「施設ケアマネジャーになったけれど、何から始めたらいいか分からない」
「ケアプランは作れる。でも、現場が思うように動かない」
「家族から聞かれても、どこまで答えていいのか迷う」
新人の施設ケアマネが最初につまずくのは、能力不足ではなく、
“役割についてのイメージ”がまだ頭に具体的に浮かばないという場合が殆どです。
施設ケアマネの仕事は、ひと言でいうと
「利用者の生活を、チームケアで実現できる形に整えること」。
そのためには、まず次の2つを押さえる必要があります。
- 第1章:役割と境界線(どこまでが自分の仕事か)
- 第2章:優先順位(何から手をつけると仕事が回るか)
この2点が整理できるだけで、日々の迷いと疲れ方が変わります。
第1章 役割と“境界線”を押さえる
― 居宅との違い/説明と同意の考え方 ―
第1節 まず理解したい「施設ケアマネの3つの仕事」
新人のうちは「ケアプラン作成=仕事」と思いがちです。
でも施設ケアマネの仕事は、ケアプランを含めて大きく3つあります。
① 支援の“設計”をする(ケアプラン)
- 利用者の生活課題を整理し、目標と支援の方向性をつくる
- 「何を、誰が、いつ、どのように」をチームで共有できる形にする
② 支援の“共有”をする(説明・会議・合意)
- 利用者・家族に分かる言葉で説明する
- 多職種が同じ理解で動けるよう論点を整理する
- **担当者会議(サービス担当者会議/ケアカンファレンス)**等で合意形成を支える
③ 支援の“点検と調整”をする(モニタリング・見直し)
- うまくいっている点、ズレがある点を把握する
- プラン・支援方法・連携のしかたを必要に応じて調整する
つまり施設ケアマネは、
「作って終わり」ではなく「回して整える」役割なのです。
ここが居宅ケアマネとの大きな違いです。
居宅は、訪問・通所など事業所が分かれているので、調整相手が外部に広がります。
一方、施設はチームが近くにいるぶん、
- 「決めたつもりでも現場で再現されない」
- 「職種間で理解がずれる」
- 「家族の期待が先行する」
といったズレが起きやすい。だからこそ、整える役割が重要になります。
第2節 新人が混乱しやすい「境界線」の考え方(どこまで踏み込む?)
新人の施設ケアマネが疲れる原因は、
“全部自分の仕事”に見えてしまうことです。
ここで覚えておくと楽になるのが、次の考え方です。
施設ケアマネは、
①決める人ではなく、決まるように整える人
②現場の代わりにやる人ではなく、現場が動けるようにする人
③家族の相手役ではなく、説明と合意形成を支える人
これが“境界線”の基本です。
■ よくある迷い①:医療のことを聞かれた
例)家族「薬は増えたんですか?このまま大丈夫ですか?」
✅施設ケアマネの動き方(型)
- まず不安を受け止める
「ご心配ですよね。確認して整理しますね」 - 医療判断は看護職・医師につなぐ
「医療面の判断は看護師(医師)から説明します」 - 自分は“生活と支援の整理”に戻る
「生活上の困りごと・支援の方針は、こちらで整理します」
→ ここで“自分が答えよう”とすると、誤解のもとになります。
■ よくある迷い②:現場から「どうしたらいい?」と聞かれた
例)介護職「拒否が強い。プランどうします?」
✅ 施設ケアマネの動き方(型)
- 状況を事実で整理する(いつ・どこで・何が)
- チームの視点を集める(介護・看護・リハ等)
- 支援の方向性を言語化して共有する
「目標は〇〇。まず△△の工夫を統一しましょう」
→ ケアマネが“介助方法の細かな手順”を指示するのではなく、
支援方針の方向性を合わせることが大事な役割です。
■ よくある迷い③:家族が強く要求してきた
例)家族「もっと散歩させて。職員が怠けている」
✅ 施設ケアマネの動き方(型)
- 事実確認(実施状況・体調・リスク)
- 期待の調整(できること/できないことを分ける)
- 合意形成(代替案を提示し、同意を得る)
「散歩が難しい日は、△△で代替します」
→ “何でも約束してしまう”はトラブルのもと!
