅沢佳裕(社会福祉士・ケアマネジャー・研修講師)

入浴介助の介護記録は、単なる実施報告ではありません。転倒予防・体調管理・皮膚トラブルの早期発見につながる大切な記録です。高齢者介護施設や障害者福祉施設では、入浴は清潔保持だけでなく、血圧変動、疲労、皮膚状態の変化などが表れやすい場面でもあります。

一方で現場では、「入浴実施」「問題なし」と短く済ませてしまい、次の職員が状況を想像できないことが起こりがちです。新任職員の方ほど「何を書けばよいか」が曖昧になり、書き方が不安定になります。そこで本記事では、入浴介助場面の介護記録を、誰が読んでも理解できる形に整えるために、何を書くか・どの順番で書くか・避けたい表現は何かを、NG例と文例つきで丁寧に解説します。


入浴介助の介護記録とは?何を書くべきか

入浴介助の介護記録の目的

入浴介助の記録の目的は、大きく3つです。
【1つ目】安全確保:
 入浴は転倒、立ちくらみ、湯あたりなどのリスクがあるため、事前の確認と介助内容を残しておくことで事故を防げます
【2つ目】支援の継続性
 交替勤務では「次の担当者が同じ判断をできること」が重要です。可否判断の根拠や、介助量、配慮点が記録されていると、支援がぶれにくくなります。
【3つ目】状態変化の把握:

 皮膚の発赤や乾燥、掻痒感(かゆみ)、疲労の強さなどは、入浴時に見つかりやすい情報です。記録に残すことで、看護職や多職種の対応につながります

高齢者施設・障害者施設で共通する重要ポイント

高齢者施設では、血圧の変動、脱水、立位不安定、皮膚の脆弱(もろさ)に注意が必要です。障害者福祉施設では、感覚過敏(お湯の音や温度が苦手)、見通しが立たないと不安になる、手順へのこだわりが強いなどの特性により、入浴手順や声かけが重要になることがあります。
共通して大切なのは、「その人の入浴に必要な配慮が何か」を、次の職員が再現できる形で残すことです。「落ち着いて入れた」ではなく、「どんな声かけをして、どの順で進めたら安定したか」まで書けると、現場で活きる記録になります。


入浴介助の介護記録の書き方|観察ポイントと書く順番

可否判断の根拠を書く

入浴前は「入浴してよい状態か」を確認します。確認項目は施設の基準に沿いますが、基本は体温・血圧・脈拍・表情・顔色・呼吸状態・本人の訴え(だるさ、息苦しさ、痛み)です。
ここで重要なのは、
「可」「不可」だけを書かないことです。根拠がないと、次の職員が同じ判断をできません

記載例:
・体温36.8度、血圧128/70ミリメートル水銀柱、倦怠感訴えなし。入浴可と判断。
・体温37.8度、咳嗽あり、本人より「今日はしんどい」と訴え。入浴中止し清拭対応。看護師へ報告。

障害者福祉施設では、本人の不安や拒否が強い日もあります。その場合も「拒否」と書いて終わらせず、どんな訴えがあったか、どのように調整したを残します。

実施内容を書く

入浴が実施できた場合は、介助量と支援内容を具体的に書きます。新任職員が迷いやすいのが「介助量の書き方」です。ポイントは、どの動作に、どの程度の介助が必要だったかです。
また、浴槽の種類(一般浴、機械浴、シャワー浴、部分浴)や、人数体制、使用した用具(シャワーチェア、滑り止めマット等)が関係する場合は、簡潔に書き添えると安全管理に役立ちます。

記載例:
・職員1名で一般浴。移乗は一部介助。洗身は背部のみ介助。立位保持は時折ふらつきあり、手すり使用。
・職員2名で機械浴。更衣は全介助。入浴中、表情硬く呼吸促迫なし。声かけで落ち着き確認しながら実施。

皮膚状態を書く

入浴は皮膚観察の好機です。「異常なし」とまとめる前に、見た事実を短く具体化します。場所(どこに)、大きさ(どれくらい)、性状(発赤、湿疹、乾燥、掻破痕など)、本人の訴え(痛い、かゆい)を押さえます。
皮膚状態は看護職の判断や処置につながるため、簡潔でも情報の形を整えることが大切です。

