【働く女性×仕事と介護の両立支援】第3回:働く女性を取り巻く“ケア負担の偏り”とキャリアへの影響──社会構造から読み解く真の課題

10.仕事と介護の両立・介護離職防止

仕事と家庭、そして突然訪れる“介護”。
この3つを同時に抱えながら働く女性は、今も確実に増えています。

親の体調が急に悪化したとき、
「仕事を続けられるのか」「誰に相談すればいいのか」
そんな不安を胸に、一人で抱え込んでしまう方も少なくありません。

私はこれまで、企業の両立支援や行政研修の現場で多くの女性の声と向き合い、
「仕事も大事、家族も大事。でもどちらも守れない気がして苦しい」という切実な悩みを耳にしてきました。

第3回では、働く女性がケア負担を背負いやすい“背景”をデータと制度の視点から丁寧に紐解きます。
この構造を理解することは、企業の支援策をつくるうえでの出発点です。


✦ 1.なぜ「働く女性」は介護を担いやすいのか

まず押さえるべきは、介護負担が女性に偏る状況は“個人の選択”ではなく、社会全体の構造によって生み出されているということです。

日本社会では、戦後から長く続いた「専業主婦モデル」を前提に制度がつくられ、ケア(育児・介護)は女性が中心という慣習が根強く残っています。
この背景は現代の職場環境にも影響し、キャリアの途中で介護が始まると、その調整役が“自然と女性”に寄ってしまう構造が生じます。

この「構造的偏り」が、介護離職のリスクを男性より女性に高めてしまう最大の要因です。


✦ 2.データが示す“女性へのケア偏在”の実態

◆ 主たる介護者の多くを女性が担っている

厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、
2019年時点で「同居の主な介護者」のうち女性は65.0%
さらに2022年の集計でも女性が約7割(68.9%)を占めています

つまり、在宅での介護負担の中心は、今も多くが女性であることが公式統計でも読み取れます。

これは「女性の方が介護に向いている」という意味ではなく、
家庭内の役割観や制度の歴史的背景が影響し、
結果的に女性に負担が偏ってきた構造を示しています。

(出典:厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」2019・2022年)


◆ 介護離職も女性に集中する傾向

総務省「就業構造基本調査」では、
介護・看護を理由に離職する人の割合は、女性が男性を大きく上回る傾向があります。

特に正社員としてキャリア形成の途上にある年代で介護が重なると、

  • 昇格機会の損失
  • プロジェクト離脱
  • 部署異動の希望
    など、キャリア構造そのものが揺らぐことも少なくありません。

これは女性の能力ではなく、
“女性に偏ってしまうケア役割”がキャリアの分岐点に影響してしまうという構図です。


✦ 3.女性にケア負担が集中する「4つの構造的要因」

① 社会制度の歴史的背景

介護保険制度以前、日本の介護は「家族が担う」前提でした。
その歴史的背景から、いまも家庭内ケアの中心が女性という意識が根強く残っています。

職場制度でも「家庭と仕事の調整役は女性」という無意識バイアスが残存しており、制度設計の段階で女性負担が前提化されているケースもあります。


② 職場文化に残る“無意識のジェンダーバイアス”

企業研修でも、
「女性の方が家庭の事情を優先しやすい」という前提が根強く残っている場面をよく見かけます。

その結果、

  • 介護の相談が女性に集中し
  • 業務調整を任され
  • 仕事量や責任範囲が変わり、キャリアに影響する
    という流れが起こりやすくなります。

③ 家族会議の場で“自然と女性が介護役になる構造”

「娘だから」「近くに住んでいるから」
といった理由で、
女性に介護期待が集中するケースは非常に多いです。
本人が「できる範囲で」と引き受けても、
気づけば負担が拡大していることもあります。


④ 制度の複雑さによる情報格差

介護制度は専門性が高く、情報量も膨大です。
そのため、家族の健康管理や家事の中心を担いやすい女性に
情報収集の負担が集中しやすく、
結果としてケア責任まで背負い込んでしまう状況が生まれます。


✦ 4.その結果、女性のキャリアにはどんな影響が出るのか

◆ 昇進機会の損失

介護は突発的に始まり、長期化する傾向があります。
昇格試験や研修のタイミングと重なると、
キャリアの分岐点に直接影響を与えます。


◆ 労働時間の制約と賃金への影響

時短勤務や配置転換が続くと、
本人に希望がなくても
昇給・役職手当などに影響します。


◆ 心身負担によるキャリア維持の困難さ

介護は先が見えにくい“長期ケア”と言われます。
相談できる環境がなければ、
精神的負担が蓄積し、
キャリアの持続そのものが難しくなることがあります。


✦ 5.小まとめ

  • 女性の介護負担は、個人の問題ではなく“社会構造による課題”。
  • 制度・慣習・家庭の役割観が複雑に絡み、女性に偏りやすい。
  • この構造理解こそ、企業が本質的な両立支援を行うための出発点。

(筆:ベラガイア17人材開発総合研究所 代表 梅沢佳裕


【働く女性×仕事と介護の両立支援】
第1回:介護離職の約8割は女性──働く女性を直撃する「親の介護リスク」とは?
第2回:介護離職を防ぐ3つの対策──働く女性のキャリアを守る「企業の必須アクション」


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