介護施設で「生活相談員」と呼ばれる職種は、どの施設にも共通して配置されています。
しかし、通所介護(デイサービス)、特別養護老人ホーム(特養)、介護付き有料老人ホームなど、事業形態によって業務内容や立ち位置は少しずつ異なります。
配置要件や運営基準は、介護保険法および各指定基準によって定められています。
(出典:厚生労働省「介護保険法施行規則」第140条の46、第140条の62 ほか)
今回は、「どこが共通していて」「どこが違うのか」を整理し、相談員としての視野を広げるヒントをお届けします。
1.すべての相談員に共通する“支援の軸”
どの施設でも、生活相談員の根幹は**「利用者本位の支援」と「権利擁護」**です。
利用者の言葉や表情、生活歴の中から意向をくみ取り、本人・家族・多職種の思いを“翻訳”して支援の方向性を整える――。これが相談員の専門性です。
また、**「チームケアのハブ」**として、記録・共有・説明責任を担う点も共通しています。
相談援助の基本動作――情報提供・理解確認・選択肢提示・意思反映――を一つずつ丁寧に積み上げることが、信頼される相談員への第一歩です。
2.施設ごとの立ち位置と求められる力
共通点を押さえたうえで、それぞれの施設における特徴を見ていきましょう。
配置基準や業務の分担を理解することで、自分の立ち位置がより明確になります。
■ 通所介護(デイサービス)
- 主な役割:
利用者・家族との相談窓口、利用契約、通所介護計画の作成、他機関との連携。 - 特徴:
居宅ケアマネジャーが作成する**ケアプラン(マスタープラン)**に基づき、
通所介護計画(個別援助計画)を現場で具体化します。 - 求められるスキル:
継続利用につながる観察力、家族への安心感を生むコミュニケーション力。 - 実践例:
「午後に眠くなる」という訴えを受け、活動内容と水分補給タイミングを見直し、
安全とQOLを両立する工夫を行う。
ポイント:
通所相談員は家庭と地域をつなぐ“外の目線”が重要。
送迎時の何気ない一言が、家族の安心につながります。
■ 特別養護老人ホーム(特養)
- 主な役割:
入所相談・契約・家族対応・多職種連携・入退所調整・苦情対応など。 - 特徴:
施設ケアマネジャーがケアプランを作成しますが、
生活相談員は心理社会的支援の専門職として、本人と家族をつなぎます。 - 求められるスキル:
倫理的判断力、調整力、意思決定支援力。
医療や看取りを含む“生活の継続性”を見立てる力が求められます。 - 実践例:
「家に帰りたい」と訴える重度認知症の方に対し、
家族・ケアチームと連携し“日中一時帰宅”で願いを実現。
ポイント:
特養相談員は、生活を支えるソーシャルワーカー。
入所前後の不安を軽減し、本人・家族双方の“納得の支援”をつくります。
■ 介護付き有料老人ホーム(特定施設)
- 主な役割:
入居前説明、契約、生活支援計画作成、家族対応、医療・行政との調整。 - 特徴:
ケアプランは居宅ケアマネジャーが作成しますが、
施設では運営規程に基づく個別計画を職員が協働して策定します。 - 求められるスキル:
説明責任・契約理解・リスクマネジメント力。
「どこまでが施設の支援範囲か」を明確にし、誤解を防ぐ説明が必要です。 - 実践例:
夜間体制を心配する家族に対し、巡回間隔・緊急対応・体制図を示して安心を提供。
ポイント:
有料ホームの相談員は、“生活サービスのコーディネーター”。
契約と信頼を両立する透明性が求められます。
小まとめ:違いを知ることが専門性を高める
通所・特養・有料――形は違っても、共通して求められるのは
「本人を中心に、関係者の思いを支援の行動に変える力」です。
事業類型の違いを理解すると、
- どの場面でどの専門職が主導するか
- どの情報を誰と共有すべきか
- 自分の立ち位置で何を優先すべきか
が明確になります。
生活相談員は、制度と現場をつなぐソーシャルワーカー。
違いを学ぶことは、現場で生きる“調整力”と“倫理力”を磨くことにつながります。
※実際の役割分担や会議体制は、法人・自治体の運用方針によって異なります。
詳細は各施設の運営規程・指定基準をご確認ください。

