【介護・福祉の未来を読む羅針盤】2025年を振り返る:障害者福祉分野で進んだ制度と実務の変化

8.介護・福祉の未来を読む羅針盤

2025年の年末を迎え、障害者福祉に関わる皆さまも、この一年を振り返る機会が増えているのではないでしょうか。
高齢者介護と同様に、障害者福祉の分野でも、制度改正や新しい施策が相次いだ一方で、「大きく何かが変わった」というよりも、現場の実践や考え方が少しずつ変化してきた一年だったように感じます。

本記事では、2025年の障害者福祉を、制度政策面と実務面の両方から振り返りながら、現場にどのような変化が積み重なってきたのかを整理します。
年末の静かな時間の中で、障害者福祉がいまどこに立ち、どこへ向かおうとしているのかを見渡すための羅針盤となれば幸いです。


障害者総合支援法を軸とした制度運用と、2025年に見えてきた政策の方向性

2025年も、障害者福祉の基本的な枠組みは「障害者総合支援法」に基づいて運用されてきました。
障害のある人が地域で生活し、社会参加を続けていくことを支えるという方向性自体は大きく変わっていません。

しかし、この一年で印象的だったのは、制度を「どう使うか」「どう運用するか」という点に、これまで以上に目が向けられるようになったことです。
単に制度上の要件を満たすだけでなく、その運用が利用者本人の生活や選択にどのようにつながっているのかが、現場でも管理者レベルでも問われる場面が増えてきました。

制度があること自体よりも、制度を通じて何を実現しようとしているのか
2025年は、その原点を改めて意識させられる一年だったと言えるでしょう。


就労選択支援の開始と、障害者就労支援制度に求められる新たな視点

2025年の障害者福祉を語るうえで欠かせないのが、2025年10月から開始された「就労選択支援」です。
この制度は、障害のある人が自分に合った働き方を選択できるよう、短期間のアセスメントを行いながら、就労支援の方向性を整理する仕組みです。

これまでの就労支援では、「就労移行」「就労継続支援A型・B型」といったサービス類型の中で支援が進むことが一般的でした。
2025年からは、どのサービスを使うかを先に決めるのではなく、本人の希望や特性を丁寧に確認したうえで選択肢を整理するという考え方が、制度としても後押しされ始めています。

この動きは、就労支援の現場にとって、「支援を急がない勇気」や「立ち止まって考える時間」を確保するきっかけにもなっています。
2025年は、就労支援が結果だけでなく、プロセスそのものを大切にする段階へと進み始めた年だったと捉えることができるでしょう。


障害者雇用促進法の改正と、就労支援現場に及ぼした影響

2025年は、障害者雇用をめぐる制度面でも動きがありました。
「障害者雇用促進法」に基づく法定雇用率の考え方や算定方法の見直しが進み、短時間就労を含めた多様な働き方が評価される方向性が示されています。

この制度改正により、企業側では雇用の受け皿が広がる一方で、
「雇用率を満たすこと」と「職場で安心して働き続けられること」は別の課題である、という認識もより明確になってきました。

就労支援の現場でも、2025年は、
雇用につなげる支援だけでなく、定着や職場適応をどう支えるという視点が、これまで以上に重視されるようになっています。
障害者雇用を「数の達成」で終わらせないための支援が、改めて問われた一年でした。


意思決定支援・合理的配慮が実務で問われるようになった障害者福祉の現場

障害者福祉の実務面で、2025年に特に意識されたのが、意思決定支援や合理的配慮を、日々の支援判断の中でどう位置づけるかという点です。

意思決定支援や権利擁護といった考え方は、以前から重要性が指摘されてきました。
しかし2025年は、それらが理念として語られるだけでなく、

・本人の意思をどのように確認したのか
・支援者の判断と本人の希望が異なる場合、どう整理したのか
・チーム内でどのような話し合いを行ったのか

といった、具体的な支援プロセスとして問われる場面が増えています。

その結果、支援の質を個々の支援員の感覚に委ねるのではなく、チームで共有し、振り返る必要性を感じた事業所も多かったのではないでしょうか。
2025年は、支援の専門性を「個人の力量」ではなく、「組織として支えるもの」として捉え直す動きが、少しずつ広がった一年でした。


個別支援計画とモニタリング運用に見る、制度対応と支援実践のギャップ

障害者福祉の現場では、個別支援計画やモニタリング、記録といった制度対応が日常業務の大きな比重を占めています。
2025年は、これらの制度対応が、実際の支援実感や利用者の生活改善とどのようにつながっているのかを、改めて考える動きが見られました。

制度を守ることは当然重要ですが、書類作成や記録が目的化してしまうと、現場の支援との間に距離が生まれます。
2025年は、制度対応を負担として受け止めるのではなく、支援を振り返り、改善につなげる材料として活用しようとする姿勢が、静かに広がった一年でもありました。


障害者福祉が長年培ってきた「関係性の支援」と地域生活支援の価値

2025年を通じて、障害者福祉が持つ独自の強みが、改めて注目される場面もありました。
それは、利用者本人や家族、地域との関係性を丁寧に積み重ねながら支援を行ってきた文化です。

数値や成果としては見えにくいものの、こうした関係性の積み重ねが、支援の安定や職員のやりがいにつながっている事例も多く見られました。
2025年は、障害者福祉が培ってきたこの価値が、今後の介護・福祉全体にとって重要なヒントになることを、静かに示した一年だったと言えるでしょう。


小まとめ

2025年の障害者福祉は、大きな制度転換よりも、支援の考え方や実務の質を問い直す動きが積み重なった一年でした。
障害者総合支援法の運用、就労選択支援の開始、障害者雇用促進法をめぐる動き、そして利用者主体の支援の深化。
これらは今後も続く重要なテーマです。

この一年で見えてきた変化は、高齢者介護とも多くの共通点を持っています。
次の羅針盤では、両分野を横断しながら、介護・福祉業界全体の現在地と、これからの方向性を整理していきます。

筆者より(来年に向けて)

障害者福祉の分野では、制度や仕組みが整う一方で、日々の支援の中にある迷いや判断の難しさが、これまで以上に表に出てきているように感じます。
来年度は、制度対応と現場実践が無理なく結びつくよう、支援者一人ひとりが「これでよいのだろうか」と立ち止まれる余白を大切にした取り組みを重ねていきたいと考えています。
利用者本人の思いや選択を軸に、現場で働く人が安心して支援に向き合える環境づくりに、引き続き関わっていきたいと思います。

(筆:ベラガイア17人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕

タイトルとURLをコピーしました