――中堅層が前に立ち、現場を守る力
介護・福祉の現場では、日々の支援の中で利用者や家族とのトラブル、クレームが起こることは珍しくありません。
その瞬間、現場を守り、職員を支えるのは誰でしょうか。
それこそが、中堅層のフォロワーシップです。
上司がすぐに駆けつけられない場面でも、現場を落ち着かせ、職員を守り、利用者との関係を崩さずに対応できる。その一歩を踏み出せる人がいるかどうかが、チームの信頼力を決める鍵になります。
1.クレーム対応は「中堅リーダーの腕の見せどころ」
介護・福祉の現場では、どんなに丁寧に支援していても、トラブルやクレームは避けられません。
利用者や家族との行き違い、支援方針への誤解、連携不足によるミスなど――原因はさまざまです。
こうした場面で頼りにされるのが、中堅層のフォロワーシップです。
上司が駆けつけるまでの間、まず現場を落ち着かせ、スタッフを守りながら状況を整理できる人がいるかどうか。ここでチームの信頼が問われます。
フォロワーシップとは「支える力」であると同時に、現場を守る力でもあります。
中堅リーダーが冷静に一歩前に出ることで、
- スタッフの不安を和らげる
- 利用者・家族の怒りを沈める
- 上司の判断をサポートする
という三方向の安定が生まれます。
つまり、トラブル対応は「中堅層が現場を動かす力」を発揮する絶好の場面なのです。
2.フォロワーシップが生きる“3つの動き方”
トラブル時の中堅リーダーは、感情的な反応ではなく、構造的に動くことが大切です。
フォロワーシップを発揮するための3つの基本行動を押さえましょう。
(1)まず「落ち着かせる」
怒りや混乱が起きている場面では、最初にやるべきことは“説明”ではなく“沈静化”です。
相手が感情的なときは、言い分を途中で遮らず、うなずきながら聴く。
スタッフが動揺しているときは、「大丈夫、私が一緒に対応します」と支えの言葉をかける。
この一言が現場を救うことがあります。
(2)次に「整理する」
その場で全てを解決しようとせず、事実と感情を切り分けて整理します。
- 何が起きたのか(事実)
- 誰がどう感じたのか(感情)
- 今後どう対応すべきか(方針)
この3点を冷静にまとめることで、上司や関係職員への報告が正確になります。中堅リーダーの記録力・説明力が生きる場面です。
(3)最後に「つなぐ」
現場を落ち着かせたら、上司・他職種・関係部署へ速やかに連携します。
その際、「責任の押しつけ」ではなく「協働の姿勢」で報告することがポイント。
「現場ではここまで対応しました。今後の判断をお願いします」と、バトンを丁寧に渡すことで、上司も安心して動けます。
この一連の流れが、中堅リーダーのフォロワーシップによる“防波堤”の役割を果たすのです。
まとめ
トラブルやクレームは、誰かを責める問題ではなく「チームで乗り越える課題」です。
中堅リーダーが冷静に立ち、支え、つなぐことで、現場の信頼と安全が守られます。
- 感情ではなく構造で対応する
- 現場の安全と安心を優先する
- 一歩前に出てチームを支える
これが、トラブル対応におけるフォロワーシップの真価です。
次回は「職種を超えた協働を支えるフォロワーシップ ― チームケアを強くする連携の力」について解説します。

