【ケアマネジャー】第1回:初回訪問時アセスメントで押さえるべき″5つの視点”~現場で活きる観察力と対話力~

3.ケアマネジャーの役割と業務

はじめに

「初回のご自宅訪問で、何をどこまで見ればいいのか…」
「長年担当している利用者さんだから大丈夫、と思っていたら大きな変化を見落としていた…」

そんな経験は、どの居宅ケアマネにもあります。

居宅介護支援における初回面接や課題分析のための自宅訪問は、ケアプラン作成のスタート地点です。
ここで得られる情報の質が、その後のプラン内容やサービス調整に大きく影響します。

2025年4月の制度改正で、ケアプランの記載根拠や課題分析の質がより厳しく求められるようになりました。つまり、「初回訪問時に何を見るか・どう聞くか」が、これまで以上に重要になっています。

今回は、現場のケアマネが明日から使える“5つの視点”を、実例を交えてご紹介します。


1.生活全体を観察する

初回訪問の目的は、病名や要介護度の確認だけではありません。
生活全体を立体的に観ることが重要です。

例:

  • 動線や家具配置が安全か(転倒・動作のしやすさ)
  • 食事環境(冷蔵庫や調理台の状態、低栄養リスク)
  • 季節に合った寝具や服装が整っているか

ケース
Aさん(80代・独居)宅の玄関に靴が乱雑に置かれていた。会話の中で「外出が面倒」と発言。部屋奥には未開封郵便が多数。→「活動性低下」と「軽度認知機能低下」の可能性を推測し、外出支援と認知症予防をプランに反映。


2.本人の思いを引き出す聞き取り

観察だけでは見えないのが、本人の意向や価値観です。
質問は事実+感情の背景を引き出す形にしましょう。

例:

  • 「困っていることは?」ではなく、「最近、生活で変わったことや気になることは?」
  • 雑談の中から拾う一言も重要

ケース
Bさん(70代・要介護2)は「困っていない」と話していたが、雑談で「夜トイレに行くとき足元が怖い」と漏らす。寝室と廊下を確認すると暗く、段差もあった。→夜間照明を導入し、「安心して眠れる」と本人の満足度向上。


3.家族の支援力と限界を把握

家族は支援資源であると同時に、負担を抱える当事者です。
できること/続けられることの両方を確認します。

例:

  • 誰がどの時間帯に何をしているか
  • 健康状態・就労状況・介護に対する気持ち
  • 他の家族や地域の協力状況

ケース
Cさん(85歳・要介護3)の介護を担う長男(60代)は「大丈夫」と答えていたが、手首にサポーター。実は腱鞘炎で入浴介助が負担になっていた。→ヘルパーによる入浴支援を導入し、長男は自分の通院も確保。介護継続が可能に。


4.潜在的なリスクを先読みする

表面化していないリスクは、早めに気づくほど対応が容易です。

例:

  • 動作のわずかな変化(転倒予兆)
  • 薬の残数や整理状態(服薬管理不良)
  • 光熱費滞納や生活費不足(経済的困窮)
  • 交流の減少(社会的孤立)

ケース
Dさん(90代・独居)の薬カレンダーが乱れており、残薬も多数。服薬忘れと重複内服の危険を確認。→薬剤師と連携し、週1回の訪問薬セットとカレンダー更新を実施。服薬状況が改善し、体調も安定。


5.記録とプランをつなげる

訪問で得た情報は、ケアプランの根拠として活かすことが重要です。

3ステップ:

  1. 事実をそのまま記録(事実と意見を混同しない)
  2. 事実から課題を整理(背景・原因も明記)
  3. 課題に対応する目標・サービス内容を設定

ケース
Eさん(78歳・要介護1)の台所床が滑りやすいことを確認。

  • 観察結果:「台所床の滑りやすさによる転倒リスク」
  • 課題:「家事動作中の転倒リスクが高い」
  • 目標:「安心して家事ができる環境を整える」
  • サービス:「滑り止めマット導入と環境指導」

この一貫性が、実地指導や給付管理でも有効に機能。


制度改正との関係

2025年4月施行の改正では、ケアプラン様式の見直しやデータ連携システム導入が進み、初回訪問での観察・聞き取りがそのままプランやサービス利用票の根拠になる場面が増えました。
特に家族支援やリスク把握は、BCPや虐待防止にも直結し、事業所全体の評価にも影響します。


まとめ:5つの視点で質を高める

初回訪問で意識すべき視点は以下の通りです。

  1. 生活全体の観察
  2. 本人の意向の引き出し
  3. 家族の支援力と限界の把握
  4. 潜在的リスクの先読み
  5. 記録とプランの一貫性

これらをチェックリスト化して持参すれば、時間が限られた訪問でも要点を押さえられ、結果としてケアプランの質向上と利用者・家族の満足度向上につながります。

次回は、居宅ケアマネの役割とは? ― 制度上の位置づけと実際の仕事

  • • 居宅ケアマネの法的役割(介護保険制度上の位置)
  • • 業務の流れ:アセスメント~プラン作成~モニタリング
  • • 「事務」と「対人支援」のはざまで悩まないために

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