紙の介護記録から、ICT・電子記録システムへ。
特養やデイサービス、障害者支援施設でも、電子記録を使うのが当たり前になりつつあります。
しかし、「システムを入れただけ」では、現場の負担が減らないどころか、
「入力が大変」「画面を見る時間が増えた」という声が出ることもあります。
大切なのは、
機械に合わせて現場を変えるのではなく、
現場のケアを支える道具としてICTを“使いこなす”ことです。
今回は、介護記録をICT化する際のメリット・情報共有のコツ・効率化の工夫を、
現場で使いやすい視点でまとめます。
もちろん、ここでもキーワードは「記録は未来への道しるべ」です。
1.電子記録導入で何が変わる?|メリットと基本イメージ
まず押さえたいのは、ICTの目的は「時短」だけではないということです。
紙の記録と比べて、電子記録には次のような特徴があります。
- 入力・転記ミスを減らせる
利用者名・日付・時刻などがあらかじめ選択式になっていると、書き間違いが減ります。 - 情報がすぐ共有できる
介護・看護・相談・リハ・厨房など、複数の部署が同じ画面で最新の情報を見られます。 - 記録を“あとから活かしやすい”
バイタルや食事量、事故件数などを、期間を指定して検索・集計できるため、
「何となくの感覚」ではなく、数字で状態を振り返れます。
たとえば、こんな記録が画面上で並びます。
10:30 食後に咳込みあり。少量の水分で落ち着く。看護へ報告済。
13:45 家族より「入浴後に保湿してほしい」と要望。職員間で共有済。
紙の記録と同じく、
「主語(誰)+事実+対応+結果」を短く書くことが、ICTでも基本です。
電子記録だからといって、
「難しい言葉」「長文」を書く必要はありません。
むしろ、短く、正確に、チームで読みやすくすることが大切です。
2.ICTで広がる情報共有|見える化と安全管理のポイント
ICT・電子記録の大きな強みは、情報共有のスピードと広がりです。
ただ、「入力しておけば誰かが見てくれるだろう」という意識だと、
肝心な情報が埋もれてしまいます。
そこで大事なのが、次の3つです。
(1)「誰が何を入力するか」を決める
- 夜勤者がどこまで入力するのか
- 看護職がどの欄を中心に見るのか
- 相談員はどの記録をチェックするのか
これらをあいまいにせず、簡単なルール表にしておくと混乱が減ります。
(2)重要情報は“埋もれさせない”
システムによっては、アラート機能・フラグ機能があります。
- 転倒・誤嚥・服薬忘れなどの事故・ヒヤリハット
- 発熱・血圧の急変・食事摂取量の急な低下
- 家族からの重要な要望・クレーム対応の結果
こうした情報は、
「いつもの記録欄」に書くだけでなく、アラートや目立つマークをつけるなどして、
全職員が気づける工夫をすると安全度が高まります。
(3)電子記録だけに頼らず、口頭でも確認する
ICTがどれだけ進んでも、
「大事なことは、画面+口頭で確認する」
という基本は変わりません。
朝礼や引き継ぎの場で、
- 「この方は昨日こういう体調変化がありました」
- 「今日のレクで注意したいポイントはここです」
と、画面を見ながら声に出して共有することで、“チームの認識ズレ”を防ぐことができます。
3.効率化のコツ|テンプレートと“短く書く文化”をつくる
電子記録は、使い方を工夫すると現場の負担軽減に大きく貢献します。
そのためのポイントは、「入力を楽にする仕組み」と「短く書く文化」の両方です。
(1)テンプレート・定型文を上手に使う
- 食事場面の記録
- 排泄介護の記録
- 入浴介護の記録
- 家族対応の記録
など、よく使うフレーズは定型文として登録しておくと便利です。
例:
「自力で全量摂取。むせなし。」
「部分介助で更衣。ボタンかけのみ支援。」
「家族より○○の要望あり。職員間で共有済。」
毎回ゼロから文章を考えるのではなく、
“土台の文章+その日のポイント”を足すイメージにすると、入力時間が短くなります。
(2)音声入力やタブレットを味方にする
タブレット端末やスマートフォンの音声入力機能を使うと、
手がふさがっている場面でも、ちょっとしたメモ程度の記録が残せます。
例:
「9:00 起床時にふらつきあり。見守り強化。」
「15:00 レク参加。手拍子と歌あり。表情良好。」
あとで落ち着いてから誤字を修正し、必要な情報を整える、という使い方も可能です。
(3)“完璧主義”を手放し、「抜けを防ぐ」ことを優先する
電子記録になると、
「きれいな文章を書かなくては」「長く説明しなくては」と力が入りがちです。
しかし、現場で本当に必要なのは、
- 必要な情報が抜けていないこと
- 誰が読んでも同じ理解になること
です。
長く書くより、「短くても、事実がきちんとそろっている」ことが大切です。
小まとめ|ICTは“未来への道しるべ”を支える道具
ICT・電子記録は、
- 入力ミスや転記ミスを減らし
- チームでの情報共有を早め
- 記録を“あとから活かしやすくする”
ための強力なツールです。
一方で、使い方次第で「負担」にも「助け」にもなります。
- 「誰が・何を・どこまで入力するか」のルールを決める
- アラートやフラグで重要情報を埋もれさせない
- テンプレートや音声入力で“短く書ける工夫”をする
- 画面だけでなく、声での共有も忘れない
今日入力した一行が、明日の安全と安心に直結します。
ICTもまた、介護記録を未来につなぐ道しるべなのだと意識して、
現場に合った運用を育てていきましょう。

