【生活相談員】第4回:相談員が“何でも屋(萬や)”にならないために必要な視点とは?

介護キャンパス 相談員の役割と機能

~ソーシャルワーカーとしての専門性を守る~

生活相談員のブログ連載も今回で4回目となります。

こんにちは、ベラガイア17人材開発総合研究所の梅沢です。

私自身も生活相談員であった当時、「何でも屋」という立ち位置に悩まされたことが有りました。

今回は、「相談員って、なんでも頼まれがち…」
→そのままだと“便利屋”になってしまうかも・・・ここから書き始めてみたいと思います。

介護施設で働く生活相談員は、利用者や家族、職員、地域とのつながりをつくり、支える役割を担っています。
しかし現場では、「気づけば何でも屋になっていた…」という相談員の声を聞くことも珍しくありません。

送迎の手伝い、レクリエーションの応援、備品発注、記録補助、トラブルの仲裁…。
本来の業務とは異なるタスクがどんどん増え、相談援助や家族対応に十分な時間が取れなくなるケースもあります。

今回は、そんな「何でも屋」状態から脱却し、相談員としての専門性=ソーシャルワークの視点を守るために必要な考え方と工夫をお伝えします。

1.頼られやすいがゆえに「便利な人」になってしまう

相談員は周囲の信頼を集めやすく、状況を広く把握する立場にもあるため、いろんな仕事が回ってきやすいポジションです。
特に以下のような特徴のある方は、“便利屋化”しやすい傾向があります。

  • 断るのが苦手
  • 全体を見通せてしまう
  • 気配りが細やか
  • 対人関係が円滑

頼られること自体は悪くありませんが、それが“本来業務の時間を圧迫するレベル”になると要注意です。

2.相談員の専門性は「ソーシャルワーク」にある

相談員は、介護施設におけるソーシャルワーカーです。
その本質的な役割は、「人」と「環境」の間にある課題を調整し、本人らしい生活を支えることにあります。
この専門性を具体的に理解するためには、ソーシャルワークでよく用いられる3つの視点から整理すると分かりやすくなります。

①【ミクロの視点】個別支援=対人援助の専門職として

利用者や家族の背景、心理状態、生活歴を丁寧に理解し、支援に活かしていくのが、生活相談員の基本姿勢です。

ただし実務では、施設形態によって計画支援への関わり方が異なります。

🔹特養(特別養護老人ホーム)では
ケアマネジャーがケアプランを作成する中心的役割を担い、
生活相談員は以下のように補完的な立場で関わります。

  • 契約・入退所調整・家族との連携
  • 利用者・家族の声をケア会議に届ける
  • 苦情や心理的ニーズの吸い上げと情報共有

🔹通所介護(デイサービス)では
通所介護計画(個別援助計画)の作成に、生活相談員が中心的に関与します。
居宅ケアマネのケアプラン(マスタープラン)を受け、事業所としての支援内容・目標・方法を具体化し、チームで計画・実施・評価を行います。

➡いずれの形態でも共通するのは、“利用者と家族の声を丁寧にくみ取り、支援に反映する”という援助者としての機能です。

②【メゾの視点】チームや家族との調整役

生活相談員は、介護職・看護職・ケアマネ・リハ職など、多職種の中間に立つ調整者です。
また、家族の想いや職員の現場感覚とのギャップをつなぐ“橋渡し”も担います。

  • 多職種間の意見調整
  • 家族とチームの認識のズレの修正
  • 苦情・不安への対応を通じた信頼構築

➡これは**メゾ・ソーシャルワーク(小集団への働きかけ)**としての機能です。

③【マクロの視点】制度と現場をつなぎ、権利を守る

施設運営や制度対応のなかでも、相談員は専門職として重要な役割を担います。

  • 介護保険制度、加算要件の理解と運用支援
  • 契約、苦情、事故対応など、法的根拠に基づく業務
  • 利用者の権利擁護、情報の適切な取り扱い
  • 地域包括支援センターや行政との関係づくり

➡これは、社会制度や地域に働きかけるマクロ・ソーシャルワークの実践です。

3.「何でも屋」にならないための3つの工夫

専門職としての立ち位置を守るために、次のような取り組みを日常に取り入れてみましょう。

🔹1.「私の役割」を自分の言葉で言語化する

例:「私は、利用者と家族の声をチームに伝え、生活全体の支援を調整する専門職です」

🔹2.業務の境界をチーム内で共有する

送迎・記録・備品補充など、曖昧なタスクは予めルールを整理し、無理に引き受けすぎない

🔹3.面談・調整・家族対応の“見えない業務”を記録・報告する

→ 上司やチームに「相談業務の見える化」を行うことで、専門性の理解を促す

4.専門性を守ることは、利用者を守ること

生活相談員が支援以外の業務に追われ、本来の役割が果たせなくなると、
支援の質が下がり、利用者や家族にとっての“安心”が失われてしまいます。

「断ること」「自分の役割を伝えること」は、わがままではありません。
支援の質と信頼を守る行動です。

5.まとめ:私たちは、施設の中の“ソーシャルワーカー”です

生活相談員は、ただの調整役ではなく、
ソーシャルワークの専門性を軸に、チームと地域を支える存在です。

  • ミクロ:利用者・家族との対人援助
  • メゾ:職員・チーム・家族との調整
  • マクロ:制度理解と権利擁護

この3つの視点を意識することで、相談員の本来の専門性が見えてきます。
“便利な人”ではなく、“専門職”として、自信をもって現場に立ちましょう。

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