日本の介護現場では、近年、特に大都市圏を中心に 外国人介護職の割合が着実に増加 しています。
背景には、人材不足が深刻化するなかで、政府がEPA介護福祉士候補者、技能実習生、特定技能などの 受け入れ制度を整備し、政策的に多国籍なチームづくりを進めていること があります。
彼らは「人の役に立ちたい」という志を持ち、日本語・介護技術を学びながら現場に入ってきています。
しかしその一方で、文化・価値観・習慣の違い、言語の壁 などから、本人の努力ではどうにもできないストレスを抱えやすく、時に レイシャルハラスメント(人種や文化的背景に基づく差別的言動) に直面することがあります。
本来、介護現場は多様な価値観を持つ人々が協働する職場です。
異文化だからこそ生まれる強みもたくさんあります。
今回は、外国人介護職と日本人介護職の双方が 尊重され、安心して働けるケアチーム をつくるために、レイシャルハラスメント防止の視点から整理します。
外国人介護職へのレイシャルハラスメントとは何か
レイシャルハラスメントとは、
国籍・人種・肌の色・名字・言語・宗教・文化的背景を理由にした不適切な言動 のことです。
介護現場で実際に起きている例には、次のようなものがあります。
- 利用者から「日本語が下手だから嫌だ」「あなたの国は怖い」などの発言がある
- 同僚から「文化が違うから難しいよね」と距離を置かれる
- 指導者が“できない理由”を国籍や出身国に結びつけてしまう
- 「実習生だから、外国人だから」と責任ある仕事を任せない
※この点は、差別ではなく 研修計画や技能段階の違いが理由の場合もある ため、
その背景をきちんと説明し、本人も納得できる形にすることが重要 - 休憩室での雑談に、排除的・揶揄的なニュアンスが含まれている
特に外国人介護職の場合、
「日本語で自分の気持ちを表現しづらい」「迷惑をかけたくない」という思いから、
嫌だと思っても言葉にできず、被害が見えにくく、相談につながりにくい 傾向があります。
一方で、利用者のレイシャルな発言には、
認知症、身体疾患、感情の不安定さ、環境変化などが影響していることも少なくありません。
そのため、利用者の言動を
「差別する意図があるかどうか」だけで判断しない 視点も必要です。
- 外国人介護職が無理に対応し続けない(担当替えも選択肢)
- 利用者の不安・混乱の背景をアセスメントする
- 表情・行動・生活状況から“なぜその言葉が出ているのか”を考える
- 言動を支援記録に残し、チームで検討する
- 外国人介護職も利用者も傷つかない第三の対応策を探る
厚生労働省も、認知症等が背景にある言動を 一律にハラスメントとみなすのではなく、支援として整理する ことを求めています。
レイシャルハラスメントを防ぎつつ、利用者の権利とケアの質も守る——その両立が専門職に求められています。
互いに支え合う「多文化ケアチーム」をつくるポイント
多文化の職員が働く現場では、“無意識の壁”をどう減らすか が大きなテーマになります。
ここでは、日本人介護職・外国人介護職の双方にとって安心できる職場づくりのポイントを整理します。
1.文化の違いを「間違い」にしない
具体的には、次のような違いがあります。
- 食事の文化(手で食べる/食卓のマナー・宗教上の制限など)
- プライバシーやパーソナルスペースの感覚
- 家族の役割観・親子関係の距離感
- 宗教的行為(祈り、食事、休日、服装)
これらは 良い・悪いではなく、“背景の違い” です。
違いが理解されないと誤解が生まれ、
違いが理解されると、ケアの視野を広げる材料になります。
職場として、
- 母国について紹介するミニ交流会
- 文化や宗教について話せる場づくり
- 休憩時間のささいな会話から理解を深める工夫
などを用意するだけでも、レイシャルハラスメントの予防につながります。
2.指導は「ゆっくり・具体的・肯定的」に
日本語は、曖昧な表現やニュアンスが多く、外国人には非常に難しい言語です。
そのため、指導場面では次のポイントが重要になります。
- 説明は短く区切る(1文を短くする)
- 抽象的な言葉ではなく、具体的な動きを示す
- うまくできたことを先に伝え、その後に改善点を伝える
- 「適当に」「いい感じで」などの曖昧語は避ける
また、「責任ある仕事を任せない」ことが 差別 にならないよう、
- どの業務を、どの段階で任せるのか
- 何ができたら次のレベルに進むのか
といった 育成計画を明示し、本人と共有 しておくことが大切です。
そうすることで、「外国人だから任せてもらえない」という誤解を防ぐことができます。
3.介護の未来において「外国人介護職の力」は不可欠
日本は人口減少と高齢化が重なり、介護人材不足は構造的な課題になっています。
外国人介護職の力がなければ、介護サービスの維持が難しくなる地域 も出てくると考えられています。
一方で、日本人介護職からは、
「自分たちの働く場所が減るのではないか」
「言葉や文化の違いでケアが難しくならないか」
という不安もあります。
ここで大切なのは、
外国人介護職を “人手不足の穴埋め” として見るのではなく、
“ともに学び合い、育ち合うケアチームの一員” として位置づけることです。
そのためには、
- 多文化理解・コミュニケーション研修の実施
- 制度ごとの立場(EPA・技能実習・特定技能など)の理解
- 日本人介護職側への情報提供と対話の機会
- 指導責任者の明確化と育成プログラム
- メンタルサポート体制
- ハラスメントの相談窓口の明示
といった 「仕組み」と「場づくり」 が欠かせません。
小まとめ
外国人介護職の働きやすさは、
そのまま日本人介護職にとっての働きやすさにも直結します。
- 国籍や文化の違いを「間違い」ではなく「多様性」として受け止める
- レイシャルハラスメントを正しく理解し、未然に防ぐ
- 利用者の言動は“意図”だけでなく“背景”から捉える
- 育成計画や役割分担を明確にし、本人が納得して成長できる環境を整える
- 誰もが安心して働ける「多文化協働チーム」を目指す
レイシャルハラスメント防止は、
単に「差別をなくす」ためだけでなく、
介護チームの力を最大限に引き出し、これからの介護を支える土台づくり でもあります。

