2027年度(令和9年度)の障害福祉サービス等報酬改定に向けて、施設入所支援と生活介護の報酬・運営基準の見直しが検討されています。
2026年10月22日の第66回障害福祉報酬改定検討チームでは、施設入所支援の個室化や地域移行、生活介護の利用定員区分、医療的ケアへの対応など、事業所運営に関わる具体的な論点が示されました。
今回の議論は、2024年度報酬改定や、2025年9月にまとめられた障害者支援施設の在り方に関する検討結果を踏まえたものです。
現時点では検討段階であり、新たな報酬単位や加算・減算の変更が正式に決定したわけではありません。
この記事で確認できること
・施設入所支援の6つの見直し論点
・生活介護の基本報酬と医療的ケアへの対応
・現行の減算と今後の強化案の違い
・施設長・管理者が確認しておきたい事項
施設入所支援の見直し|個室化・地域移行・高齢化への対応
障害者支援施設では、利用者の高齢化・重度化が進んでいます。
厚生労働省の国保連データによると、2025年12月時点で施設入所支援の利用者のうち、65歳以上は26.4%、障害支援区分6は58.2%を占めています。
こうした利用者の状況を踏まえ、重度障害者等への専門的支援を確保しながら、本人の意思に基づく生活の選択や地域移行をどう支えるかが重要な課題となっています。
① 居室の個室化・ユニット化
利用者のプライバシーや生活環境の向上に向け、居室の個室化・ユニット化を推進するための報酬上の評価が検討されています。
現行の施設入所支援では、居室形態による基本報酬の違いはありません。今回、多床室と個室の管理・支援業務の違いなどを踏まえ、居室形態に応じた評価を設ける案が示されました。
② 日中活動と住まいの場の分離
2024年度の調査研究では、施設入所者の80.3%が居住する建物内で日中活動サービスを利用していました。
本人の希望に応じた日中活動の選択肢を広げるため、施設の敷地外にある日中活動事業所との連携を促す方向です。
具体的には、施設職員が利用者の障害特性や支援上の留意点を外部事業所へ共有する取組について、新たな加算による評価が検討されています。
③ 高齢化・看取り・終末期への対応
加齢に伴う身体機能の変化や医療的支援の必要性が高まる中、施設での看取り・終末期支援の在り方も論点です。
本人・家族の意向、医療機関との連携、職員の専門性や人員体制、職員へのグリーフケアなどを整理したうえで、報酬上の評価を引き続き検討する方向が示されています。
④ 地域移行等意向確認に関する減算
2024年度報酬改定により、地域移行等意向確認担当者の選任や、意向確認等に関する指針の策定について、2026年度から義務化されました。
現行の「地域移行等意向確認体制未整備減算」は、必要な体制が整備されていない場合、1日につき5単位の減算です。
今回の審議では、本人の意思に基づく地域移行を一層進めるため、この減算を強化する案が示されました。
ただし、減算単位数の変更は未決定です。現行の義務への対応状況を確認することが先決です。
⑤ サテライト的な施設の創設
入所定員の縮小や地域移行を段階的に進めるため、障害者支援施設のサテライト的な施設の創設も議論されています。
既存の共同生活援助や自立訓練との役割分担、施設整備費などに課題があり、制度創設は引き続き検討する方向です。
一方、入所者が共同生活援助を体験利用する際、施設職員が連絡調整や訪問、相談援助を行う取組については、新たな報酬上の評価が提案されています。
⑥ 中山間・人口減少地域の基準
利用者の減少や職員確保の難しさから、施設の維持が課題となる地域があります。
今回、介護老人福祉施設の空きスペースの活用なども念頭に、法改正で創設が位置づけられた「特定地域サービス」などの仕組みを活用し、地域の実情に応じた基準緩和が検討されています。
地域の実情に応じて、必要なサービス提供体制を維持するための議論です。
生活介護の見直し|基本報酬・医療的ケア・成人期への移行
生活介護では、2025年12月時点で障害支援区分5・6の利用者が全体の約74%を占めています。
利用者の重度化や高齢化、医療的ケアへの対応が求められる一方、事業所規模や職員配置によって支援体制にも違いがあります。
今回の検討では、主に3つの論点が示されました。
① 基本報酬の利用定員区分
現行の生活介護サービス費は、利用定員、障害支援区分、サービス提供時間などに応じて算定されます。
利用定員81人以上は現在一つの区分ですが、今回、91人以上の新たな区分を設ける案が示されました。
大規模事業所における個別支援や意思決定支援の確保、事業所規模に応じた費用構造の違いなどを踏まえた検討です。
新たな区分の報酬単位は、現時点では確定していません。
② 医療的ケアが必要な利用者への支援
医療的ケアが必要な利用者を受け入れるには、看護職員の確保や継続的な支援体制の維持が欠かせません。
今回、常勤看護職員等配置加算の見直しに加え、医療的ケアが必要な利用者の欠席時対応を評価するため、欠席時対応加算の拡充が提案されています。
現行の欠席時対応加算は、急病等による利用中止に際して、利用者・家族への連絡調整や相談援助、記録などを行った場合に算定するものです。
新たな検討では、医療的ケアが必要な利用者について、欠席時や利用再開時の健康状態の確認、医療機関・家族との調整などに伴う負担が考慮されています。
③ 障害児施策から成人期への円滑な移行
特別支援学校等の卒業後、放課後等デイサービスから生活介護へ移行すると、サービス提供時間や活動内容が変わります。
特に夕方以降の居場所、家族の就労継続、生涯学習の機会の確保が課題です。
今回の資料では、次の3点が提案されています。
・既存の延長支援加算の評価拡充
・日中一時支援事業所等との連携に対する新たな評価
・生活介護事業所での生涯学習の実施を努力義務とする案
延長支援加算は既存の制度であり、今回検討されているのは評価の拡充です。なお、現行制度では施設入所者は延長支援加算の対象外となっています。
施設長・管理者が確認しておきたいこと
今回の検討内容は、今後の報酬算定と事業所運営の両面に関係します。
・地域移行等意向確認の体制と個別支援計画への反映
・利用者の高齢化・重度化に伴う支援ニーズの変化
・敷地外の日中活動や地域資源との連携状況
・医療的ケアへの対応と看護職員の配置状況
・利用定員、サービス提供時間、加算の算定状況
現時点では、検討中の報酬案に合わせて設備や人員配置を変更する段階にはありません。まずは現行基準への対応状況を確認し、正式な改定内容が示された段階で具体的な対応を検討することが適切です。
2027年度の障害福祉サービス等報酬改定では、利用者の意思を尊重した支援、重度障害者への専門的支援、地域生活への移行とサービス提供体制の維持が重要な論点となっています。
今後の審議内容を継続して確認し、決定事項と検討中の案を区別しながら、事業所運営への影響を把握していきましょう。
参考資料
●厚生労働省「第66回障害福祉報酬改定検討チーム」(2026年10月22日)資料「施設入所支援、生活介護、短期入所、療養介護に係る報酬・基準について《論点等》」
●厚生労働省「障害者の地域生活支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に関するこれまでの議論のまとめ」(2025年9月24日)
※本記事は2026年11月3日時点の公表資料に基づいています。記載した2027年度の見直し案は審議中であり、今後変更される可能性があります。
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