「できること、できないことをしっかりと説明しご理解いただくき同意を得る」が守りになります。
※こうした基本姿勢は、施設・居宅を問わず介護支援専門員に一般に求められる「調整・連携・説明」の役割にも沿う考え方です。またカスハラ防止のためにも重要な取り組みです。
【第1章 小まとめ(新人向け:明日からの行動)】
- 施設ケアマネの仕事は「設計→共有→点検・調整」の3点セット
- 迷ったら「自分が決める?整える?」で境界線を確認する
- 医療判断・手技指示は抱えず、適切な職種につなぎ“方針をそろえる”
第2章 仕事が回る優先順位
― ルーティン化と緊急時のさばき方 ―
第1節 新人が最初に作るべき「仕事が回る型(ルーティン)」
新人のうちは、目の前の相談・電話・急な依頼に追われて
「今日もケアプランに手がつかなかった…」となりがちです。
ここで大事なのは、
“先に枠を作ってから、空いたところに相談を入れる”ことです。
おすすめの考え方は、業務を3分類すること。
- 定例(必ずやる)
- プラン作成・見直しの期限管理
- 会議の準備・開催
- 記録(経過)の確認・要点整理
- 調整(状況に応じて)
- 家族説明・相談
- 多職種連携
- 現場の困りごとの整理
- 緊急(突発)
- 急変・事故
- クレーム
- 感情的対立など
このうち、最初に固めるべきは 1)定例の枠です。
定例をルーティン化すると、調整と緊急に飲み込まれません。
■ ルーティン化の具体例(新任向け)
- 週のはじめ:今週の「会議」「期限」「家族連絡」を一覧化
- 毎日15分:記録の確認→“気になる変化”をメモ
- 週1回:チームに確認する論点をまとめる(短いメモでOK)
第2節 緊急時に崩れないコツは「抱えない・流れに乗せる」
緊急対応が起きたとき、
新任がやりがちなのは「全部自分で対応しようとする」ことです。
でも、緊急対応で大事なのは、
自分が動くことより、適切に“流れに乗せる”ことです。
■ 緊急時の型(新任向け:3ステップ)
- 事実確認(推測で動かない)
「いつ・どこで・誰が・何が起きたか」 - ライン共有(一人で判断しない)
上司・看護・相談員など、施設のルールに沿って報告 - ケアマネの役割に戻る
支援方針の整理/家族説明の論点整理/記録の整備
緊急時ほど、
「自分が対応する」より
「つなぐ・整理する・残す(記録)」が専門性になります。
【第2章 小まとめ(新任向け:明日からの行動)】
- 仕事は「定例・調整・緊急」に分け、まず定例の枠を作る
- ルーティン(週・日・15分)を決めると仕事が回り始める
- 緊急時は“事実→共有→役割に戻る”の3ステップで崩れない
まとめ 1月の実務ポイント
最後に、今回(1月号)ブログのポイントを「新任人向けに」整理します。
- 施設ケアマネの仕事は「プラン作成」だけではなく、回して整える仕事
- 迷ったら「自分が決める?整える?」で境界線を確認する
- 仕事を回すには、まず定例の枠をルーティン化する
- 緊急時は“抱えない”。流れに乗せて、整理と合意形成に戻る
まずは今週、
✅ 自分の業務を3分類(定例・調整・緊急)してメモ
✅ 週の定例枠(会議・期限)を見える化
この2つだけでも始めてみてください。仕事の見え方が変わります。
次回(2月)は、施設ケアマネの土台となる
アセスメント入門(情報収集→整理→共有)を、同じく新任向けに「型」で解説します。
