監修・執筆:梅沢佳裕(社会福祉士・ケアマネジャー・研修講師)
食事介助の記録は、介護記録の中でも「書いているつもりなのに、伝わっていない」ことが非常に多い場面です。
忙しい現場では、「食事介助実施」「完食」「むせたが大丈夫」といった短い記録で済ませてしまいがちではないでしょうか。
しかし、食事の場面は、誤嚥・窒息・低栄養・脱水といった命に直結するリスクを含んでいます。
さらに、食事介助の記録は、介護職だけでなく、**看護師・管理栄養士・言語聴覚士(ST)**など、多職種が状態判断を行う重要な資料でもあります。
この記事では、新任職員の方でも迷わず書けるように、
**食事介助の介護記録で「何を書けばよいのか」「どんな順番で書けば伝わるのか」**を、具体例とともに丁寧に解説します。
最後には、NG文例と修正後の記録文例も掲載しています。
食事介助の介護記録が「曖昧」になってしまう理由
食事介助の記録が曖昧になりやすい最大の理由は、
食事中に起きる出来事が多く、何を拾えばよいか分からなくなるからです。
食事の場面では、同時に次のようなことが起きています。
- 食欲や意欲の変化
- 姿勢の崩れや眠気
- 口の動きや飲み込みの状態
- むせ・咳・拒否
- 介助方法の工夫
- 摂取量や所要時間
すべてを書こうとすると記録が長くなり、逆に「何が大事なのか」が分からなくなります。
そこで必要になるのが、**最低限ここだけは外さない「書き方の型」**です。
結論:食事介助の記録は「5点セット」で考える
食事介助の介護記録は、次の5点を押さえるだけで、短くても意味が伝わる記録になります。
- 状態(食事開始時の様子)
- 介助(どんな支援を行ったか)
- 反応(本人の身体的反応)
- 結果(摂取量・所要時間)
- 共有(看護・次回への引き継ぎ)
以下、この「型」を使って、具体的にどう書けばよいのかを詳しく見ていきましょう。
すぐ使える“型”:状態→介助→反応→結果→共有【詳細解説】
食事介助の記録が苦手な方の多くは、文章力の問題ではなく、情報の順番が整理できていないだけです。
「状態 → 介助 → 反応 → 結果 → 共有」という流れは、
- 実際の食事介助の進行順
- 後から記録を読む人の理解の順
の両方に合っています。
この順番を守るだけで、記録は一気に書きやすくなります。
① 状態(眠気・食欲・姿勢)
― 食事を始める前の“前提条件”を書く ―
最初に書くのは、食事開始時の本人の状態です。
ここを書く理由は、「なぜ食事が進まなかったのか」「なぜ介助が必要だったのか」を、本人の能力の問題として片付けないためです。
【見るポイント】
- 眠気はあるか(目を閉じがち、声かけで開眼する 等)
- 食欲はありそうか(自発的に口を開ける、促しが必要 等)
- 姿勢は安定しているか(体が傾く、首が反る 等)
【記録例】
- 食事開始時、やや眠気あり。声かけで開眼するが持続せず
- 食欲は低下気味で、自発的な摂取は少ない
- 車椅子座位で体幹が左に傾きやすい状態
この一文があるだけで、後の「むせ」や「摂取量低下」が自然に理解できます。
② 介助(姿勢調整・一口量・ペース)
― 職員が実際に行った支援を書く ―
次に、その状態に対してどんな介助を行ったかを書きます。
「食事介助を行った」だけでは、内容が全く伝わりません。
【押さえたいポイント】
- 姿勢調整(上体挙上、足底接地、クッション使用など)
- 一口量(小さめ、スプーン半分など)
- ペースや声かけ(嚥下確認、急がせない 等)
【記録例】
- 上体を30°挙上し、足底接地を確認
- 一口量を小さめにし、嚥下確認後に次の一口を提供
- 急がせない声かけで本人のペースを尊重
ここを書くことで、次の担当者が同じ介助を再現できます。
③ 反応(むせ・咳・拒否)
― 本人の身体反応を“事実”で書く ―
ここでは、介助に対する本人の反応を書きます。
「大丈夫そう」「問題なし」といった判断は書かず、見たままの事実を残します。
【観察ポイント】
- むせ・咳の有無と回数
- 拒否行動(口を閉じる、顔を背ける 等)
- 疲労や表情の変化
【記録例】
- 汁物摂取時にむせ込み2回あり
- 途中、口を閉じて摂取を拒否する場面あり
- 後半は疲労感が見られ、咀嚼に時間を要した
④ 結果(摂取量・所要時間)
― 食事介助の“到達点”を書く ―
次に、その食事がどのような結果で終わったかを書きます。
摂取量は、できるだけ数字で残します。
【記録例】
- 主食7割、副食5割摂取
- 水分200ml摂取
- 所要時間は約25分
前段の「状態・介助・反応」とつながることで、数字が意味を持ちます。
⑤ 共有(看護への報告・次回の注意点)
― 記録を“チームの情報”にする一文 ―
最後に、必要に応じて共有事項を書きます。
これは、記録を「個人メモ」で終わらせず、チームケアにつなげる重要な要素です。
【記録例】
- むせ込みが見られたため看護師へ報告
- 次回も一口量小さめでの介助が必要
- 食事形態について栄養士・STと情報共有予定
NG文例&修正後の記録文例(食事介助)
NG文例(ありがちな記録)
『食事介助した。よく食べた。むせたが大丈夫。』
問題点
- 摂取量が分からない
- 介助内容が分からない
- むせの程度・対応・結果が不明
修正後の記録文例(そのまま使用可)
『昼食(全粥・刻み菜)は主食7割/副食5割摂取。上体30°挙上で一口量を小さめに介助し、嚥下確認後に次の一口を提供。途中むせ2回あり休憩後に再開できた。食後の口腔内残渣は少量。注意点を看護へ共有。』
現場でよくある質問(Q&A)
Q:摂取量は「◯割」だけでいいですか?
A:基本は問題ありません。可能であれば、主食・副食を分け、水分量も併記するとより伝わります。
Q:むせはどこまで書けばいいですか?
A:最低限、回数・タイミング・対応・結果を書けば十分です。
Q:拒否があった場合は?
A:「拒否」と書くのではなく、口を閉じる・顔を背けるなど行動で書き、対応と結果を残しましょう。
まとめ
食事介助の介護記録は、
状態 → 介助 → 反応 → 結果 → 共有
この型を守るだけで、短く・正確で・引き継げる記録になります。
記録は文章力ではなく、構造です。
まずはこの型を、ぜひ現場で使ってみてください。
筆:梅沢佳裕(うめざわ・よしひろ)
社会福祉士/介護支援専門員/介護・福祉分野専門研修講師
ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表