記載例:
・左上腕に2センチメートル大の発赤。疼痛訴えなし。入浴後に保湿剤塗布。
・臀部に軽度の発赤あり。排泄後の清拭方法を統一し、保湿を継続する。


入浴介助の介護記録の注意点|事故・体調変化を防ぐ書き方

転倒リスクの兆候を残す

入浴は足元が濡れ、姿勢が不安定になりやすい環境です。転倒は「結果」だけでなく「兆候」を残すことが予防につながります。たとえば、立ち上がりに時間がかかる、ふらつく、声かけへの反応が遅い、浴室で焦りが強い、などです。

記載例:
・浴室内で立位保持時に左へ傾く場面あり。移動は手すり使用し見守り強化
・更衣中に息切れの訴えあり。休息を挟み、入浴時間を短縮

判断と事実を分ける

「元気そう」「問題なし」は人により解釈が分かれます。事実は観察した内容、判断はその事実をもとにどう対応したかです。混ぜずに書くと、読み手が迷いません。

事実:入浴中に咳嗽2回、痰なし、呼吸苦訴えなし。
対応:入浴後に水分摂取を促し、経過観察とした。必要時は看護師へ相談。

主語を省略しない

記録で意外と多いのが主語の抜けです。「10時、食堂まで歩行」では、誰が歩いたのかが分かりません。同じように入浴介助でも、「更衣介助」「機械浴実施」とだけ書くと、誰が対応したか不明確になります。主語を入れるだけで記録の品質が上がります

例:
・14時、職員Aが更衣介助。本人は上衣更衣は自立、下衣は一部介助。
・職員Bが浴室内見守り、洗身は職員Cが介助。


入浴介助の介護記録|NG例と修正後の文例

NG例

「入浴実施。問題なし。皮膚異常なし。」

この書き方だと、入浴前にどんな確認をしたか、介助量はどの程度か、皮膚をどこまで見たかが分かりません。次の職員が同じ支援を再現できず、申し送りの手間も増えます。

修正後の文例

「14時、体温36.7度、血圧130/72ミリメートル水銀柱。倦怠感訴えなしのため入浴可と判断。職員1名で一般浴実施。立位保持は時折ふらつきあり、手すり使用し一部介助。右前腕に乾燥あり、入浴後に保湿実施。疼痛・掻痒感の訴えなし。」

障害者福祉施設の例:
「15時、入浴前に手順を説明し、本人が選んだタオルを使用。浴室の音で不安が高まったため、職員Aが短い声かけで見通しを伝えながら実施。洗髪は本人が実施、洗身は背部のみ介助。入浴後、表情落ち着き『大丈夫』と発言。」


そのまま使えるチェックリスト|入浴介助の記録

□ 入浴可否の根拠体温・血圧・訴え・観察)を書いた
□ 浴種(一般浴・機械浴・部分浴など)と体制(職員人数)を整理した
□ 介助量(どの動作に、どの程度)を書いた
□ 皮膚状態(部位・大きさ・性状・訴え)を書いた
□ 転倒・体調変化につながる兆候を書いた
□ 主語(誰が何をしたか)を省略していない
□ 次の支援につながる一言(観察継続・看護師相談・保湿継続など)を入れた


現場でよくある質問(Q&A)

Q1:皮膚状態はどこまで書くべきか?

「どこに」「どれくらい」「どんな状態」「本人の訴え」「対応」を短くそろえるのが基本です。発赤があるなら部位と大きさ、痛みやかゆみの有無、保湿や看護師への報告などの対応まで書くと、次の支援につながります

Q2:入浴中止時の記録は?

中止の根拠と代替対応をセットで書きます。
例:「体温37.8度、咳嗽あり。入浴中止し清拭対応。水分摂取を促し、看護師へ報告。経過観察。」

Q3:忙しい日の記録を崩さないコツは?

観察→支援→結果の順に、短い型で書くのが有効です。
入浴可否(根拠)/介助量(どこをどれだけ)/変化(皮膚・体調)/対応(保湿・相談・観察)」の順で並べると、短文でも情報が揃います。


まとめ

入浴介助の介護記録は、ケアの質を支える専門的技術です。可否判断の根拠、介助内容、観察事項(皮膚・体調・転倒兆候)を整理して残すことで、チームの判断がぶれにくくなり、事故予防とサービス提供の質向上につながります。新任職員の方も、まずは「主語を省略しない」「事実と対応をセットで書く」から始めてみてください。記録が整うほど、支援は安全に、そして確実になります。


筆:ベラガイア17人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕:社会福祉士・研修講師)

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