~仕事と介護を両立できる職場づくりが、企業の未来を守る~
介護離職が急増中…企業の“見えない損失”が深刻化
「社員が突然、親の介護で辞めることになってしまった」
「せっかく育てた管理職候補が離職してしまった」
こうした声が、今や珍しくありません。
実は、日本では年間およそ10万人が「介護」を理由に離職しているといわれています(厚生労働省統計より)。
そしてその多くが、40代後半~50代前半という企業の中核人材。介護離職は、企業にとって大きな「人材損失」なのです。
なぜ今、「仕事と介護の両立支援」が急務なのか?
高齢化社会の進行により、家族の介護を必要とする社員は今後ますます増えていきます。
2025年には、いわゆる「団塊の世代」が全員75歳以上となり、介護を担う現役世代の負担が一気に高まると予想されています。
これまで家庭内で担われていた介護は、今や働く現役世代が両立せざるを得ない現実となっています。
特に共働き世帯の増加や、ひとり親・独身世帯の増加により、“仕事か介護か”の二者択一を迫られる人が激増しているのです。
【実例】中堅社員の離職が、企業にもたらす大きな痛手
ある製造業の事例では、営業部門の課長が「在宅で要介護状態の母親を介護する必要がある」として退職しました。
後任の選定と引き継ぎには半年以上かかり、得意先との関係にも影響が出たといいます。
このように介護離職は、単なる「人員減」ではなく、
- 管理職・専門職層のノウハウ喪失
- 業務の停滞とミスの増加
- 残った社員の負担増によるモチベーション低下
といった“負の連鎖”を引き起こします。介護離職は企業の生産性を根底から揺るがすリスクなのです。
【注目ワード】介護離職を防ぐには「備え」と「仕組み」が鍵
介護離職の多くは、「突然始まった介護に備えていなかった」ことが原因です。
社員本人にとっても初めての介護は戸惑いが多く、「どこに相談すればいいか分からない」「制度が使いづらい」と感じることが少なくありません。
だからこそ、企業側が取り組むべきは、
- 介護に関する社内制度の整備
- 情報提供と相談窓口の設置
- 管理職層への理解促進と風土づくり
といった「事前の支援体制」の構築です。
【国も推進】企業の“両立支援”が求められる時代に
実は国もこの状況を深刻に捉えており、「育児・介護休業法」や「次世代育成支援対策推進法」などの法制度により、仕事と介護を両立できる職場環境の整備を強く求めています。
- 介護休暇(年5日)
- 介護休業(通算93日まで)
- 時短勤務・フレックス・テレワークの導入
- ハラスメント防止措置
など、さまざまな支援制度がすでに整備されています。
しかし、重要なのは「制度があること」ではなく、「制度を活用できる職場文化があるかどうか」。
制度の周知や利用促進、風土づくりがなければ、せっかくの制度も“絵に描いた餅”となってしまいます。
【ポイント整理】企業が取るべき3つのアクション
企業が「介護離職防止」に向けて今すぐ着手すべきは、次の3点です。
- 制度を整備する
→ 介護休暇・休業、在宅勤務、フレックスタイム等の整備 - 情報を周知する
→ 社内イントラやガイドブックで支援策を可視化 - 風土を醸成する
→ 管理職研修・ハラスメント防止などで利用しやすい職場に
この「制度」「情報」「風土」が揃って初めて、介護と仕事の両立は実現可能になります。
まとめ|介護離職を防ぐ企業が“選ばれる時代”に
「仕事と介護の両立支援」は、社員のためだけでなく、企業自身を守るための“戦略的投資”です。
人材が定着し、安心して長く働ける職場こそが、これからの時代に“選ばれる企業”となるのです。
次回予告:介護離職を防ぐ「3つのカギ」を徹底解説!
次回のブログでは、介護離職を防ぐうえで要となる「3つのカギ(制度・情報・職場風土)」について、より詳しく実践的にご紹介します。
人事・労務担当者や経営者の方は、ぜひお読みください。